1:1432007 登録日

宮城県第二工業高等学校 第2学年 電子機械科学習指導案
指導日時:平成○○年○○月○○日(○)○校時
指導学級:第2学年電子機械科(男子5名)
指 導 者 :宮城県第二工業高等学校 教諭 渡邊 真一
1
2
単元名
第3章
材料の強さと使い方
第1節
材料の機械的性質 (実教出版 「新機械設計」)
単元の目標
第2章で既に学んだ事象は,物体に変形や破壊が生じない「剛体」として扱われた。しかし,実
際には機械や構造物を構成する部材は変形や破壊を起こす。そのために,これらの部材を設計する
場合は,使用する材料の機械的な性質をよく知り荷重に対して安全な寸法・形状にしなければなら
ない。ここでは,機械を設計する際に必要な材料の特性や使い方の基礎的な知識を習得させる。
3
指導にあたって
(1)単元について
機械を構成する部材が,外力に対して安全であるためには,材料の機械的性質を理解していなけ
ればならない。材料の特性を調べる方法として引張試験があり,そこから得られる応力―ひずみ線
図が機械的性質を教えてくれることを理解する。比例限度や降伏点・引張強さなど各用語と意味を
知り,機械や構造物を設計する上で重要であることをしっかりと理解する。また,材料に引張・圧
縮荷重,せん断荷重が働いた場合,内部ではどのような応力やひずみが生じるのか。さらに,縦弾
性係数や横弾性係数と応力・ひずみの関係を理解させ,その計算方法について理解させる。
(2)生徒の実態
本校は定時制高校ということもあり,多様な生徒がクラスに存在している。基礎学力の部分でつ
まずきが多い生徒や計算に苦手意識を持つ生徒も多く,簡単な式の変形や単位の換算などでもつま
ずきがみられる。また,図形やグラフを見て事象や結果を読み取ることを苦手とする生徒も多い。さ
らに,それらの板書をノートに書き写すのに時間がかかる傾向にある。しかし,授業に対しては真
面目に取り組み,自分の興味の持てる内容については積極的に学ぼうとする姿勢がみられる。
(3)指導について
工業的な事象や現象が自分自身の身の回りでどのように役立っているのか,身近な物事や事象と
結び付けて説明し,生徒がイメージしやすい工夫が必要である。また,苦手意識克服のためにも「で
きた」
・
「分かった」を積み重ねて学習させていく必要がある。具体的には,設計という科目の特性
上,難しい図やグラフ等が度々出てくるが,ノートを取る時間がかかり過ぎることもあり,ICT と
自作プリント等を活用し,時間的な効率を図る。視覚的に分かりやすい授業を展開することや実物
の提示や身近な事象を取り上げるなど生徒に興味・関心を持たせることに重点を置いて授業するこ
とを心がけている。
4
単元の評価基準
(1)単元の評価基準
関心・意欲・態度
思考・判断・表現
技能
知識・理解
機械や構造物を構成
機械や構造物の構成
応力とひずみの関係
機械や構造物の構成
している部材の強度や
部材に作用する引張・圧
および計算法を身に付 部材に生ずる応力とひ
剛性に関心を持ち,引
縮・せん断荷重を踏まえ
けている。また,材料の
張・圧縮・せん断荷重に
て,構成部材に生ずる応
適切な使いかたを理解 の計算ができる。また,
よる材料の変形や材料
力とひずみの関係を考
し,設計にあたってどの
の使い方を探求し,理解
察でき,計算の過程や結
ようにしたらよいかを ができる。
しようとする。
果を示すことができる。 身に付けている。
ずみの概念を理解し,そ
材料の適切な使いかた
また,材料の適切な使い
方を総合的に考え,判断
できる。
(2)学習活動における具体の評価基準
関心・意欲・態度
思考・判断・表現
技能
・・機械や構造物を構成し・・引張・圧縮・せん断荷
知識・理解
・応力とひずみの関係・・機械や構造物の構成部
ている部材の強度や剛
重を踏まえて,構成部材
において正しい式を選 材に生ずる応力とひず
性に関心を持ち意欲的
に生ずる応力とひずみ
択し,計算できる。
に探究しようとする。
の関係を考察できる。 ・・材料の適切な使いかた・・応力とひずみの関係に
・・引張・圧縮・せん断荷・・計算の過程や結果を示
重による材料の変形や
すことができる。
を理解し,設計にあたっ おいて正しい式を用い
てどのようにしたらよ て計算できる。
使い方を探求しようと・・材料の適切な使い方を
する。
みの概念を理解できる。
いかを身に付けている。・・材料の適切な使いかた
総合的に考え,判断でき
ができる。
る。
5
単元の指導と評価の計画(全9時間)
時
学習内容
学習活動における評価基準
評価方法
引張荷重・圧縮荷重と変形
・身の回りにある機械の構造や部材について関心を
学習活動
(内力と引張・圧縮応力)
持ち,考察することができる。
の観察
【関心・意欲・態度】
1
・引張・圧縮応力の式の意味を理解し計算すること
学習プリント
ができる。
【技能】【知識・理解】
引張荷重・圧縮荷重と変形
・構成部材に生ずる応力とひずみの関係を考察でき
学習活動
(引張・圧縮応,ひずみ)
る。
の観察
【思考・判断・表現】
2,3
・ひずみの概念を理解し,計算することができる。
【技能】【知識・理解】
学習プリント
引張荷重・圧縮荷重と変形
・応力―ひずみ線図における各点の意味や特徴を理
学習活動
(応力とひずみ)
解し,グラフ上に図示できる。
の観察
【関心・意欲・態度】【知識・理解】
4
・機械や構造物を設計する上で,降伏点や弾性ひず
本時
学習プリント
みが剛体を保つ観点からも重要になることが考察で
きる。
【思考・判断・表現】
引張荷重・圧縮荷重と変形
・設計において縦弾性係数の持つ意味を理解し考察
学習活動
(縦弾数係数)
できる。
の観察
【関心・意欲・態度】
【思考・判断・表現】
5
・垂直応力と縦ひずみ,縦弾性係数の関係を理解し, 学習プリント
計算できる
【技能】
【知識・理解】
せん断荷重とせん断変形
・身の回りにある機械の構造や部材に働くせん断荷
学習活動
(せん断,せん断応力)
重とせん断変形ついて関心を持ち,考察することが
の観察
できる。
6
【関心・意欲・態度】
学習プリント
・せん断応力の意味や計算法を理解し,計算できる。
【技能】
【知識・理解】
7,8
せん断荷重とせん断変形
・せん断ひずみの概念を理解し,計算することがで
学習活動
(せん断ひずみ,横弾性係数)
きる。
の観察
【技能】
【知識・理解】
学習プリント
9
材料のおもな機械的性質
おもな機械的性質から材料の使い方を考察すること
学習活動
と使い方
ができる。
の観察
(延性・脆性材料,おもな材料の使い方)
【思考・判断・表現】
学習プリント
6.本時の指導
(1)題材名
「応力とひずみ」
(2)本時のねらい
ア
機械や構造物を構成している部材の強度を知る方法に材料試験があり,ここで得られた応力-
ひずみ線図が機械的性質を知る上で大きな意味を持つことを理解させる。
イ
比例限度,降伏点などの材料の機械的性質を理解させ,機械や構造物を設計する上で重要な意
味を持つことを理解させる。
(3)本時の評価基準
評価の観点
関心・意欲・態度
具体的な評価基準
A とする具体的な姿
・応力-ひず線図から様々な機械的 ・降伏点,引張強さ,弾性限度などが
性質を読み取れることに気が付く。 どのように設計に役立つのか理解し
ようとしている。
思考・判断・表現
・応力‐ひずみ線図からどのような ・機械や構造物を構成する材料では降
ことがわかるか理解し考察できる。 伏点以降で塑性変形が大きくなり,設
計上影響が大きいことを考察できる。
知識・理解
・応力‐ひずみに線図における
・応力‐ひずみ線図から各点の意味や
各点の意味を理解し,図示できる。 特徴を理解し,グラフに正しく示せ
る。
(4)学習指導上の工夫
ア
プロジェクターを使用し,応力-ひずみ線図を提示することで板書やノートを取る時間を省略
し,時間的効率をはかるとともに,視覚的に強調することで生徒の理解を助ける。
イ
実習で使用した材料試験片や実験時の動画を用意し,材料試験のイメージを持たせることで興
味・関心を持たせる。
ウ
学習プリントを活用して,グラフ上の重要ポイントや用語について整理しながら理解を深める。
(5)準備物
ア 指導者:教科書,筆記用具,学習プリント,材料試験片,パソコン,プロジェクター
イ 学習者:教科書,ノート,筆記用具
(6)本時の展開
学習活動と主な発問
(●予想される生徒の反応)
段階
形態
導入
1
前時の復習。
一斉
(5 分)
2
プリント復習問題の解答を行う。
個別
指導上の留意点
・プリントの復習問題で応力, 【知識・理解】
・解答と合っている。
ひずみと荷重,断面積,伸び
(主な発問)
の関係について確認する。
・応力の単位はなぜ【MPa】なのか?
机間指導
●断面積の単位がmm2だから。
・前時の要点,ヒントを与え
6
●1000×1000 で 10 になる。
評価
ながら問題を解かせる。
[スライド 1,2]
3
本時の学習課題を知る。
一斉
(主な発問)
・実際はどのように材料の強
度を測定し,設計に利用して
・設計するとき材料の必要な性質は?
●強度,変形しない,重さ。
[スライド 3]
いるか考えさせる。
【思考・判断・表現】
・材料に必要とされ
る機械的性質を考察
できる。
実際はどのように調べていくか,本時の
課題を知らせる。
材料試験から得られる応力-ひずみ線図から材料の機械的性質などを知る。
展開
4
(32 分)
材料試験の方法についてスライドや
一斉
試験片を見ながら確認する。
・実習で行った実際の動画を
見せ,材料の変化する様子と
[スライド 4]
荷重-伸び線図から試験イメ
ージを持たせる。
・実験・前後の試験片を見せ
る。
・金属が伸びる様子と破断す
る直前に一部がくびれること
を確認させる。
5
応力-ひずみ線図の弾性限度・比例
一斉
・金属という固い材質の物で
限度,弾性変形と塑性変形について,ス
もバネ・ゴムのような性質で
ライドを使って場所と特徴を説明す
ある弾性があることを強調す
る。
る。また,その変形は力を取
[スライド 5,6,7]
【関心・意欲・態度】
【知識・理解】
・弾性・塑性の意味
を理解している。
り除くと元に戻る性質である
ことを理解させる。
【言語活動】
グループ
(主な発問)
・加工の方法に塑性変形を利
用した塑性加工法があること
材料の弾性・塑性という性質を利用し
を考察させる。
【思考・判断・表現】
・弾性・塑性の性質
を理解し,加工法に
はどんなものがある
て加工された製品は身の回りにどんなも
のがあり,どんな加工法があるかグルー
・ヒントを出しながら話し合
プで話し合う。
いをさせる。
かを考察できる。
(グループ内で発表)
ここまでの学んだことを学習プリント
個別
机間指導
一斉
・降伏点とは材料が応力に耐
に書き込み整理する。
6
降伏点・耐力についてスライドを使
って場所と特徴を説明する。
[スライド 8,9,10]
(主な発問)
えられなくなり,弾性変形か
ら塑性変形に変化する目安と
して用いられることを強調す
・材料が使用できる応力の範囲はどこ
る。この点以降については材
になると思いますか。
料の強度は期待できず,変形
●変形がもとにもどるところ。
も大きくなることを考察させ
●大きく変形しないところ。
る。
【思考・判断・表現】
・降伏点は弾性変形
から塑性変形に変化
するという意味で設
計上,大きな意味を
持つことを考察でき
る。
ここまでの学んだことをプリントに書
机間指導
き込み整理する。
7
引張強さと破断について理解する。
個別
[スライト 11]
(主な発問)
・E点からF点までは荷重が下がって
一斉
いるがどうしてか?
・引張強さと材料が破壊しな
【知識・理解】
いで耐えられる最大の応力で
・引張強さと破断に
あること,また,E点からF
ついて理解してい
点まではどのような現象が起
る。
きているか考察させる。
●くびれが発生しているから。
ここまでの学んだことをプリントに書
き込み整理する。
まとめ
8
(3 分)
9
個別
本時の学習内容の振り返り。
[スライド 12]
机間指導
・スクリーンで本日の授業の
【知識・理解】
要点を確認する。
・応力-ひずみ線図
次回以降の学習内容の予告をする。
(7)板書計画
(前時の復習)
応力
シグマ
σ 【Mpa】=W【N】/A【mm2】
・単位は【N/mm2】=【MPa】
・SI 単位では【N/m2】
ひずみ ε=Δℓ【mm】/ℓ【mm】
・設計するとき材料に必要な性質は何か?
●強度,変形しない,重さ・・・
・塑性変形を利用した加工法と身の回りの製品
アルミサッシ・・・押出し加工
缶ジュールの缶・・・深絞り
硬貨・・・プレス加工
身の回りで多くの製品の加工に塑性加工は利用されている
における各用語の意
味を理解している。
(8)スライド資料
「機械設計」
学習プリント
月
日
校時
(
)年 (
)番
氏名(
)
前回授業の復習
① 応力とは、単位面積あたりの内力大きさのことである。
式
(
)
【
N】
σ【
M pa】
=
断面積:A【mm2】
(
)
【
mm2】
② ひずみとは、単位長さあたりの変形のことである。
伸び:Δl【mm】
式
(
)
【
mm】
ε=
(
)
【
mm】
荷重:W【N】
③断面に垂直な方向に生じる応力なので(
④荷重の加わる方向に変形するので(
4.応力とひずみ
)応力という。
)ひずみという。
(教 P55~56)
ここでは、材料の機械的性質を調べる方法の一つである、図1~図3引張試験の結果から、その特徴を
見ていく。
下図の材料試験機に JIS により定められた試験片材料を固定し、材料の上部を上方向に引っ張る
ことで荷重を加えていく。ここで得られるのは縦軸が荷重、横軸が伸びとなる。
この試験結果から、材料の機械的性質を示すために縦軸を応力、横軸をひずみに置き換える。
荷
重
[図1 材料試験機]
[図2 材料試験片機]
伸び
真応力
実際の断面積を
★公称応力
[図3 荷重-伸び線図(S25C:軟鋼)]
基準に求めた応力
試験前の断面積を
応
力
(
基準に求めた応力
)
(
(
(
)
)
(
(
)
)
(
(
)
)
) ひずみ
[応力-ひずみ線図(軟鋼)]
<
比例限度、弾性限度とは?
σP:
:0点~B 点
>
比例限度・・・応力とひずみが(
)の関係にある。荷重を取り除くと変形は元に
もどる。
σE: 弾性限度・・・荷重を取り除くと変形が元に戻る限界の応力値。
☞荷重を取り除くと元に戻る材料の性質を(
)という。
また、弾性限度内の変形を弾性変形という。
☞永久ひずみを生じる材料の性質を(
)といい,その変形を塑性変形とい
う。
<
降伏点・耐力とは?
σyU:
:C 点~D 点
上降伏点・・・(
>
)変形から(
)変形に変わる目安として使われる応力
の値。
☞設計の際の強度計算の一つの指標になり、材料の性質を知る上で非常に大切になる。
☞降伏点がはっきりと表れないアルミニウムなどは(
)%の永久ひずみ生じた
ときの応力をもって降伏点とし,この応力を(
)という。
σyl: 下降伏点・・・・応力が一定でしばらくひずみが進行するところの応力の低い部分。
<
引張強さと破断とは?
σB :
引張強さ…材料が(
F 点: 破断
*
:E 点~F 点
>
)しないで耐えられる最大の応力。
…E 点を超えてからは材料に(
課題 ~考えてみよう~
)が生じて F 点で破断する。
*
①材料の塑性を利用した加工法にどんなものがありますか?
(
)班
②軟鋼で機械や構造物を設計する場合,降伏点と引張強さどちらが重要となりますか?その理由
は?