小論文 横浜市立大学 (前期) 1/1 <総括> 試験時間 60 分 総解答字数 1000 字 横浜市立大学医学部は、医学・医療関連の話題から出題される年と、差し当たり医学・医療とは関係がない社 会的問題から出題される年とがあり、今年は後者だった。わが国の食料自給率に関して考察を求める問題である。 このとき、①わが国の食料自給率が世界的に見てきわめて低い水準にあることは常識だろう。そしてそこから決 まって、②「食料自給率を引き上げるべきだ」という意見が出され、そしてそこからさらに③「日本の農業は保 護されるべきだ」という意見が導かれる。しかしこうした、世の中に流布している雑駁な三段論法だけでは、1000 字は決して埋まらない。以上①②③の各々について、本当にそうなのか、よく分析し検証してみる必要があり、 これを詳細にやって初めて、1000 字の有意味な答案を仕上げることができるだろう。これは難問である。 <課題文の分析> 大問番号 内 容 (主題) 長短・ 難易等 前年比較 日本の食料自給率 長短(短い・変化なし・長い) 難易(易化・変化なし・難化) <大問分析> 大問 出題 形式 テーマ テーマ・課題文の内容 一般教養的 設問 設問形式 論述 解答 字数 1000 字 コメント(設問内容・論述ポイントなど) 我が国の食料自給率について、意見を述べ る。 ※出題形式は「テーマ・課題文(英文を含む場合は付記する) ・図表・その他」 ※テーマ・課題文の内容は「一般教養的・学部系統的・教科論述的・その他」 ※設問形式は「論述・要約・説明・分析・その他」 <答案作成上のポイント・学習対策等> まず①我が国の食料自給率が低くなる構造的原因を分析する。我が国の気候風土は小麦、トウモロコシ、大豆 といったものを生産するのに適さず、これらを全面的に輸入に依存している。そして戦後の食生活の洋風化、肉 食化がその需要量を押し上げ、その結果食料自給率が押し下げられたのである。また工業的成長を遂げた日本の 円が高くなった結果、日本は海外から安価に食材を調達できるようになったのであり、典型的にはマグロ、ウナ ギ、エビといったものがそれである。以上のように見ると、日本の食料自給率が低くなるのは当然であって、食 料自給率を上げようとすれば、私たちは現在の豊かな食卓の大半を諦めなければならなくなることがわかってく る。 そこから、 「食料自給率を上げよう」という考え方は非現実的であるという結果が出てくる。かといって食料自 給率を今後さらに下げていくことは好ましくない。それではなぜ好ましくないのか。これを国土の利用や環境保 全、食文化の維持発展といった観点から考察してみよう。わが国はシンガポールやサウジアラビアのような国で はないのだから、この豊かな自然と国土を維持し、それを有効に活用し続けていかなければならない。また日本 の食文化は、現代では世界的な評価を受けており、これを維持し発展させていくためには、やはり守るべきもの があるだろう。そこから踏み込んで、食料自給率を下げないための政策について具体的に考えていくとよい。 横浜市立大学医学部医学科は、本年度の問題のように、その場で頭を使って書くことが求められる。出題され るのは医学・医療の問題以外に、現代社会において問題になっていることが広く出題されるので、これに対する 「問題解決型思考」ができなければならない。問題解決型思考で求められるのは、まず現状を正確かつ詳細に分 析できる力であり、そしてそこから問題解決の指針、課題を明確化する力である。これを涵養するためには、日 ごろからの小論文の対策が欠かせない。 © 河合塾 2016 年
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