基礎物理学演習 (後期 第7回) 担当:岡林潤 1. G 真空中を z 方向に進む電場ベクトル E ( z , t ) = ( E0 cos(kz − ωt ),0,0) がある。 G (1)Maxwell 方程式を満たすための条件を求めよ。また、対応する磁束密度 B を求めよ。 (2)この電磁波のエネルギーの伝播する向きと、エネルギー流密度(単位時間、 単位長さあたり流れるエネルギー)の時間変化を求めよ。 2. 電子 電離した気体をプラズマという。電離した原子(または 分子)は、自由に動くことができる電子と正の電荷をも E つイオンに分かれる。2 枚の絶縁板の間に閉じ込められ たプラズマを考えよう。電子の質量を m 、電荷を − e 、 −σ σ x プラズマ中の電子の粒子密度を N とする。電子に比べて イオンの質量ははるかに大きいので、イオンの運動は考 えなくてよい。図のように電離した電子が一斉に x だけ 変位したとすると、プラズマの両端にはそれぞれ面積あ イオン たり ± σ = ±eNx の電荷が現れる。この電荷分布は帯電し た平行板コンデンサと同じで、プラズマ内には E = σ / ε 0 の電場が生じる。誘 起されたこの電場により、電子は元の位置に引き戻す復元力を受けて振動す る。この振動をプラズマ振動数という。プラズマ振動の固有角振動数を求め よ。 3. (1) 誘電率 ε 、電気伝導率 σ の物質中に、交流電場 E (t ) = E0 sin ωt が生じてい る。ε , σ が ω によらないとき、伝導電流と変位電流の位相差はどのようにな るか。また、媒質を導体とみなせるとき、 ε , σ , ω の間の関係を調べよ。 (2) 次の媒質に対して交流電流を流した。導体とみなせるのはどのような場 合か。 (i) アルミニウム; σ = 3.5 ×107 S/m, ε ≅ ε 0 (ii) 海水; σ = 2 S/m, ε = 81ε 0 (iii) 雲母; σ ≅ 1012 S/m, ε ≅ 4ε 0 4. z ≥ 0 の版無限空間にある導体(電気伝導率 σ 、透磁率 G G μ )の表面に、平面電 磁波が垂直に入射した。電場 E = ( E x ,0,0) 、磁束密度 B = (0, By ,0) として、 E x , B y は x, y 成分に依存しないとき、導体内での電磁場の振る舞いを、準定常 電流の近似の範囲で調べよ。 5. (1) 極低温の超伝導体(水銀では 4.2 K 以下)では、電気抵抗がゼロになり、 オームの法則が成立しなくなる。ロンドン(F. London)は、超伝導体中では G ne 2 G G rot j + B=0 m が成り立つと考えた。ただし、 m は電子の質量、 e は電気素量、 G n は単位体 積あたりの電子の個数とする。上式と Maxwell 方程式から磁場 B に関する微 分方程式を求めよ。 (2) 超伝導体では、磁束密度が内部へ深く侵入しない。磁束密度の超伝導体 への侵入の状態を、準定常電流の近似の範囲内で調べよ。 6. ニュートン力学の法則は、速度が異なる系への変換(ガリレイ変換)に対し て物理法則が変わることはない。今、1 次元 x 方向に速度 V で動く系では、 座 標 を (x′, y′, z′, t ′) = (x − Vt , y, z , t ) と 表 せ る 。 こ の 逆 変 換 は 、 (x, y, z, t ) = (x′ + Vt ′, y′, z′, t ′) で あ る 。 Maxwell 方 程 式 か ら 導 か れ る 電 場 を E ( x, t ) = E0 ei ( kx−ωt ) とするとき、波動方程式 ∂2E 1 ∂2E = ∂x 2 c 2 ∂t 2 から導かれる光速 c は、ガリレイ変換に対して不変でないことを示せ。 7. 光速が不変になる座標変換を考える。S 系と相対速度 V を持つ慣性系 S’系 で原点から出た光を観測する。光速度不変の原理によれば、原点から出た光 の波面は、いづれの座標系でも球面になる。 S系 x 2 + y 2 + z 2 = (ct ) 2 [1] S’系 x′2 + y′2 + z′2 = (ct ′) 2 [2] と表せるはずである。 ( x, y, z , t ) から (x′, y′, z′, t ′) への変換は、時間・空間の一 様性から 1 次変換でなければならず、 x′ = A( x − Vt ) , y′ = y , z′ = z , t ′ = B1 x + B2t [3] とおいてみる。これらを[2]式に代入して A, B1 , B2 を決めると x′ = 1 1 − (V / c) 2 ( x − Vt ) , y′ = y , z′ = z , t ′ = ⎛ Vx ⎞ ⎜t − 2 ⎟ 1 − (V / c) ⎝ c ⎠ 1 2 [4] となる。これをローレンツ変換という。この逆変換は x= 1 1 − (V / c) 2 ( x′ + Vt ′) , y = y′ , z = z′ , t = ⎛ ′ Vx′ ⎞ ⎜t + 2 ⎟ c ⎠ 1 − (V / c) ⎝ 1 2 [5] となる。Maxwell 方程式から導かれる光速 c はローレンツ変換に対して不変 であることを示せ。 (今回のレポートは提出不要) レポート問題 7-1 アルミニウムは電気伝導率 σ = 3.5 × 107 S/m、透磁率は μ ≅ μ0 である。問題 4 の 結果を用いて、各周波数に対する表皮効果の深さ δ を求めよ。 (1) 1 kHz (2) 5 MHz (3) 2 GHz (4) 1015 Hz レポート問題 7-2 z 方向に進む電磁波に対する電場の x 成分 Ex ( z , t ) = E0ei ( kz −ωt ) を誘電率 ε 、透磁率 μ 、電気伝導率 σ が一様な媒質中を伝わる電磁波が満たす微分方程式 ∂E ∂ 2 Ex ∂ 2 Ex εμ + σμ x = 2 2 ∂t ∂t ∂z に代入し、問題 4 と同様な方法を用いて、表皮効果の深さを求めよ。 レポート問題 7-3 G G 電磁場 E , B を x 方向に等速度 V で移動する慣性系 S’で観測すると Ex′ = Ex Bx′ = Bx E ′y = E z′ = E y − VBz 1 − (V / c) 2 E z + VBy 1 − (V / c) 2 B′y = Bz′ = By + V ( Ez / c 2 ) 1 − (V / c) 2 Bz − V ( E y / c 2 ) 1 − (V / c) 2 G G と変換される。また、電荷密度 ρ および電流密度 J = ρv は、 J x′ = J x − Vρ 1 − (V / c) 2 , J ′y = J y , J z′ = J z , ρ ′ = ρ − VJ x / c 2 1 − (V / c) 2 G G のように変換される。観測する系によって磁束密度 B は電場 E として、逆に電 G G 場 E は磁束密度 B として観測される。このことをふまえて以下の問いに答えよ。 (1)間隔 d で平行に置かれた無限に長い細い絶縁棒に、棒に対して静止した座標 系で見て一様な線密度 + λ , − λ で電荷が与えられている。この 2 本の棒を長 さ方向に速度 v で動かすとき、単位長さあたりの棒に働く力を静止系および 棒と共に移動する系についてそれぞれ求めよ。 G G G G E ⋅ B = const. となることを示せ。 (2) E 2 − c 2 B 2 = const. (一定)
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