G20を終えて ~主要国の政策はどうなる~

2016年2月29日
G20を終えて
~主要国の政策はどうなる~
2月26-27日に開催された20ヵ国・地域の財務相・中央銀行総裁会議(以下、G20)は、最近
の市場変動にはファンダメンタルズ(基礎的条件)が反映されておらず、金融市場を安定させ
るためにす
るためにすべての政策手段を用いるとの共同声明をまとめ、閉幕しました。為替市場について
政策手段を用 ると 共同声明をまとめ 閉幕 ま た 為替市場に
は、過度の変動などは経済や金融に悪影響が及ぶとし、競争的な切り下げを回避するよう緊密
に協議するとしています。今回のG20を受けて、3月中旬から連続して開かれる欧州、米国、日
本の中央銀行の金融政策に関する意思決定会合の注目点などについて、弊社ストラテジストの
見解をお伝えします。
G20の合意は前もって市場が想定している範囲内に収まったと思います。そのこと自体は安
合
範囲
体
心につながります。具体的には、主要国が金融政策のみならず財政政策も積極的に利用するこ
ととしています。これは、中国の構造的な過剰供給の削減を進める必要がある中で、各国の自
然な政策選択の一つであり、同国自身も激変緩和のための財政出動を検討しているようです。
また、米国大統領選の予備選で一部の候補者から日本も為替操作をしているなどと批判されて
いることや、人民元の急激な変動は望ましくないとの指摘から、通貨切り下げ競争を避けるこ
となどについて合意されたと思います。
人民元については、IMF(国際通貨基金)のSDR(特別引き出し権)の構成通貨として採用
が決定されたことで、資本取引規制の緩和を求められています。主要国は、15年8月ごろのよ
うな突然の急変動を望んでいないことや、中国がIMFと約束した人民元の自由な取引に向かっ
て、状況に応じて緩やかに変わればよいと考えていると思われます。また、中国はQFII(適格
国外機関投資家)などからの資本流入の規制をさらに緩めることで、資本逃避を相殺する仕組
みを強化すると考えられます
みを強化すると考えられます。
米ドル・ユーロ(対円)の推移
(2015年7月1日~2016年2月26日)
米ドル(左軸)
(円 )
ユーロ(右軸)
人民元の推移
(2015年7月1日~2016年2月26日)
(円 )
130
145
125
140
(人民元 )
7.0
6.7
135
120
130
対米ドル(左軸)
対円(右軸)
(円 )
17
人民元安
18
人民元高
6.4
19
6.1
20
円安
115
125
110
120
円高
105
15/7
15/8
15/9 15/10 15/11 15/12 16/1
115
16/2 (年/月)
5.8
15/7
15/8
15/9 15/10 15/11 15/12 16/1
21
16/2 (年/月)
(信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
(信頼できると判断したデ
タをもとに日興アセットマネジメントが作成)
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■当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境についてお伝えすることを目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘資料ではあり
ません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料作成時点のものであり、将来
の市場環境の変動等を保証するものではありません。■投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産は為替変動リスクもあります。)を投資
対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用を
ご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
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3月の中央銀行の意思決定会合でもっとも注目しているのは、10日に開催されるECB(欧州
中央銀行)理事会で、ドラギ総裁が再び“スーパーマリオ”と称される可能性です。ECBが利
下げと資産買入増額の追加緩和を決定するであろうことを 市場はある程度織り込んでいると
下げと資産買入増額の追加緩和を決定するであろうことを、市場はある程度織り込んでいると
思われます。しかし、ギリシャの財政規律確立の遅れとEU(欧州連合)主要国間の対立がイタ
リアやスペインの国債などの信用に飛び火しかねない環境にあることから、ECBはこうした
国々の国債や社債などのクレジット市場に積極的な介入を行なう可能性があるとみています。
日銀がETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)を買入れているように、ECBがクレ
ジットの観点から利回りが上昇する市場への介入を強める政策を示すことになれば、難民増加
で債務の増加が懸念されるギリシャ問題と他の国のクレジット懸念の問題とを切り離すことが
できるかもしれません。
米国については、3月の利上げ見送りを市場はおおむね織り込んでいると思います。 FRB
(米連邦準備制度理事会)が15年12月の利上げの際に示した委員の平均的見通しである年4回
程度の利上げを一旦あきらめることになれば、金融市場が落ち着く要因となります。ただし、
このことは米ドル安(円高、ユーロ高)要因でもあるため、日本や欧州にとってはニュートラ
ルになるかもしれません。
日本については、16年1月にマイナス金利導入を決定したばかりで、早々にマイナス幅を拡
大するとは予想し難いと思います。仮に追加緩和した場合は、前回の追加決定が不十分であっ
たと自ら認めることとなり、必ずしも市場が良い受け止め方をするとは限りません。一方、一
種の財政政策として、消費税率10%への引き上げ延期の声が強まるかもしれません。中国の過
剰供給の削減や難民問題の余波で欧州の貿易や信用問題が懸念される環境下での消費税率引き
上げは、金融政策だけでは不十分とされたG20の趣旨からすれば望ましくないと見なされるで
しょう。また、16年1-3月期のGDP(国内総生産)成長率が再びマイナスになれば、7月の衆参
ダブル選挙の可能性や消費税率引き上げを先送りする可能性も少し出てくるかもしれません。
米国は雇用の堅調を背景に賃金も伸び始め、消費が強くなる、もしくはインフレ的になると
期待されるものの、その兆しが明確にならないことが「市場のご機嫌」を悪くしていると言え
そうです 消費に関する経済指標が数 月に亘 て強くなり市場が自信を取り戻すまでには
そうです。消費に関する経済指標が数ヵ月に亘って強くなり市場が自信を取り戻すまでには、
少しの間、各国の政府や中央銀行の政策に一喜一憂する展開が続くと思います。
チーフ・ストラテジスト
神山直樹
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