Market Flash 円安にならない明快な答え 2016年3月18日(金) 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代 宏一 TEL 03-5221-4523 【海外経済指標他】~ISM:50回復の兆候~ ・3月フィラデルフィア連銀製造業景況指数は+12.4と市場予想(▲1.5)を大幅に上回った。ISM換算で は52.4と2月から6.5ptもの改善を示した。内訳は、出荷(+2.5→+22.1)、新規受注(▲5.3→+15.7) が極めて大幅に上昇したほか、雇用(▲5.0→▲1.1)が改善。出荷遅延(▲16.1→+0.3)、在庫(▲17.1 →▲12.7)はそれぞれ指数押し上げに寄与。既発表のNY連銀指数も大幅改善しており、両指数をISM 換算した上で合成した指数は51.7と9ヶ月ぶりに50超え。やや出来過ぎの印象が否めないとはいえ、製造 業の業況が最悪期を脱したことを示唆している。6ヶ月先の「期待」項目も総じて反発した。最近のドル 安、原油高が効いているのだろう。3月ISMは6ヶ月ぶりに50を超えるかもしれない。 ・1月JOLT求人件数は554.1万件と市場予想に概ね一致したものの、1月分は大幅に下方修正(560.7万件→ 528.1万件)。高水準を維持しており、旺盛な採用意欲を映し出している。ただし、労働市場の質的改善に 翳りがみられている点は要注意。転職活動の活発度合いの目安となる自発的離職率が低下しているほか、 採用率が1年半ぶりの低水準に落ち込んでいる。FEDが重視する賃金上昇率の加速に疑問を投げかける。 60 ISM指数・連銀サーベイ 採用率 (%) 4.5 ISM 55 4 50 3.5 45 フィリー・NY平均 3 40 2.5 35 07 08 09 10 11 12 (備考)Thomson Reutersにより作成 13 14 15 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (備考)Thomson Reutersにより作成 16 ・2月CB米景気先行指数は前月比+0.1%と3ヶ月ぶりに改善。ただし、指数は昨年後半から頭打ちになっ ており、ほとんど改善がみられてない。6ヶ月前比年率では+1.6%にモメンタムが鈍化した。 ・新規失業保険申請件数は26.5万件となり、前週から0.7万件増加。4週移動平均は26.8万件と低水準を維持。 雇用統計NFPの20万人増に整合するレベルでの推移が続いている。 (%) 12 400 10 370 8 340 6 310 4 280 2 250 0 10 11 12 13 (備考)Thomson Reutersにより作成 新規失業保険申請件数 (千件) CB景気先行指数(6ヶ月前比年率) 14 15 12 16 13 14 15 16 (備考)Thomson Reutersにより作成。太線:4週移動平均 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】 ・前日の米国株は上昇。利上げ観測が抑えられ、株高・金利低下・ドル安・原油高の展開。NYダウは昨年 末値を回復した。他方、欧州株はまちまち。EUR/USD反発が重荷。WTI原油は40.20㌦(+1.74㌦)で引 け。増産凍結の期待感が強まるなか、FOMC通過後のドル安が追い風。 ・前日のG10 通貨はFOMC通過後のUSD全面安が継続。原油価格上昇を背景に資源国通貨(NZD、NOK、AUD)が 強く上昇し、マイナス金利通貨も総じて堅調だった。USD/JPYは一時111を割れ、EUR/USDは1.13を突破した。 なお、米国時間早朝には日銀のレート・チェックの噂が流れUSD/JPYが急反発する場面があった。 ・前日の米10年金利は1.896%(▲1.2bp)で引け。10年の2%を目前にして押し目買い優勢。欧州債市場は 総じて堅調。FOMCの結果が反映され、ドイツ10年金利が0.230%(▲8.1bp)で引けたほか、イタリア (1.269%、▲6.5bp)、スペイン(1.429%、▲7.6bp)、ポルトガル(2.855%、▲10.6bp)も大幅に金利 低下。3ヶ国加重平均の対独スプレッドはタイトニング。 【国内株式市場・経済指標】 ・日本株はUSD/JPYが重荷となり米株高に追随できず。17日に続きアジア株で唯一マイナス圏推移(10:45)。 ・2月豪雇用統計によると雇用者数は前月比+0.03万人と市場予想(+1.35万人)を下回った。ただ、正規 雇用者は+1.59万人と強く、弱さは非常勤雇用者(▲1.56万人)に集中していたためヘッドラインよりは 好印象。失業率は5.8%へと0.2%pt低下するも、労働参加率(65.1%→64.9%)が低下しており内容はま ちまち。今回の結果はRBAの金融政策にニュートラルだろう。 5 豪 雇用統計 (前年比、%) (%) 3.5 4 4 4.5 雇用者数 3 失業率(右) 5 2 5.5 1 6 0 【注目点】 6.5 05 06 07 08 09 10 11 12 (備考)Thomson Reutersにより作成 13 14 15 16 ・2月12日に日経平均は15000円を割り、USD/JPYは111-113に急落した。その後、日経平均は一時17000円を 回復。海外株式もNYダウが昨年末水準に達し、独DAXも一時10000を回復するなど、リスクオフは随分 と和らいでいる。そうしたなか、なぜ「USD/JPYの戻りが鈍いのか」が話題となっている。過去10年以上に 亘って、日経平均とUSD/JPYは強固な連動性を保ってきたので、足元の乖離に違和感を覚えるのは自然だ。 だが一方で、日米実質金利差(米-日)はUSD/JPYの変動を綺麗に説明している。 日米実質金利差は昨年後半から縮小傾向が鮮明化、2月には一段と縮小し、USD/JPYを111割れの水準に追 い込んだ。過去数ヶ月の内訳は、日本の実質金利がマイナス金利導入後に(良くも悪くも)低位で安定す る一方、米景気の慎重な見通しを反映し米実質金利が急低下している。米実質金利は3月の株価リバウン ド局面でも、ほとんど上昇しておらず、USD/JPYの反発を阻害している。こうした現象はEUR/USDなど先進 国マイナス金利通貨に共通するものであり、USD/JPYに限ったことではない。EUR/USDもECBの追加緩和 をよそに反発傾向にある。先進国マイナス金利通貨の下落再開は米実質金利の上昇、すなわち米経済の回 復を待つ必要がある。 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2 実質金利差・USD/JPY 130 実質金利差・EUR/USD (EUR/USD) (%)1.4 (%) 0.3 1.2 USD/JPY 125 1.2 EUR/USD 1.15 1 120 0.8 -0.2 1.1 115 0.6 110 105 15/01 実質金利差(右) -0.7 1.05 0.4 0.2 15/04 15/07 15/10 1 15/01 16/01 (備考)Bloombergにより作成 10年ものBEIを用いて算出 日経平均※ NYダウ DAX(独) FTSE100(英) CAC40(仏) <外国為替>※ USD/JPY EUR/USD <長期金利>※ 日本 米国 英国 ドイツ フランス イタリア スペイン <商品> NY原油 NY金 -0.057 1.896 1.455 0.230 0.569 1.269 1.429 (円) 17000 前日比 -178.95 155.73 -91.21 25.63 -20.11 111.41 1.131 40.20 ㌦ 1265.00 ㌦ 15/07 15/10 16/01 -0.013 -0.012 -0.068 -0.081 -0.081 -0.065 -0.076 日経平均株価 10:52 現在 16900 16800 16700 16600 (㌦) 17600 0.02 -0.00 % % % % % % % -1.2 15/04 (備考)Bloombergにより作成 5年ものインフレスワップを用いて算出 <主要株価指数> 終値 16757.43 17,481.49 9,892.20 6,201.12 4,442.89 実質金利差 (EU-US右) NYダウ平均株価 17500 % % % % % % % 17400 17300 17200 113.0 USD/JPY 112.0 1.74 ㌦ 35.20 ㌦ 111.0 ※は右上記載時刻における直近値。図中の点線は前日終値。 110.0 (出所)Bloomberg 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 3
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