小論文 早稲田大学 スポーツ科学部 1/2 <総括> 試験時間 90 分 総解答字数 801~1000 字 出題傾向に一つの変化があった。昨年度までは、文章にせよ図表にせよ、一定のボリュームがある資料を読ん だ上で論述する読解重視型の問題だったが、今年度はそうした資料が見当たらず、驚いた受験生は多かったにち がいない。しかしながら、資料の読解要素が完全にゼロになった訳ではない。 【関連事項に関する記述】や【否 定側の論点】と題された短文の論点を踏まえて論述することが求められており、首の皮一枚で従来の問題形式が 維持されていると見ることができるだろう。 内容的には、高校の「運動部の活動」の改革を巡る問題である。改革すべきという立場を必ず取らなければな らないのは幾分特異な要求であるが、改革に向けた論陣を張るには高校の運動部の現状において何らかの問題が あることを言えばよい。つまり、高校の部活動の問題点をできるだけ明瞭に取り出すことが論述のポイントであ り、高校スポーツを取り巻く状況に一定の問題意識さえあるならば、さほど難しい作業ではないだろう。その意 味で、内容的には極めてオーソドックスな問題であり、見かけほど奇妙なものではない。 <課題資料の分析> 大問番号 内 容 (主題) 部活動の意義 出 典 (作者) 高等学校学習指導要領 長短・ 難易等 前年比較 長短(短い・変化なし・長い) 難易(易化・変化なし・難化) <大問分析> 大問 出題 形式 テーマ テーマ・課題文の内容 学部系統的 設問 設問形式 論述 解答 コメント(設問内容・論述ポイントなど) 字数 801 〜 高校の運動部の問題点について論じる。 1000 字 ※出題形式は「テーマ・課題文(英文を含む場合は付記する) ・図表・その他」 ※テーマ・課題文の内容は「一般教養的・学部系統的・教科論述的・その他」 ※設問形式は「論述・要約・説明・分析・その他」 © 河合塾 2016 年 小論文 早稲田大学 スポーツ科学部 2/2 <答案作成上のポイント・学習対策等> 高校の運動部の改革を主張するには、そこにどんな問題点があるかを示すことが重要になる。改革肯定派の立 場から運動部の現状を「検証」するとは、そこにどんな問題があるかをしっかりと把握し、明確に取り出すこと を意味する。具体的には、過度の競争主義によって生まれる体罰や特待生制度のひずみなど、 「教育の一環」とい う部活動の意義を蔑ろにするようなケースがまず挙げられるだろう。また指導者(力)不足の結果、指導らしい 指導がなされなかったり不合理な指導が横行したりすることによって「競技力の向上」どころか「生徒の一体感 などの醸成」すら失敗するケースもあるだろう。あるいは怪我への認識不足のために選手生命が絶たれたり、競 争主義や厳格な上下関係によって人格的成長が阻まれるケースもあるだろう。このように、自分自身が経験しな くとも、報道で伝えられる事件やトラブルは多く、それがどのような原因や構造において生じたかを明瞭に示す ことができれば、説得力のある「検証」を行ったことになる。 論述では、さらに改革の方向性を打ち出せればよい。設問において明確に求められているのは「検証」という 作業だけである。しかし現状に問題があるならば、それをどのような方向で解決していくかを考えることは小論 文において当然の作業である。それを中心に論じる必要はないにせよ、一定程度解決の方向性を探ることが答案 全体の説得力を高めることになるだろう。 このように、今年度の問題では高校スポーツの現状について考察することが求められている。こうしたスポー ツの現状、およびそれを取り巻く環境についての考察は、高校スポーツに限らず、スポーツ科学部の入試に必須 のものである。こうした考察を入試でしっかり行えるようにするには、普段からスポーツについて考える=書く ことを通じて、今日のスポーツに対する問題意識を高めておくことが何より重要である。 © 河合塾 2016 年
© Copyright 2024 ExpyDoc