非線形電磁場と結合した2+1重力理論における新たな解の導出

目次
1
イントロダクション
4
2
円対称な電場分布における重力場方程式の解
2.1 Maxwell Power 型理論における解 . . . .
2.1.1 作用と場の方程式 . . . . . . . . .
2.1.2 ansatz と電場分布 . . . . . . . . .
2.1.3 重力場方程式の解 . . . . . . . . .
√
2.2 L ∝ |F| 型理論の anomaly . . . . . . .
√
2.2.1 L ∝ |F| 型理論の anomaly . . .
2.2.2 ブラックホール解 . . . . . . . . .
2.2.3 ホライズンと不変量 R . . . . . .
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6
6
6
6
7
8
8
8
9
√
ディラトン場を含む L ∝ |F| 型非線形電磁場と結合した 2 + 1 重力理
論
3.1 ディラトン場を含む理論 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3.1.1 作用と場の方程式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3.1.2 ディラトン場のスケーリング . . . . . . . . . . . . . . .
3.2 ansatz とディラトン場の分布 . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3.3 場の方程式とその解 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3.3.1 重力場方程式の解 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3.3.2 電場分布 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3.3.3 定数 Γ,Σ の値 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3.4 ブラックホール解と特異点 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3.4.1 Γ = −4,Σ = 0 の場合 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3.4.2 Γ = 2,Σ = −1/2 の場合 . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
11
11
11
12
12
13
13
14
15
16
16
16
F = E0 dt ∧ dθ 型の電磁場における重力場方程式の解
4.1 Einstein-Maxwell 理論における解 . . . . . . . .
4.1.1 重力場方程式の解 . . . . . . . . . . . . .
4.1.2 エネルギー条件 . . . . . . . . . . . . . .
√
4.2 L ∝ |F| 型理論における解 . . . . . . . . . . .
4.2.1 宇宙項を含まない場合 . . . . . . . . . .
4.2.2 宇宙項を含む場合 . . . . . . . . . . . . .
4.2.3 ワームホール解と特異点 . . . . . . . . .
4.3 Einstein-Born-Infeld 理論における解 . . . . . .
4.3.1 重力場方程式の解 . . . . . . . . . . . . .
4.3.2 エネルギー条件 . . . . . . . . . . . . . .
18
18
18
19
20
20
21
22
22
22
24
3
4
5
まとめ
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25
1
A 付録
27
A.1 非線形電磁場について . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 27
A.2 回転する時空における磁場成分の消滅 . . . . . . . . . . . . . . 28
Notation and Conventions
単位系は自然単位系を使用する。ただし Einstein 方程式における結合定数 κ
を 1 ととるため c = 8πG = 1 とする。c は光速、G は万有引力定数である。G
は次元により変化する “定数” であるが、その都度 8πG を 1 とおく。
記号
• ギリシャ文字の添え字 µ, ν などは時空の座標を表す。
• 座標に関する記号は (0, 1, 2) = (t, r, θ) を用いる。座標に関しては特に断
らない限り極座標を用いる。
•
,µ
および ∂µ は µ による偏微分を表す。
•
;µ
および ∇µ は µ による共変微分を表す。
• gµν は計量である。符号は (− + +) を採用する。g µν は gµν の逆行列とし
て定義する。
• リーマンテンソルを Rµντ σ ≡ Γµσν,τ − Γµτν,σ + Γµτλ Γλσν − Γµσλ Γλτν で定義する。
ただし Γµνλ などはクリストッフェルの記号である。
• リッチテンソルを Rµν = g τ σ Rµτ νσ で与える。
• 不変量は花文字で表し R ≡ Rµντ σ Rµντ σ などと表記する。一方でトレース
をとった量は単に大文字で与える。たとえばリッチスカラーは R = g µν Rµν
である。ただし大文字の F に関しては電磁場テンソルのトレースではな
く未知関数として扱う。
3
1
イントロダクション
現在、最も標準的な重力理論は 4 次元時空における Einstein の一般相対性理論
である。さまざまな観測・実験を経て理論の正当性が確立されている一方で、
古典論であるため量子化する必要がある。約半世紀近く量子重力論の構築に向
けた研究が行われてきたが未だ完成に至っていない。そこで近年では 2 + 1 重
力理論など簡略化された重力理論なども着目されている。簡略化により本質を
抽出し、さらに量子化が可能になると考えられている。
2 + 1 重力理論は Deser らによって提唱された [1]。彼らは以下に示すような
2 + 1 重力理論の特徴を見出した。まず一般に 3 + 1 次元では 10 個の独立な未
知関数を決定する必要があるが、2 + 1 次元では 6 個となる。そのため厳密解
を導出することが容易となる。次に Weyl テンソルが常に消滅することが挙げ
られる。また自由度が一つ減ったため、重力波が伝播しない。加えて、独特の
幾何構造を持つ (上記のような事項は論文 [2] にまとめられているため、参照す
るとよい)。このような特徴に加え特に 2 + 1 時空が注目されるきっかけとなっ
た理由はブラックホール解の発見である [3]。BTZ ブラックホールと呼ばれて
おり、負の宇宙定数を含む時空の中に存在する。質量、角運動量がゼロの極限
では裸の特異点が現れるなど、3 + 1 時空にはない特有の性質を持つ (通常は、
平坦あるいは宇宙定数がある場合は (A)dS 時空となる)。加えて幾何構造や熱
力学的性質も良く調べられている。
本稿では 2 + 1 時空におけるブラックホール解の発見が低次元の重力理論の
発展につながった点に着目した。この点は 2 + 1 時空における新たな解の発見
が重要であることを示唆する。実際 BTZ ブラックホールの発見後も、さまざ
まな物質場と結合した場合に新たな解が導出されるなど、盛んに研究されて
いる。
今回は特に非線形電磁場と結合した 2 + 1 重力理論について考察する。非線
形電磁場は量子電磁気学における有効場の理論 (Eγ を光子のエネルギー、me
を電子の質量とすると Eγ < me における光子の相互作用を記述) であらわれ
る。また近年では Born-Infeld タイプの非線形電磁気学 [4] が string 理論と似た
対称性を持つことから注目されている [5]。このように量子論や string 理論と
の関係性があるため、物質場として非線形電磁場を扱うことは有意義である
と考えられる。実際既にクーロン型ポテンシャル [6],[7] や、やや特殊なポテン
シャル分布における非線形電磁場と結合した 2 + 1 時空の解 [8],[9] が導出され
ている。またより高次元時空でも考察されており [10]、F (R) 重力との関係性
も見出されている [11]。
以上のような背景を受けて 2 + 1 時空における新しい解を探索し、発見した
点を本稿にて報告する。第 2 章では Maxwell Power 型の非線形電磁場におけ
る円対称・定常・外部解を再考察する。このような条件における解はすでに、
√
[12] で考察されている。ところが電磁場のラグランジアンが L ∝ F のとき
anomaly が現れ、ブラックホール解を構築できない。そこで metric ansatz を
4
変更し、電場分布に適当な条件を付けることで新たな解を導出する。
√
第 3 章ではやはり L ∝ F 型の非線形電磁場を考える。ただし anomaly を
回避する別の手法として、ディラトン場を導入する。ansatz としては球対称・
静的な場合を考える。このときまずディラトン場の分布が決定されることを示
す。次に重力場方程式を解き、ブラックホール解を得る。最後に電場分布を求
め、これからディラトン場に制限をつける。
第 4 章では、最近、Mazaharimousavi らによって考察されているやや特殊な
ベクトル・ポテンシャル分布における解について論じる。まず、宇宙項のない
√
線形電磁場と結合した 2 + 1 時空における解について論じる。次に L ∝ F 型
の場合を考察する。特に宇宙定数のある場合はワームホール解が得られること
を示す。これらはすでに Mazaharimousavi 等によって導出された解である [8]、
[9]。本稿では Born-Infeld 電磁気学と結合した場合に新たな解を導出する。こ
の場合も裸の特異点が現れることを示す。
最後に第 5 章にて本稿をまとめ、今後の展望を述べる。
なお、付録では非線形電磁場について簡単なまとめを行う。まず簡単な物理
的状況下で電磁場の方程式を解き、非線形による影響を調べる。また、回転す
る 2 + 1 時空における磁場成分は自動的に消滅することを示す。
5
2
2.1
2.1.1
円対称な電場分布における重力場方程式の解
Maxwell Power 型理論における解
作用と場の方程式
Maxwell Power 型の非線形電磁場と結合した 2 + 1 重力理論の作用は
∫
√
1
I=
d3 x −g (R − 2Λ + αL(F))
2
(2.1)
と書ける。ただし R はリッチスカラー、Λ は宇宙定数、α は結合定数、L(F)
は非線形電磁場のラグランジアンであり、
L(F) = |F|k
(2.2)
と定義される。ここで F は Maxwell 不変量であり F = Fµν F µν ただし Fµν =
∂µ Aν − ∂ν Aµ である。k によって非線形の度合いが決定され、k = 1 は Maxwell
の線形電磁場を表す。
作用 (2.1) の gµν による変分から重力場方程式
Gµν − Λδνµ = Tνµ
が導出される。ただし Tνµ はエネルギー運動量テンソルであり
(
)
µ
µλ
µL
Tν = α −2F Fνλ L,F + δν
2
(2.3)
(2.4)
となる。L,F は F による微分を表し、Maxwell Power 型の非線形電磁場では
L,F = k |F|k−1
(2.5)
となる。一方で (2.1) のベクトルポテンシャル Aµ による変分から電磁場に対
する方程式
(√
)
∂µ
−gF µν L,F = 0
(2.6)
が導出される。
2.1.2
ansatz と電場分布
この節では具体的に場の方程式を解くための ansatz を与える。ここでは円対
称・定常・静的な外部解を考える。従って metric ansatz を
ds2 = −f (r)2 dt2 +
dr2
+ r2 dθ2
f (r)2
(2.7)
とおく。一方、電磁場テンソルに関しては
F = −E(r)dt ∧ dr
6
(2.8)
とおく。このとき電磁場の方程式 (2.6) は
(
)
d
−rE
=0
dr E 2(k−1)
(2.9)
となる。従って電場分布は一意的に決まり Q を定数として
E(r) =
Q
r1/(2k−1)
(2.10)
と書ける。ただし k = 1/2 の場合は電場分布を決定することができない。この
anomaly については後述する。
2.1.3
重力場方程式の解
metric ansatz(2.7) からアインシュタイン・テンソルの非ゼロ成分は
Gtt = Grr =
f f,r
r
Gθθ = f f,rr + (f,r )2
(2.11)
(2.12)
である。エネルギー運動量テンソルは (2.4) および電磁場の ansatz(2.8) から
(
)
1
t
r
2k
Tt = Tr = −αE
k−
(2.13)
2
E 2k
(2.14)
2
と書ける。これとアインシュタイン方程式 (2.3) から以下の微分方程式を得る
ことができる。
(
)
f f,r
1
2k
+ Λ = −αE
k−
(2.15)
r
2
Tθθ = α
E 2k
(2.16)
2
ところで 2 本の微分方程式を得たが、これらは互いに独立ではない。実際、
(2.15) の両辺について微分をとると
f f,rr + (f,r )2 + Λ = α
f f,rr + (f,r )2 −
f f,r
α
= −2k |F|k
r
2
(2.17)
となり、これから (2.16) 式を引くと
α
f f,r
= |F|k (−2k + 1) + Λ
r
2
(2.18)
となることから (2.15) 式に帰着することがわかる。従って (2.15) 式もしくは
(2.16) 式の一方のみ解いて解を得ることがなれば、もう一方の微分方程式は自
動的に満たされる。微分方程式 (2.15) は解析的に解くことができ、解は
f 2 = −Λr2 − M −
2k − 1 2 2k 2(k−1)/(2k−1)
α Q r
2(k − 1)
7
(2.19)
となる。ここで M は定数である。ただし k = 1 のとき、解は
( )
r
2
2
f = −Λr − M − Q ln
r0
(2.20)
となる。ただし r0 は定数である。これは線形電磁場における解に他ならない。
また後述するように k = 1/2 の場合 (2.19) 式の形で正しく解を表現できない。
2.2
L∝
2.2.1
L∝
√
|F| 型理論の anomaly
√
|F| 型理論の anomaly
前節で示したように Maxwell Power 理論と結合した 2 + 1 重力理論における
解を得ることに成功した [12]。ところで (2.19) 式において仮に k = 1/2 とお
くと、電場部分が消滅することがわかる。また電場分布を与える式 (2.10) に
て仮に k = 1/2 の場合を考えると、電場は定数となることが示される。とこ
ろが k = 1/2 型の Maxwell Power 理論における ansatz(2.7),(2.8) はそもそも、
Maxwell 方程式を満たさない。実際、(2.6) に入れると ∂r (r) ̸= 0 となり、不適
√
であることがわかる。従って L ∝ |F| 型の理論においては anomaly が生じ
ていることがわかる。
過去に行われた研究 [12] ではこの anomaly は報告されている。ところが、そ
√
の回避方法については論じられていない。そこで、以下では L ∝ |F| 型の
Maxwell Power 理論における anomaly の避け方および新しい解を得る手法に
ついて論じる。
2.2.2
ブラックホール解
まず、ansatz を変更する。静的・定常な外部解を導出するため、以下のような
ansatz を考える
ds2 = −f (r)2 dt2 +
dr2
+ F (r)2 dθ2 .
2
f (r)
(2.21)
このとき Maxwell 方程式 (2.6) から
d
F (r) = 0
dr
(2.22)
となる。従って R = r0 、ただし r0 は定数となる。また ansatz(2.21) における
アインシュタインテンソルの非ゼロ成分は
Gtt =
f 2 Frr + f fr Fr
F
f f r Fr
F
θ
Gθ = f frr + (fr )2
Grr =
8
(2.23)
(2.24)
(2.25)
となる。一方でエネルギー運動量テンソルは
Ttt = Trr = 0
√
|F|
E(r)
Tθθ = α
=α √
2
2
(2.26)
(2.27)
となる。
次に重力場方程式を解く。ところで F は定数であるから Gtt ,Grr はゼロとな
る。またこれらの成分の右辺については (2.26) よりゼロである。従って宇宙定
数はゼロでなければならないことがわかる。従って次の微分方程式を得る
E(r)
f frr + (fr )2 = α √ .
2
(2.28)
この微分方程式から f (r) を決めるためには電場分布を指定しなければならな
いことがわかる。他の Maxwell Power 型の理論では同時に決定することがで
きたが、今回の場合は適当に電場分布を置く必要がある。いま E(r) = E0 、た
だし E0 は定数とおく。このとき解くべき微分方程式は
E0
f frr + (fr )2 = α √
2
(2.29)
となる。この微分方程式は解析的に解くことができて
f 2 (r) = A0 r2 − M
(2.30)
となる。ただし M ,A0 は定数でありとくに A0 に関しては
E0
A0 = α √
2
を満たす。従って重力場方程式の解は
(
)
ds2 = − A0 r2 − M dt2 +
dr2
+ r02 dθ2
A0 r2 − M
(2.31)
(2.32)
となる。ここで A0 が正であれば、dt − dr 上に関してはブラックホール解とな
ることがわかる。ただし、通常の 2 + 1 ブラックホール時空と異なり角度部分
の係数が定数となっている。
2.2.3
ホライズンと不変量 R
解 (2.32) は A0 r2 − M = 0 となる点で発散する。この点をホライズン rH とす
ると
√
M
(2.33)
rH =
A0
とあらわされる。また領域 r < rH では時間と空間 r の役割が反転する。一般的
なブラックホール解でも現れる、良く知られた性質である。ところが、r = rH
は特異点ではない。不変量 R を調べると
R = 4A20
9
(2.34)
となり、rH で発散しないためである。従って座標の特異点である。ただし一
般的なブラックホール解は原点で特異性を持つ場合が多いが、解 (2.32) はいか
なる r に対しても R が発散しないため、全空間で特異点を持たない。この点
は新しく導出した解の大きな特徴である。
10
3
ディラトン場を含む L ∝
√
|F| 型非線形電磁場と
結合した 2 + 1 重力理論
√
前章でみたように L ∝
|F| 型非線形電磁場と結合した 2 + 1 重力理論に
は anomaly が存在することが分かった。ここで metric ansatz を変えることで
anomaly を回避して、新たに解を得ることができることもわかった。ところが、
電場と重力場を同時に決定することができない。他の Maxwell Power 型では
一意的に決定できるが k = 1/2 では不可能であることが分かった。
そこで本章ではディラトン場を導入することで、無矛盾に解を構築し、場の
分布を一意的に決定することを目指す。なお、ディラトン場とは string 理論で
は重力子とともに現れるスカラー場である。また修正重力理論をより一般化し
た場合にも現れることがわかっており [13]、ディラトン場により宇宙の加速膨
張 [14] を説明することも試みられている。2 + 1 時空においては Chen[15] など
が研究を行っている。非線形電磁場との関係でいえば Dehghani[16] らが研究
を行っている。
3.1
3.1.1
ディラトン場を含む理論
作用と場の方程式
√
ディラトン場、および L ∝ |F| 型の非線形電磁場と結合した 2 + 1 重力理論
の作用は
∫
(
)
√
1 √
3
2
−4αϕ
−βϕ
−gd x R − 4γ(∂ϕ) − e
|F| − 2e Λ
(3.1)
I=
2
と書ける。ただし α,β,γ はそれぞれ定数であり、ϕ がディラトン場を表す。gµν
による変分から重力場の方程式
Gµν + eβϕ Λδνµ = Tνµ
(3.2)
が導出される。ただし Tνµ は物質場のエネルギー運動量テンソルであり
(
)
√ e−4αϕ
F µλ Fνλ
µ
µ
µ
δν − 2k
(3.3)
Tν = −2γ∂ ϕ∂ν ϕ + |F|
2
F
となる。また ϕ による変分からディラトン場に対する場の方程式
√
4γ∇ν (∂ ν ϕ) + 2αe−4αϕ |F| − βe−βϕ Λ = 0
(3.4)
が導かれる。さらにベクトルポテンシャル Aν による変分から電磁場の方程式
(
)
νµ
F
∇ν e−4αϕ √
|F|
(
)
(3.5)
νµ
√
F
= ∂ν
−ge−4αϕ √
=0
|F|
11
が導出される。
3.1.2
ディラトン場のスケーリング
本来、定数 α,β,γ の 3 つの値によってディラトン場を含む重力理論はさまざま
な理論に対応する。たとえば α = γ = 1, β = 4 の場合は string 理論と対応す
ることが分かっている。ただし、計算する上では適当にスケーリングすること
で簡易になる場合が多いため、本小節で紹介する。
ディラトン場 ϕ を ϕ̂ = 4αϕ と 4α でスケーリングする。このとき作用 (3.1) は
∫
(
)
√
β
1 √
γ
I=
−gd3 x R − 2 (∂ϕ)2 − e−ϕ |F| − 2e− 4α ϕ Λ
(3.6)
2
4α
と書ける。ただし簡単のため ˆ は省略した。ここで
Γ=
γ
4α2
(3.7)
β
(3.8)
4α
とおく。このとき変分原理から場の方程式が導出されることは前小節に示し
た。以下に Γ,Σ を用いて書き直した重力場、ディラトン場、および電磁場の方
程式を示す。
Gµν + eΣϕ Λδνµ = Tνµ
(3.9)
(
)
√ e−ϕ
F µλ Fνλ
Γ
δνµ − 2k
(3.10)
Tνµ = − ∂ µ ϕ∂ν ϕ + |F|
2
2
F
e−ϕ √
|F| − Σe−Σϕ Λ = 0
(3.11)
Γ∇ν (∂ ν ϕ) +
2
)
(
νµ
√
F
∂ν
−ge−ϕ √
=0
(3.12)
|F|
Σ=
3.2
ansatz とディラトン場の分布
次に重力場方程式を具体的に解くために ansatz を与える。円対称・定常・静
的な解を考える。従って metric ansatz を
ds2 = −f (r)2 dt2 +
e2δ(r) dr2
+ r2 dθ2
2
f (r)
(3.13)
とおく。ただし f (r),δ(r) は r のみに依存する未知関数である。またディラト
ン場および電磁場についても r のみに依存する未知関数 ϕ(r),E(r) であるとす
る。さらに電磁場テンソルを
F = eϕ(r)+δ(r) E(r)dt ∧ dr
12
(3.14)
とおく。このとき、Maxwell 不変量は
F = −2e2ϕ E 2 (r)
(3.15)
となる。
√
ところで計量 (3.13) のもとで −g = reδ(r) であるから Maxwell 方程式は
(
)
ϕ−δ(r)
d
δ(r) E(r)e
−ϕ
re
e
dr
E(r)eϕ
(3.16)
d ( −ϕ )
=
re
=0
dr
となる。前の章でみたように電磁場の方程式から電場分布を決定することがで
きない。ところが、ディラトン場を導入したことにより ϕ を決定する式となっ
ている。ϕ に関しては一意的に決定することができ
(r)
ϕ = ln
(3.17)
a
となる。ただし a は任意定数である。
3.3
3.3.1
場の方程式とその解
重力場方程式の解
次に重力場方程式を解くことを試みる。metric ansatz からアインシュタイン
テンソルは
−e−2δ(r) (f 2 δr − f fr )
Gtt =
(3.18)
r
e−2δ(r) f fr
Grr =
(3.19)
r
(
)
Gθθ = −e−2δ(r) f fr δr − frr − (fr )2
(3.20)
となる。一方でエネルギー運動量テンソルは
Ttt = 0
Γ
Γ e−2δ(r) f 2
Trr = − ∂ r ϕ∂r ϕ =
2
2
r2
e−ϕ √
E(r)
Tθθ =
|F| = √
2
2
(3.21)
(3.22)
(3.23)
となる。従ってアインシュタイン方程式の (t, t) 成分から (r, r) 成分を引くと
−e−2δ(r)
Γ e2δ(r) f 2
δr f 2
=
r
2 r2
(3.24)
が得られる。この方程式は δ(r) に関する微分方程式となっており、整理すると
dδ
Γ1
=−
dr
2r
13
(3.25)
となるから、δ(r) は
Γ
δ(r) = − ln
2
(
r
r0
)
と決定できる。また、後のため解を以下のように変形しておく。
( )Γ
r
exp (−2δ(r)) =
r0
(3.26)
(3.27)
次に未知関数 f (r) を決定する。ふたたびアインシュタイン方程式の (t, t) 成
分に着目すると
) ( )
( )Γ (
r Σ
1 Γ f2
df
r
+
Λ=0
(3.28)
+f
r0
r 2 r
dr
a
となる。この微分方程式は解析的に解くことができて
(
)
2r2 Λ ( r )Σ
2
2δ(r)
f (r) = e
−
−M
2+Σ a
なる解を得る。従って重力場方程式の解は
)
( r )Γ ( 2r2 Λ ( r )Σ
0
2
ds = −
−
− M dt2
r
2+Σ a
)−1
(
2r2 Λ ( r )Σ
dr2 + r2 dθ2
−M
+ −
2+Σ a
(3.29)
(3.30)
と書ける。
3.3.2
電場分布
重力場に関しては解 (3.30) を得ることに成功した。次に電場分布について考え
る。アインシュタイン方程式の (θ, θ) 成分に注目すると
(
) ( r )Σ
E(r)
− √ = −e−2δ(r) f fr δr − frr − (fr )2 +
Λ
a
2
(3.31)
ここで f ,ϕ,δ(r) に関してはすでに決定されていることを用いると、電場分布を
決定できることがわかる。実際に計算すると以下のようになる
( r )Σ
E(r)
1
− √ =−
(Γ − Σ) (Γ − 2 (2 + Σ))
Λ
2 (2 + Σ)
a
2
(3.32)
( )Γ
Γ2 −2−Γ r
M
+ r
4
r0
一方でディラトン場の方程式から電場分布を決定することもできる。方程式
(3.4) から
[
]
2
Γ d
dϕ
E(r)
δ(r) f
(3.33)
re
− √ − ΣeΣϕ Λ = 0
δ(r)
2δ(r)
re dr
e
dr
2
14
となる。ここでも f ,ϕ,δ(r) に関してはすでに決定されていることを用いて実際
に計算を行うと
) ( r )Σ
E(r)
1 ( 2
√ =
−Γ + 2Γ (2 + Σ) + Σ (2 + Σ)
Λ
2+Σ
a
2
(3.34)
( )Γ
Γ2 −2−Γ r
+ r
M
2
r0
と E(r) を決定できる。
3.3.3
定数 Γ,Σ の値
以上のように電場分布を重力場およびディラトン場の式によって決定できるこ
とが分かった。ところで (3.32) と (3.34) を加算すると
( 2
) ( r )Σ
2+Γ
2r
−Γ − 4Σ (2 + Σ) − Γ (4 + Σ)
Λ
a
( )Γ
(3.35)
r
+
(−2 + Γ) (2 + Σ) ΣM = 0
r0
となる。このとき r の係数はゼロでなければならないため
−Γ2 − 4Σ (2 + Σ) − Γ (4 + Σ) = 0
(3.36)
(−2 + Γ) (2 + Σ) Σ = 0
(3.37)
ここで (3.36) から 3 種類の定数の取り方があることがわかる。Σ = 0 のとき
(3.36) から Γ = −4 となる。このとき重力場、ディラトン場および電磁場の方
程式の解をまとめると、以下のようになる。
( )4
( 2
)
r
dr2
2
ds = −
−r Λ − M dt2 +
+ r2 dθ2
(3.38)
2
r0
−r Λ − M
(r)
ϕ = ln
(3.39)
a
√ M
E(r) = 8 2r04 2
(3.40)
r
このとき Λ < 0 とすると、ファクター (r/r0 )4 を除いて BTZ ブラックホール解
に一致する。また電場分布については 1/r2 則、すなわちクーロンの法則に従
うことがわかる。
次に Σ = −2 を考える。ところがこのとき、(3.30) および (3.32) から重力場・
電場分布ともに発散することがわかる。従ってこの値は選択しない。最後に
Γ = 2 を考える。このとき (3.36) から Σ = −1/2, −2 となる。ただし前述のと
おり Σ = −2 は除外して考える。Γ = 2,Σ = −1/2 のとき重力場、ディラトン
場および電磁場の方程式の解をまとめると、以下のようになる。
)
( r )2 ( 4√a
0
2
3/2
ds = −
−
Λr − M dt2
r
3
(3.41)
dr2
+ 4√a
+ r2 dθ2
− 3 Λr3/2 − M
15
(r)
ϕ = ln
a
√
2M
5 a
E(r) = −
Λ+ 2 2
6 r
r0 r
3.4
(3.42)
(3.43)
ブラックホール解と特異点
この節では宇宙定数が負の値を持っている場合を考える。このとき宇宙半径を
ℓ とすると
√
1
ℓ=
(3.44)
−Λ
と定義される。解の形を見るとこの場合、ブラックホール解となることがわか
る。以下では各々の Γ,Σ の場合にホライズン半径や、特異点について議論する。
3.4.1
Γ = −4,Σ = 0 の場合
この場合、重力場方程式の解は
)
( )4 ( 2
r
r
2
− M dt2 +
ds = −
r0
ℓ2
となる。これから解は
rH =
dr2
+ r2 dθ2
r2
−
M
ℓ2
√
Mℓ
(3.45)
(3.46)
で発散することがわかる。すなわち rH はブラックホールのホライズン半径を
表す。ところが不変量 R は
R=
2 2
4
364r4 − 192rH
r + 32rH
ℓ4 r4
(3.47)
となり、rH では発散しないため特異点ではない。ところが原点 r = 0 では発
散するためこの点は真性特異点である。また電場分布 (3.40) も原点では発散
する。
3.4.2
Γ = 2,Σ = −1/2 の場合
このとき重力場方程式の解は
ds = −
2
+
( r )2 ( 4√a
0
3ℓ2
r
dr2
√
4 a 3/2
r −
3ℓ2
となる。これから解は
(
rH =
)
r
−M
dt2
(3.48)
+ r2 dθ2
M
3ℓ2 M
√
4 a
16
3/2
) 23
(3.49)
で発散することがわかる。従って rH はブラックホールのホライズン半径を表
す。この場合、ディラトン場と結合しているためホライズン半径が BTZ ブラッ
クホールと異なっている。ただし rH は不変量ではない。なぜなら不変量 R は
R=
20M 2
3M
369
√
−
+
r4
ℓ ar5/2 8aℓ2 r
(3.50)
となり、rH では発散しないためである。ただし、原点では発散するため原点
は真性特異点となる。
17
4
F = E0dt ∧ dθ 型の電磁場における重力場方程式
の解
この章では F = E0 dt ∧ dθ 型の電磁場における重力場方程式の解について論じ
る。このような電磁場はやや特殊な形をしているが
A = E0 (−bt, 0, at)
(4.1)
なるベクトルポテンシャルから生成される。ただし E0 ,a,b は定数であり a+b = 1
を満たすものとする。
4.1
4.1.1
Einstein-Maxwell 理論における解
重力場方程式の解
最近、Mazharimousavi らが宇宙項がない場合に (4.1) 型のベクトルポテンシ
ャルにおける Einstein-Maxwell 理論の新しい解を導出した [12]。この節では
Mazaharimousavi[12] らに従い解を導出する。
2 + 1 時空における Einstein-Maxwell 理論の作用は
∫
√
I=
−gd3 x (R − F)
(4.2)
と書ける (記号の定義については前章までと同じ)。ただし宇宙定数は 0 とし
た。ここで gµν による変分をとると重力場の方程式
Gνµ = Tµν
(4.3)
が導出される。
次に metric ansatz を
ds2 = −f (r)dt2 +
dr2
+ r2 dθ2
g(r)
(4.4)
で与える。ただし f (r),g(r) については動径座標 r のみに依存する未知関数で
ある。このときゼロでないアインシュタインテンソルは
Gtt =
g,r
2r
(4.5)
Grr =
gf,r
2rf
(4.6)
2f,rr f g − (f,r )2 g + f,r g,r f
(4.7)
4f 2
とかける。一方でエネルギー運動量テンソルについては L,F = 1 であるから
Gθθ =
1
Ttt = Tθθ = F
2
18
(4.8)
1
Trr = − F
2
となる。また Maxwell 不変量 F については
F=
−2E02
f (r)r2
(4.9)
(4.10)
と書ける。これと Einstein 方程式 (4.3) から微分方程式系
および
g,r
1
= F
2r
2
(4.11)
gf,r
1
=− F
2rf
2
(4.12)
1
2f,rr f g − (f,r )2 g + f,r g,r f
= F
2
4f
2
(4.13)
が導出される。ここで (4.11) および (4.12) 式を足すと
g,r f,r
+
=0
g
f
(4.14)
となりこれから f = 1/g となることがわかる。これを (4.12) 式に代入し、F を
具体的に表せば
f,r
2E02
=
(4.15)
f
r
が導出される。この微分方程式は簡単に解くことができて解は
2
f = ξr2E0
(4.16)
である。ただし ξ は任意定数であり、ここでは ξ = 1 とおく。解を線素で表せ
ば以下のようになる。
2
ds2 = r2E0 (−dt2 + dr2 ) + r2 dθ2
なお不変量 R を求めると
R=
(4.17)
12E04
(4.18)
2
r4(1+E0 )
となる。これから r = 0 に真性特異点が存在することがわかる。すなわち r = 0
に裸の特異点が現れる。また E0 = 0 では平坦な 2 + 1 時空に帰着する。
4.1.2
エネルギー条件
次にエネルギー条件について考える。エネルギー密度 ρ、動径および方位角方
向の圧力を p,q とおくと
E02
ρ = −Ttt = 2(1+E
(4.19)
2
0)
r
19
p=
Trr
(4.20)
2
r2(1+E0 )
E02
(4.21)
q = Tθθ = 2(1+E
2
0)
r
である。このとき i)ρ ≥ 0,ii)ρ + p ≥ 0,iii)ρ ≥ 0 を満たしている。これは弱いエ
ネルギーコンディションに他ならない。また pe = (p + q)/2 とすると因果条件
は 0 ≤ pe ≤ 1 であり、これも満たしている。従って物理的に意味のある物質
場であるといえる。
4.2
L∝
√
=
E02
|F| 型理論における解
この節では L ∝
たように作用は
√
|F| 型の非線形電磁場について考える。この場合、2 章で見
∫
I=
√
√ )
−gd x R − 2Λ + α |F|
3
(
となる。特にこの形の非線形電磁場はエネルギー運動量テンソルが
(
)
α√
2Fνλ F µλ
µ
µ
Tν =
|F| δν −
4
F
(4.22)
(4.23)
と書けるため非ゼロ成分が
Trr
α
=
4
(
2E02
f (r)r2
) 21
(4.24)
のみとなる。ただし metric ansatz については (4.4) の形で置いた。このよう
なエネルギー運動量テンソルの非ゼロ成分が動径方向のみとなるような系は
Schdmit[17] らが初めて考察した。彼らは物質場として動径スカラー場を扱っ
た。後に Masaharimousavi[9] らによって非線形電磁場と結合した理論におい
て新しい解が導かれた。
4.2.1
宇宙項を含まない場合
この小節では宇宙項を含まない場合の解について論じる。metric ansatz は (4.4)
の形で置いたため、アインシュタイン・テンソルについては (4.1) 節で導いた
ものと同様である。一方、エネルギー運動量テンソルについては Trr 以外はゼ
ロであるから解くべき微分方程式系は
g,r
=0
2r
)1
(
α
gf,r
2E02 2
=
2rf
4 f (r)r2
2f,rr f g − (f,r )2 g + f,r g,r f
=0
4f 2
20
(4.25)
(4.26)
(4.27)
となる。ここで (4.25) 式から未知関数 g(r) については g = g0 (g0 は任意定数)
と決まる。ここでは簡単のため g0 = 1 と置く。さらに (4.26) から
f
√,r = χ
f
(4.28)
となる。ただし定数部分についてはまとめて χ と置いた。この式から f (r) は
f (r) = χ2 r2
(4.29)
と決定できる。このような f (r),g(r) は (4.27) を自動的に満たす。本節の最後
に線素の形で解をまとめると
ds2 = −(χr)2 dt2 + dr2 + r2 dθ2
(4.30)
となる。
4.2.2
宇宙項を含む場合
次は宇宙項を含む場合を考える。このとき解くべき微分方程式系は
g,r
+Λ=0
2r
(
)1
gf,r
2E02 2
α
+Λ=
2rf
4 f (r)r2
2f,rr f g − (f,r )2 g + f,r g,r f
+Λ=0
4f 2
となる。g(r) に関しては (4.31) から決定でき
g(r) = −Λr2 − M
(4.31)
(4.32)
(4.33)
(4.34)
となる。ただし M は任意定数である。f (r) に関しては χ を定数として f (r) =
χ2 r2 となる。実際 (4.33) に代入すると
√
)
1 (
2E0 1
2
−Λr − M + Λ =
(4.35)
2
r
4χ r2
となり満たしていることがわかる。ただし定数 M は
√
2E0
M =−
4χ
(4.36)
と決定されている。また (4.33) については
4r2 (−Λr2 − M ) − 4r2 (−Λr2 − M ) − 4r4 Λ
+Λ=0
(4.37)
4r4
となり、確かに満たしていることがわかる。従って、線素の形で解をまとめ
ると
1
ds2 = −(χ2 r2 )dt2 +
dr2 + r2 dθ2
(4.38)
2
−Λr − M
となる。
21
4.2.3
ワームホール解と特異点
この小節では特に Λ < 0 の場合を扱う。このとき線素 (4.39) は
ds2 = −(χ2 r2 )dt2 +
r2
ℓ2
1
dr2 + r2 dθ2
−M
(4.39)
√
となる。ただし宇宙半径を ℓ = −1/Λ と定義した。このような解はワーム
√
ホール解として知られている。線素 (4.39) をみると r = ℓ M で特異性を持つ
ことがわかる。ところが不変量 R を調べると
(
)2
4
r2
8
(4.40)
R= 4 + 4 M− 2
ℓ
r
ℓ
√
となり、r = ℓ M では発散しないことがわかる。従ってホライズンであり真
性特異点ではないことがわかる。一方で r = 0 では発散するためこの点は真性
特異点である。特に ℓ → ∞ の極限では
R=
4M
r4
(4.41)
となる。この極限では解は (4.30) に一致する。従って Λ = 0 では裸の特異点が
現れる。このような裸の特異点は 3 + 1 時空における log 型の U (1) ゲージ理論
と結合した重力理論 [18] や、ディラトン的な場と結合した場合 [19] に表れる
ことが知られている。
4.3
4.3.1
Einstein-Born-Infeld 理論における解
重力場方程式の解
√
前述のように過去の研究で Maxwell および L ∝ |F| 型の非線形電磁場では
ベクトル・ポテンシャル (4.1) の下における重力場方程式の解が求められた。と
ころで非線形電磁場としては Maxwell Power 型以外にも Born-Infeld 型と呼ば
れる理論がありラグランジアンは
(
)
√
F
2
L(F) = 4b 1 − 1 + 2
(4.42)
2b
であらわされる。重力場を含む作用の形で書くと
∫
√
1
d3 x −g (R + αL(F))
I=
2
(4.43)
である。ここで gµν による変分をとるとアインシュタイン方程式が導出され、
右辺のエネルギー運動量テンソルは (2.4) で与えられることは前節までに述べ
たとおりである。ただし Born-Infeld 型の非線形電磁場の場合
L,F =
−1
1 + F/2b2
22
(4.44)
である。このような理論およびベクトルポテンシャル (4.1) における重力場方
程式の解は導出されていない。そこで本稿で解を得ることを試みる。
まず ansatz を考える。ベクトルポテンシャルは (4.1) のように置く。一方で
metric ansatz については
( )2
r
2
ds = −
dt2 + F (r)dr2 + r2 dθ2
(4.45)
r0
√
とおく。ここで F (r) は未知関数である。このような ansatz は F 型の非線形
電磁場で有効であった。従って、Born-Infeld 型でも有効である可能性がある。
ansatz(4.45) からゼロでないアインシュタインテンソルは
Gtt = Gθθ = −
Grr =
1 dF
2rF 2 dr
(4.46)
1
(4.47)
r2 F
となる。また、Maxwell 不変量 F については
F = 2Ftθ F tθ = −2
r02 E02
r4
(4.48)
となる。従ってエネルギー運動量テンソルの非ゼロ成分は
(
)
√
r02 E02
1 − 1 − r 4 b2
t
θ
2
√
Tt = Tθ = −2αb
r2 E 2
1 − r04 b20
(
)
√
2 2
r E
Trr = 2αb2 1 − 1 − 04 20
r b
(4.49)
(4.50)
である。ここでアインシュタイン方程式の動径成分に着目すると
F (r) =
1
(
√
2αb2 r2 1 − 1 −
r02 E02
r 4 b2
)
となり未知関数を決定できる。残りの非ゼロ成分については
(
)
√
r02 E02
1 − 1 − r 4 b2
dF
2
2
√
= 4αb rF
dr
r2 E 2
1 − r04 b20
となることから、自動的に満たすことは容易にわかる。
以上より Born-Infeld 型における新しい解
( )2
dr2
r
2
(
) + r2 dθ2
dt2 +
ds = −
√
2
2
r0
r E
2αb2 r2 − r4 − 0b2 0
23
(4.51)
(4.52)
(4.53)
√
を得ることができた。ここで r ≥ r0 E0 /b を満たさなければいけないことが
わかる。また α は dr の前の係数が正となるためには負でなければならない。
この解にはホライズンは存在しないが真性特異点は存在する。不変量 R を計
算すると
)2
(
√
2 2
1 3r4 − r02 E02 /b2
r
E
× 4 4
(4.54)
R = 16α2 b4 r2 − r4 − 0 2 0
b
r r − r02 E02 /b2
√
となり r = 0 と r = r0 E0 /b で発散するためである。ただし物理領域は r ≥
√
√
r0 E0 /b であるため r = 0 は裸ではない。一方で r = r0 E0 /b は裸の特異点
となる。また、この点ではエネルギー運動量テンソル (4.49) も発散する。
4.3.2
エネルギー条件
次に Maxwell 電磁場と同様にエネルギー条件について考える。まず以下の量
を定義する。
ρ = −Ttt
(4.55)
p = Trr
(4.56)
q = Tθθ = −ρ
(4.57)
さらに、これらの量から
ρ+p=
r02
2αE02
√
r2 r4 − r02 E02 /b2
(4.58)
ρ+q =0
(4.59)
が導かれる。従って i)ρ ≥ 0,ii)ρ + p ≥ 0,iii)ρ ≥ 0 を満たすため弱エネルギー条
件を満足している。ただし pe に関しては
p+q
2
[(
)
(
) ]2
2 2 1/4
2 2 −1/4
r E
r E
= −αb2
1 − 04 20
− 1 − 04 20
r b
r b
pe =
(4.60)
となり常に pe ≤ 0 となるため、因果条件は満たさないことがわかる。ただし
E0 /b が充分小さい極限では pe ∼ 0 となり、因果条件は回復する。これは E0 /b
が充分小さいときは線形電磁場に帰着するためである。
24
5
まとめ
本稿では非線形電磁場と結合した 2 + 1 次元重力理論における新たな解を導出
した。第 2 章では Maxwell Power 型の非線形電磁場と結合した重力理論におけ
る円対称・定常・静的な ansatz を置いて議論を行った。このような条件におけ
√
る解はすでに [12] で導出されているが、L ∝ F 型の理論では anomaly が現
れることがわかった。このとき ansatz を変更することで解を導出したが、重
力場方程式と電磁場の方程式を同時に解くことができない。ただし大きさ一定
の電場を導入すると、t − r 平面上ではブラックホール解となることが分かっ
た。また宇宙定数は自動的に 0 となることも示した。さらに特異点を調べるた
め R を計算すると、定数となり真性特異点は存在しないことが分かった。以
上のように電場一定なる条件の下ではブラックホール解が存在するが、一般の
Maxwell Power 型の理論のように重力場・電磁場を一意的に決定できない。そ
√
こで第 3 章では L ∝ F 型の非線形電磁場に加え、ディラトン場を導入して
議論した。ただし電磁場・ディラトン場ともに円対称・定常・静的であると仮
定した。このとき、まずディラトン場 ϕ の分布が決定される。次に重力場の方
程式から重力場の解を得ることができる。さらに重力場方程式やディラトン場
の式から電場分布を決定し、定数 Γ,Σ の値を具体的に求めた。以上のように新
しい解を導出したが、特に負の宇宙定数を考えると解はブラックホール時空を
表すことが分かった。Γ = −4,Σ = 0 のときブラックホール半径 rH は BTZ ブ
ラックホールに一致する。一方で Γ = 2,Σ = −1/2 のときディラトン場の影響
で rH は BTZ ブラックホールと異なる値をとる。さらに特異点解析を行った結
果、いずれの場合も原点に特異点を持つことがわかった。
第 4 章ではこれまでの章と異なる電磁場の ansatz を置いて議論した。この
ansatz は F = E0 dt ∧ dθ なる特殊な形をしており、Mazharimousavi[8],[9] らに
よって議論されている。まず Mazharimousavi[9] に従い線形電磁場と結合した
2 + 1 重力理論、ただし宇宙定数がない場合について解を導出した。このとき
物質場のエネルギー運動量テンソルのエネルギー条件を調べると弱エネルギー
条件および因果エネルギー条件を満たすことが分かった。次に論文 [8] で導出
√
された、L ∝ F 型の非線形電磁場における解を導出した。まず宇宙定数が
ゼロの場合に解を導出した。この解は動径実スカラー場と全く同形になること
がわかった。次に宇宙定数が非ゼロの場合に解を導出すると、宇宙定数が負の
場合にはワームホール解が得られることを示した。また特異点解析を行った結
果、原点は特異点となることがわかった。さらに宇宙定数がゼロの場合には裸
の特異点が現れることを示した。以上の解は既にほかの論文で導出されてい
たが、本稿では新たに Born-Infeld 型の非線形電磁場における解を導出した。
Born-Infeld 型では特異点が二つ現われるが、原点の特異点は物理領域に存在し
ないことがわかった。また、エネルギー条件を調べた結果、弱エネルギー条件
を満たしていた。一方で因果エネルギー条件は破綻していることがわかった。
ただし、Maxwell 極限をとると因果条件は回復することを示した。
25
本稿では 2 + 1 時空における新たな解を導出したが、以下のような課題も残っ
ている。まず 2 + 1 時空における新たな解はほかに存在しないか、調べる必要
がある。特にブラックホール解は重要であり、重要な研究対象である。今回は
√
L ∝ F 型非線形電磁場およびディラトン場と結合した 2 + 1 重力理論の解を
求めたが、string 理論と相容れない。string 理論と無矛盾な非線形電磁場の理
論を探ることも重要である。また今回得られた解の性質を調べる必要もある。
今回は 2 + 1 時空における解を論じたがどのような高次元時空の性質を射影し
ているか、調べることは重要である。また熱力学的性質を調べることも量子重
力理論の構築に向けた手がかりとなる。特に特殊な電磁場 F = E0 dt ∧ dθ には
物理的な意味があるか、調べておく必要がある。以上のような点は今後の研究
課題である。
本稿の意義は非線形電磁場と結合した 2 + 1 次元重力理論の新たな解を導出
したことである。一方で新たな解の性質を詳しく調べることで、重力理論の新
たな側面を見出すことが今後の課題である。
26
A
A.1
付録
非線形電磁場について
この付録では非線形電磁場の理論をまとめる。もっとも簡単な場合である、円
対称・静的な外部解について論じ、非線形による影響を調べる。
古典的には非線形電磁場の理論は大別して 2 種類ある。まず Maxwell Power
型と呼ばれる理論でありラグランジアン L は
L = − |F|k
(A.1)
である。ただし、k は実定数である。k = 1 のとき線形 Maxwell 電磁場を表し
それ以外は非線形である。もう一方は Born-Infeld 型と呼ばれ、L は
(
)
√
F
L = b2 1 − 1 + 2
(A.2)
b
である [4]。ここで b は実定数である。とくに F/b2 が充分小さいときは
√
F
F
1+ 2 ∼1+ 2
(A.3)
b
b
と近似できるため、線形電磁場に帰着することがわかる。
次に非線形性による電磁場への影響を考える。ラグランジアンの Aµ による
変分から電磁場の方程式は
(√
)
∂µ
−gF µν L,F = 0
(A.4)
が導出される。L,F が k もしくは非線形電磁場の理論によって異なり、それぞ
れ異なった場の方程式を持つ。以下では簡単のため、円対称静的な外部電場で
の比較を行う。
Maxwell Power 型の理論では 2.1 節でみたように
E(r) =
Q
r1/(2k−1)
(A.5)
となる。ただし Q は定数である。また k = 1 の場合は E(r) = Q ln(r/r0 ) とな
り、k = 1/2 では anomaly が生じることも述べたとおりである。この理論は k
によって以下のように振る舞う。k < 1/2 の場合は原点でゼロ、無限大で発散
する電場分布となりやや不自然である。一方で k > 1/2 では原点で発散、無
限大でゼロとなる。特に 2 + 1 時空では k = 3/4 の場合に E(r) = Q/r2 とな
りクーロンの法則を再現する。今回は 2 + 1 時空のみ扱ったが、この理論を用
いると高次元でクーロンの法則を再現するように電磁場を定めることも可能で
ある。
一方で Born-Infeld 型の場合は
L,F =
−1
1 + F/2b2
27
(A.6)
であるから、電磁場の方程式は
(
)
d
rE(r)
=0
dr 1 + F/2b2
(A.7)
となる。これから電場分布は
√√
2b2 Q2
r2 + Q2
E(r) =
(A.8)
と決定できる。Born-Infeld 型非線形電磁場の最大の特徴は r = 0 における発
散が取り除かれている点である。電場の最大値は b の大きさによって決まる。
これはもともと Born-Infeld 理論は特殊相対論におけるローレンツ変換を意識
して作られており、無限大が生じないような調整が行われているためである。
長らく顧みられることのなかった理論であったが、ひも理論の発展とともに見
直されている [5]。
A.2
回転する時空における磁場成分の消滅
非線形電磁場と結合した 2 + 1 時空における重力理論を研究する上で、当初、
回転・磁場を取り入れて新たな解を導出しようと試みた。ところが、回転を含
む BTZ-BH 解と同様の ansatz を用いた場合、磁場成分は自動的に消滅するこ
とが分かった。これを付録にて示す。
考察する理論、および場の方程式は 2 章で述べたとおりである。ただし回転
を含めるため、ansatz を変更する。metric ansatz を
ds2 = −f 2 (r)dt2 +
dr2
+ r2 (dθ + N (r)dt)2
f 2 (r)
(A.9)
とおき電磁場の ansatz を
F = −E(r)dt ∧ dr + B(r)dr ∧ dθ
(A.10)
F rt = −E + N B
(A.11)
とおく。このとき
F rθ =
f 2 − r2 N 2
B + NE
r2
(A.12)
である。
上のような metric ansatz からゼロでないアインシュタインテンソルは
(
)
(
)2
2
1
dN
dN
df
d
N
Gtt =
+ 6r2 N
+ 4f
2r2 N 2 + r3
(A.13)
4r
dr
dr
dr
dr
1
Grr =
4r
(
r3
(
dN
dr
28
)2
df
+ 4f
dr
)
(A.14)
Gθθ
1
=
4
(
d2 N
−2r N 2 − 3r2
dr
2
(
dN
dr
)2
dN
dr
)2 )
− 6rN
d2 f
+4f 2 + 4
dr
( 2
)
1 2d N
dN
t
Gθ =
r
+ 3r
2
dr2
dr
(
df
dr
(A.15)
(A.16)
となる。一方で電磁場のエネルギー運動量テンソルは以下のようになる。
Ttt = L(F) − 2F tr Ftr L,F
(
)
Trr = L(F) − 2 F tr Ftr + F rθ Frθ L,F
(A.17)
Tθθ = L(F) − 2F rθ Frθ L,F
(A.19)
Tθt = −2F rt Frθ L,F
(A.20)
(A.18)
次にアインシュタイン方程式を用いて計算を行う。まず (t, t) 成分から (r, r)
成分を辺々引き算すると
( 2
)
N
dN
2d N
r
+ 3r
= 2F rθ Frθ L,F
(A.21)
2
dr2
dr
となる。ここで左辺は (t, θ) 成分と酷似していることに気付く。従って (t, θ) 成
分を N 倍して引き算することで
(
)
2Frθ L,F F rθ + N F rt = 0
(A.22)
(
)
を得ることができる。このとき L,F はゼロではない。そこで F rθ + N F rt を
ゼロと置く。ところが
f2
F rθ + N F rt = 2 B
(A.23)
r
となり、これから B = 0 もしくは f = 0 となる。後者は不適であるから、結局
B = 0 となる。従って回転する 2 + 1 時空においては磁場成分は消滅する。
29
謝辞
本研究にあたっては白石清教授にご指導承りました。この場を借りて感謝いた
します。また研究室の先輩にあたる小林氏、万城氏には文章の校正を担当して
いただきました。ありがとうございました。また研究のみならず私事でも色々
と関係のあった友人・諸先生方全ての方に感謝の意を表します。
30
参考文献
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[2] S. Carlip, Class. Quant. Grav. 12, 2835 (1995).
[3] M. Bañados, C. Teitelboim and J. Zanelli, Phys. Rev. Lett.69, 1849 (1992).
[4] M. Born and L. Infeld, Proc. Roy. Soc. Lond. A144, 425 -451 (1934).
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[8] S. H. Mazharimousavi and M. Hailsoy, “A new Einstein-nonlinear electrodynamics solution in 2 + 1 dimensions”, arXiv:1304.5206.
[9] S. H. Mazaharimousavi and M. Hailsoy, “New 2 + 1 dimensional Einstein-Maxwell
solution without cosmological constant”, arXiv:13120147v1
[10] S. H. Hendi, Eur. Phys. J. C 69, 281 (2010).
[11] S. H. Hendi, Phys. Lett. B 690, 220 (2010).
[12] O.Gurtug, S. Habib Mazharimousabi, M. Halilsoy Phys. Rev. D.85. 104004 (2010)
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[19] C. F. E. Holzhey and F. Wilczek, Nucl. Phys. B 380, 447 (1992).
31