イエレン議長のメッセージ イ レン議長のメッセ ジ ~待ちくたびれて弱気相場

2016年2月12日
イエレン議長のメッセージ
イ
レン議長のメッセ ジ
~待ちくたびれて弱気相場~
世界株式の指数が最高値から20%下落し、「弱気相場」と呼ばれる事態に至りました。この
きっかけとなったのは 2月10日のイエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言で
きっかけとなったのは、2月10日のイエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言で
す。いつもであれば、イエレン議長の言葉遣いの詳細を分析するところですが、今回は必要な
いようです。なぜなら、金融市場の反応が、米国株式の下落、米国金利の低下、米ドル安(円
高)となったからです。
ファンダメンタルズ(基礎的条件)面から言えば、米国がリードするリーマン・ショックか
らの回復は続いているとみられ、雇用回復がようやく賃金上昇につながり始めました。そして、
今後、米国消費の回復が日本や欧州の輸出拡大などを通じて先進国の消費拡大に波及し、生産
拠点である中国などが景気回復して資源国の回復を促すといったことが期待されます。
しかし、米国での賃金上昇の遅れから、米国消費は原油価格(ガソリンや燃料などの価格)
が下落しているにも関わらず伸びていないようです。結果として、日本や欧州の輸出数量の伸
びは遅く、昨年12月の米国の利上げ時点でもう少し強かった景気回復への信頼感が「待ちくた
びれ感」に変わったように思います 市場では景況感について 一時的に多少落ち込んだとし
びれ感」に変わったように思います。市場では景況感について、
時的に多少落ち込んだとし
ても、回復の勢いが増せば大丈夫との見方から、さらに落ち込むといった見方に移りつつあり
ます。結果として、米国の利上げが先送りされ、米ドル高も先送り、日本や欧州の輸出の伸び
が遅れる、などといったことが市場参加者の想定となってきたように思えます。
これに加え、世界的な信用不安の兆しが強まってきました。原油価格の下落は、本来先進国
の消費を改善させますがその勢いは鈍く、1バレル=100米ドルの原油価格を当てにして投資し
た資金の回収も難しい状況が続きそうです。2014年後半から活発になったシェールオイル・ガ
資金
収 難
状 が続き う す
年後半 ら活発 な
ガ
スの技術革新が一巡しても、2015年以降はOPEC(石油輸出国機構)など産油国の協調の困難
さやイランの増産が目立ってきました。投資資金の回収の可能性の低下が、石油関連業界や新
興国、コモディティ関連へのクレジット・スプレッドを拡大させることになるでしょう。
主要資産の推移
直近 注)
16年2月11日
年 月
世界株式
(MSCI ACワールド指数、米ドル・ベース)
日経平均株価(円)
円相場(対米ドル)
原油(WTI先物)価格(米ドル/バレル)
米国10年国債利回り(%)
日本10年国債利回り(%)
353.35
15,713.39
111.73
26.21
1.660
0.022
15年高値
442.70 15年5月21日
20,868.03
116.57
61.43
2.485
0.536
15年6月24日
15年1月16日
15年6月10日
15年6月10日
15年6月11日
リーマン・ショック(2008年9月15日)後の
高値
安値
442.70 15年5月21日
20,868.03
75.82
120.92
4.079
1.593
15年6月24日
11年10月27日
08年9月22日
08年10月14日
08年10月16日
172.70
09年3月9日
7,054.98 09年3月10日
125.33 15年6月8日
26.21 16年2月11日
1.388 12年7月24日
-0.025 16年2月9日
注)日経平均株価と日本10年国債利回りは16年2月10日
(信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
※上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。
■当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境についてお伝えすることを目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘資料ではあり
ません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料作成時点のものであり、将来
の市場環境の変動等を保証するものではありません。■投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産は為替変動リスクもあります。)を投資
対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用を
ご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
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さらに、2016年になって新たな問題がクレジット市場にもたらされました。欧州の銀行への
信頼感の低下です。ECB(欧州中央銀行)の金融緩和策で利益の縮小がある程度予想されてい
たとはいえ、ドイツの大手銀行の収益とクレジットに関する不安などといった個別の問題が明
るみに出ました。しかし、このことよりも重大な問題は、ギリシャの構造改革の遅れに対して
EU(欧州連合)側の結束が乱れそうなことです。経済問題ではなく難民の大量流入と言った社
会問題で、ギリシャの難民対応への批判が、難民の受け入れに寛容な独メルケル首相のEUにお
けるリーダーシップを弱める恐れがあります。このことが、ポルトガルやスペイン、イタリア
などの国債利回りを上昇させてしまうことになると、欧州の銀行などの利益にとってさらなる
圧迫要因 なり ク ジ ト関連市場 価格が大きく変動す 可能性も考えられます
圧迫要因になり、クレジット関連市場の価格が大きく変動する可能性も考えられます。
今後について考えると、まずは米国の賃金上昇や原油価格下落の良い影響が見えてくるタイ
ミングが重要です。1つや2つの経済指標が改善しても市場参加者は満足できないかもしれない
ので、景況感が回復するには3ヵ月程度かかると想定されます。クレジット問題については、
欧州ではECBが何らかのクレジットへの対策を打つ可能性があります。たとえば、南欧諸国な
どの国債の買入れ拡大や銀行の資金調達の支援の追加などにより、市場を落ち着かせるかもし
国
行
調
落 着
れません。原油価格については、サウジアラビアやイラン、ロシアなど、中東の地政学問題に
絡んでお互いに背を向けあっている国々が、中南米の産油国の仲立ちなどで、なんらかの形で
協調する可能性も考えられます。
日本株を見ると、日経平均株価15,000円の水準は、アベノミクス期待が落ち着いた2013年か
ら2014年の平均的な水準であり、その後の米国の本格回復期待にリードされて上昇した2015年
の20 000円強からの下落は 米国ひいては世界経済回復が「い たん遠のいた」状態と解釈で
の20,000円強からの下落は、米国ひいては世界経済回復が「いったん遠のいた」状態と解釈で
きると思います。しかし、現段階は株式などが「落ちてくるナイフはつかむな※」といった状
態にあるとみられます。
※底を打ったのを確認してから投資すべき、という相場格言
米国経済の回復タイミングが若干遠のいたとしても、現状においては、世界経済のトレンド
が悪化すると悲観する理由は見あたらないと思います。世界経済の回復基調を信じるのであれ
ば、リスク資産を手にするチャンスと言えるでしょう。短期的には、原油価格の下落でメリッ
トがあると考えられる先進国を中心に、金融不安などと直接関連がなく、かつ割安とみられる
資産を探して時間分散で投資を行ない、その後は米国の経済指標や欧州の金融政策、産油国の
協調体制の動きなどに変化の兆しが見え始めるにつれて、リスク資産への投資を追加していく
ことが良いのかもしれません。
チーフ・ストラテジスト
神山直樹
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ません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料作成時点のものであり、将来
の市場環境の変動等を保証するものではありません。■投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産は為替変動リスクもあります。)を投資
対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用を
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