小論文 - 河合塾

小論文
名古屋大学
<総括>
法学部(前期) 1 / 2
試験時間
90 分
総解答字数
1400 字
石川健治「国家・主権・地域─あるいは言葉の信じられない軽さについて」
(
『法学教室』361 号 2010 年)
を用い、地域と国家との関係から「主権国家・非主権国家・自治体」という三元的な国家把握のあり方を論
じながら主権概念の重要性を問い、そのうえで現在の日本社会の構造変化を「地域主権論」という枠組みで
考えることへの評価を求めるという出題であった。例年と同様、政治学あるいは法律学的な視点で現代社会
のあり方を考えさせようとする出題意図を見ることができる。
前年度と比べて課題文が 7 ページから 11 ページへと大幅に増加し、さらに、国家や主権の捉え方について歴
史的、理論的な観点からの専門的な議論を読み取ることが求められているため、課題文の読み取りは相当難
しかったのではないかと思われる。また、設問数は3問から2問へ減少したものの、解答字数が 1260 字から
1400 字へと増加した。これらのことを考えると、受験生への負担は相当重くなったと言える。
<課題文の分析>
大問番号
内
容
(主題)
「主権国家・非主権国家・自治体」という三元的な国家把握と「地域主権論」
出
典
(作者)
石川健治「国家・主権・地域─あるいは言葉の信じられない軽さについて」
『法学教室』
(361 号 2010 年)
長短・
難易等
前年比較
長短(短い・変化なし・長い) 難易(易化・変化なし・難化)
© 河合塾
2016 年
小論文
名古屋大学
法学部(前期) 2 / 2
<大問分析>
大問
出題
テーマ・課題文の内容
形式
課題文 学部系統的
型
設問
設問形式
問1
説明
解答
コメント(設問内容・論述ポイントなど)
字数
400 ~ 課題文で筆者は「主権国家・非主権国家・
600 字 自治体」という三元的な国家把握がどの
ようにして形成された考え方だと述べて
いるかを説明することが求められてい
る。フランスやドイツにおける地域と国
家との関係を軸に、課題文冒頭の「主権」
の性格付けと、文中の小見出し「地域・
主権・国家」の部分における議論を中心
に解答を作成する。
課題文の筆者が、日本社会の構造変動と
それに応じた改革・改造を「地域主権論」
によって論じていくことに対し、どのよ
うな評価をしているかを踏まえて、受験
生自身はこの問題をどう論じていくべき
と考えるかを論じることが求められてい
る。課題文中の小見出し「器と中身、あ
るいは概念と社会」の部分で紹介されて
いる「地域主権」をめぐる議論を何らか
の形で踏まえたうえで、地方分権や道州
制論、琉球処分以降の沖縄の位置づけや
外国人労働者などの在留外国人の受け入
れをめぐる議論といった「日本社会の構
造変動」を示す事例を取り上げて、国家
や主権のあり方といった観点からそれら
の問題を検討していくことが必要であ
る。
※出題形式は「テーマ・課題文(英文を含む場合は付記する)
・図表・その他」
※テーマ・課題文の内容は「一般教養的・学部系統的・教科論述的・その他」
※設問形式は「論述・要約・説明・分析・その他」
問2
論述
600~
800 字
<答案作成上のポイント・学習対策等>
外国人労働者や在日コリアン、
また欧州における難民やそれを生み出している国家や宗教のあり方
など、マスコミや論壇では、社会の仕組みのあり方そのものをめぐる議論が盛んにおこなわれてい
る。名大法学部の小論文は例年、こうした現在の社会経済情勢をどのように理解しているか、とい
う受験生の見識を問う傾向が強い。そのため、現代社会や政治経済といった公民分野の教科書に取
り上げられている項目と、実際の政治や経済における出来事とがどう結びついているのかを、常日
頃から意識しておくことが必要である。
なお、今回の出題は、昨年よりも課題文は 4 ページも長くなり(全 11 ページ)
、総解答字数は昨年
の 1260 字から 140 字増加して 1400 字にも達している(2014 年度は 1040 字)
。そのため、名大法
学部を志望する受験生は北海道大学や大阪大学など、他の国立大学の法学部の過去問などを使っ
て、長い課題文を用いた問題や 1000 字を超える解答字数を求める問題に取り組むなど、かなりハ
ードな練習を積んでおく必要があろう。
© 河合塾
2016 年