「ブレグジット(英国のEU離脱)」についての 弊社ロンドン運用チームの見解

2016年6月27日
「ブレグジット(英国のEU離脱)」についての
弊社ロンドン運用チームの見解
6月23日に英国で行なわれた国民投票において、英国のEU(欧州連合)離脱への支持が過
半数に及んだことを受け、24日に世界の金融・資本市場は大荒れの展開となりました。以下
は、今回の国民投票の結果を受けての、弊社ロンドン運用チームの見解です。
英国民はEU離脱を選択
6月23日に行なわれたEU離脱の是非を問う国民投票は、「離脱」派の勝利となった。投票
率は72.2%にのぼり、離脱支持が51.9%、残留支持が48.1%という結果であった。24日に
キャメロン首相は辞意を表明したが、同首相が党首を務める保守党が10月に行なわれる予定
の党大会で新たな党首を選ぶまでは首相職を続ける意向も示した。同首相は、EUに対する離
脱の意向の公式な通知を自身では行なわないとしており、新しく選ばれる首相の下でEUとの
交渉が進められ、どのように離脱手続きを進めていくかが決定することになる。
次期党首候補として有力視されているのは、ボリス・ジョンソン前ロンドン市長のほか、
テリーザ・メイ内相、マイケル・ゴブ法相などとなっている。与党保守党はおそらくこれら3
名の中から2名を候補として選出し、決選投票を行なうこととなろう。ジョンソン氏は保守党
内で絶大な人気を誇っており、もし最終候補に選ばれた場合は勝利すると見込まれている。
また、メイ氏は中道派とみられているが、同氏が党首に選出されれば、今回の国民投票で分
断した党内を早期に一つにまとめることが期待できるだろう。
開票が進み、「離脱」支持の優勢が明らかになるにつれて資産価格は下落、格付会社スタ
ンダード&プアーズ(以下、S&P)は、現在AAAとしている英国国債の格付を維持できない
との見解を表明した。一方、英中央銀行のイングランド銀行およびECB(欧州中央銀行)の
いずれも、金融市場の安定のために必要なあらゆる措置を講ずる用意があると表明した。
今後、市場にとって重要なことは、英国のEU離脱に向けての行程に加え、今回の国民投票
が他のヨーロッパ諸国に与える政治的な影響である。
まず、今後の行程だが、離脱派はすでに政府が離脱に向けて取るべきフレームワークを提
示している。この行程は、今後、保守党のリーダーシップを引き継ぐと期待されている内閣
のシニアメンバーによって作成されたものであることから、政府がどのような行動を取るか
を予測するためのヒントを与えてくれるだろう。以下、その主なフレームワークを示す。
• まず、英国はEUメンバー国および欧州委員会との非公式交渉を行なう必要があり、同交渉
によって、EUからの離脱について規定したリスボン条約第50条を執行するかどうか、ある
いはどのように執行するかがはっきりする。すなわち、6月23日の投票結果を受けて、同条
約が自動的に執行されるわけではない。
• 英国の利益を守るためのより良い条件を引き出すことが重要であり、かつ党派を超えた離脱
キャンペーンが行なわれた事実に照らして、政府は他の政党、実業界、法律家、一般市民か
らも人材を招き、離脱交渉チームを組成することになるだろう。
• 国民投票の結果を受け、英国は即座に、米国、中国、日本、カナダ、オーストラリア、韓国、
ニュージーランドなどの主要国や新興国などとの新たな貿易交渉を始めることができる。
■当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境についてお伝えすることを目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘資料ではあり
ません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料作成時点のものであり、将来
の市場環境の変動等を保証するものではありません。■投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産は為替変動リスクもあります。)を投資
対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用を
ご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
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そして、英国が正式にEUから離脱した後、これら新しい貿易条件が適用されることとなる。
• EUの主要機関への資金供給は、離脱交渉開始後も政府が2020年の議会終了まで資金提供を
続ける義務を持つことから、当面、影響を受けることはないだろう。
このフレームワークは市場が懸念しているほど拙速なものではないため、今後、こうした
内容が広まれば、市場心理も落ち着きを取り戻すだろう。しかし、もし政府が市場に対する
明確な情報発信を怠れば、不透明感が高まる可能性も否定できない。この行程におけるその
他の問題点は、英国による非公式な交渉の試みに対して、EUがどのように応じるかという点
である。一つの見方は、英国が欧州理事会に離脱の意向を伝えるまで、EUがいかなる交渉に
も応じないというものである。欧州委員会が24日に発表した以下の共同声明は、今回の国民
投票の結果に対して、EUが強硬な姿勢を取る可能性を示唆している。
「我々は英国政府が国民の選択を、それがいかに痛みを伴なうかにかかわらず、可及的速
やかに反映することを期待している。こうした手続きのどのような遅れであっても、さらな
る不透明感をもたらすだろう。我々はこの決定に対して秩序正しい方法で対処すべき仕組み
を有している。リスボン条約第50条は、EU加盟国がEU離脱を決めた場合に従うべきプロセ
スを提示している。」
もし市場が、英国のEU離脱はまだ先のことであり、これまで懸念していたほど悪い計画で
はないかもしれないと捉えるような場合、市場の関心は英国から離れ、より中期的な問題と
して認識され直される可能性もある。しかしながら、その場合、市場の注目は今回の国民投
票の結果が他のEU加盟国に及ぼす影響に移ることになるだろう。次に注目されるのは、デン
マークやスウェーデンなどの北欧諸国である。両国はともにEUに関する国民投票を行なう可
能性のある国である。ノルウェーもEUとの再交渉を求める可能性がある。
国民投票が英国経済に与える直接的影響
英国の立場に対する信頼が回復するまでは、英国の企業景況感の低下が危惧される。その
ため、企業による投資と雇用が減少し、結果的に英国経済の成長を抑制することになるだろ
う。すなわち、今後数四半期の英国の経済指標は弱くなる可能性がある。イングランド銀行
はこれに対して利下げで対応し、政策金利を現在の0.50%からゼロ金利まで引き下げる可能
性がある。しかし、そうした行動を取るためには、今回の国民投票の結果によって実体経済
が明らかにマイナスの影響を受けることを確認する必要があるだろう。主要な調査機関は経
済予想の見直しに取り組んでいるが、米大手銀行の場合は次の3四半期は緩やかな景気後退を
見込んでいる。この見方によると、英国の経済成長率は2016年1.4%、2017年0.2%となる。
インフレ見通しは通貨ポンドに影響されるが、インフレ率がイングランド銀行が心配する水
準まで上昇するには、さらなる通貨の下落が必要となるだろう。
世界市場への影響
今後、離脱に絡む交渉がどの程度の期間続くかが定かでないことから、不透明感がしばら
くは続くとみられる。24日の市場では、質への逃避によって、英国国債、米国国債ともに価
格が上昇し、利回りは低下した。S&Pが英国国債の格付を引き下げる可能性を示唆したにも
関わらず、同国債は上昇を続けている。反対に、英ポンドは対米ドルで急落した。同様に、
その他各国の通貨も米ドルに対して広く下落した。そうした中で、円は大きな上昇を示し、
トップパフォーマーとなった。一方、スペインやイタリアの国債利回りは上昇を示した。米
国では、FRB(連邦準備制度理事会)による7月の利上げの可能性は低下し、一部で利下げ期
待が台頭した。イングランド銀行は市場の雑音が静まるまでは様子見を決め込む可能性が高
いが、向こう3ヵ月は、市場に対して利下げ期待を維持するような姿勢を示すものとみられる。
以上
■当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境についてお伝えすることを目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘資料ではあり
ません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料作成時点のものであり、将来
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