2016年4月8日 円高の急進について 足元、為替相場が2014年10月ごろと同水準の1米ドル108円程度になっている。為替の水準は一 つの国の状況だけで決まるのではないが、米ドル円であれば、日本と米国のインフレ期待の差など が強く影響する 経済のフ ンダメンタルズ(基礎的条件)の観点から見れば 2015年秋ごろに が強く影響する。経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の観点から見れば、2015年秋ごろに は賃金上昇の勢いが増し、緩やかとはいえ同年12月に始まった利上げの継続が予想される米国と、 米国を中心とした世界景気の回復待ちで、マイナス金利などの金融政策を行なっている日本とを比 較すれば、2014年の時よりも今のほうが円安(米ドル高)であるべきに見える。 ところが、このところ為替市場参加者の多くが100-105円(米ドル円、以下同じ)へのテクニカ ルな動きを予想しているようだ。為替相場を決める要因が仮にインフレ期待格差であったとしても、 将来のことは誰にもわからないので、経済学の想定する美しい「期待」は、現実では「予想」とな る。2015年に120-125円の円安水準になっていた時点では、米国の成長への回帰は容易に進み、 2016年には米国の政策金利は1.75%にもなろうかという予想だった。ところが、2015年8月の中国 人民元ショック(実質的な切り下げ)で、米国中心の世界景気の回復スピードが意外に遅いとの懸 念が高まり、2015年12月の米国の利上げは焦りすぎとみる市場参加者も出てきた。さらに、2016 年に入って原油価格の下落、一部欧州金融機関の信用不安、米国の消費回復の予想外の遅れなどが みられ、成長への回帰が容易ではないことが、市場の新たな予想となってきた。為替相場をテクニ カルの観点から見ると、2015年の120-125円が「行き過ぎ」であるならば、円高方向へも100-105 円にオーバーシュートすることもあり得るのだろう。 為替(米ドル円)の推移 (2014年1月初~2016年4月7日) (円) 130 125 120 115 110 105 100 95 2014年1月 2014年7月 2015年1月 2015年7月 2016年1月 (信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成) (信頼できると判断したデ タをもとに日興アセットマネジメントが作成) ※上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。 ■当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境についてお伝えすることを目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘資料ではあり ません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料作成時点のものであり、将来 の市場環境の変動等を保証するものではありません。■投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産は為替変動リスクもあります。)を投資 対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用を ご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。 1/2 ここまで述べたことを単純化すると、為替の水準が、120-125円から100-105円へのサイクル的 な動き(行ったり来たり)があってもおかしくないと思う市場参加者が増えつつある時に FOMC な動き(行ったり来たり)があってもおかしくないと思う市場参加者が増えつつある時に、FOMC (米連邦公開市場委員会)の2016年3月の議事録の内容が予想以上の弱気ムードであったことが分 かったことや、一部報道にあった安倍首相の“恣意的な為替介入は慎む”といった発言などが重 なった。どちらも経済のファンダメンタルズを変える内容ではないが、円高が進んだということは、 市場参加者の平均的な予想を変える力があったのだろう。FOMCの議事録の内容は、比較的景気に 対して強気派が多いと思われていた理事会メンバーが、思いのほか景気回復に強く懸念を抱いてい ることを示していた これは 利上げペースの鈍化や米ドル金利低下 ることを示していた。これは、利上げペ スの鈍化や米ドル金利低下、米ドル安につながっている。 米ドル安につながっている 安倍首相の発言は、為替介入の可能性が小さいことを示唆しており、米ドルを売りやすくした。ま た、市場参加者は、日銀がマイナス金利を導入したばかりなので、追加緩和の可能性は目先遠のい たと判断したようだ(4月の金融政策決定会合に向けて追加緩和催促相場と言えなくもない)。さ らに、日銀短観で大企業製造業の想定為替レートが117円台と円高方向に修正されたことで、企業 がヘッジ目的の米ドル売りを行なうとの予想も出てきた。加えて、海外投資家の日本株売りが多額 であったことから、一部で行なわれていた円ショートヘッジの買戻しが入りやすかったとの見方も あ た ら、 部 行なわれ た円 ト ッ 買戻 入りやす た 見方も ある。 しかし、ここまで述べた内容は新しい情報とは言えず、経済指標などのファンダメンタルズにお ける情報で円高を示唆するものは見当たらないように思う。米ドル強気の見方に「マイナス金利に より日本から外債投資が加速している」面はあるが、市場では「一時的」と見過ごされているよう に映る。さまざまな見方を積み上げても予想は難しいが、足元で円高方向の情報が「好まれてい る」ということは 早晩 逆も起こりえる(円安に敏感な市場になる)とい たことを想定してお る」ということは、早晩、逆も起こりえる(円安に敏感な市場になる)といったことを想定してお くことも必要だ。しばらくは、米国の消費改善などのファンダメンタルズにおける指標の改善を待 つことになろう。今後、この改善が確認されれば、円安と株高につながると期待される。 チーフ・ストラテジスト 神山直樹 ■当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境についてお伝えすることを目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘資料ではあり ません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料作成時点のものであり、将来 の市場環境の変動等を保証するものではありません。■投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産は為替変動リスクもあります。)を投資 対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用を ご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。 2/2 2/2
© Copyright 2025 ExpyDoc