平成22年度長期研修報告概要 鳥取県教育センター研修企画課 長期研修生 鍬本 鮎美 1 研究テーマ 国語科学習の指導の工夫 ~読む・書く言語活動を通して~ 2 はじめに 今までかかわってきた児童の課題として、中核教材での読み取りの学習が他の文章を読み取ったり、書く、 話すなどの表現活動に生かしたりできないということがある。また、伝えるべきことを簡単な言葉や一言で すませてしまい、相手に分かりやすく伝えることが難しいということもある。それらを解決していくことが 学習者の言語生活を豊かにしていくと考える。言語を指導する国語科として何ができるか考え、授業を再考 していきたい。 3 研究目的 ・説明文の読み取り方の学習を深め、発展学習に活用することで学びの実感がもてる。 ・相手に分かりやすく伝えるために適切な言葉をつかって、論理的に表現できる。 以上のような子どもの姿をめざして、1単位時間の中や単元の発展学習に、読む・書く言語活動を組み入れ た授業実践をしていく。 (仮説) 発展学習に書く言語活動を位置付け、学習者がどのような方法でどのような内容を書くかを意識して、 中核教材の読み取りを進める。読み取った筆者の意図や論の展開方法をもとにして書く活動を行うこと は、学習者にとって書く活動を容易にするのではないか。また、相手に分かりやすく伝えるための論理的 な表現の方法が分かるのではないか。それにより、学びの実感をもつことができると思われる。 4 研究内容 (1) 文献や資料をもとにした実践手法の構築 ① 発展学習を見通した単元構想の工夫 ② 読む活動から書く活動への手立て 用語の指導 …文章構成や、 筆者の意図、論の展開方法を、 用語をもとに読み取り、発展学習に活用する。 【用語例】意味段落、要約、要点、問いと答えなど (読みの力を育てる用語 白石範孝編著 東洋館出版所より) 認識方法の指導 …「対比して見る」 「順序に着目する」 「原因・理由・根拠に着目する」など、ものごとの見 方や考え方の方法を使って文章から筆者の意図等を読 み取る。 【認識方法例】類比、対比、順序、理由など (西郷竹彦文芸・教育全集 4巻 教育的認識論 恒文社より) (2) 検証授業 ① 検証授業1(所属校4年生 11時間 )の概要 単元名 筆者になって、しょうかいしよう 中核教材 「ヤドカリとイソギンチャク」 (図1) (図2) 単元の導入で中核教材の論の展開方法を取り入れたモデル文を提示した。中核教材の学習では図1に 示すような用語や認識方法を用いて筆者の意図や論の展開の工夫を読み取った。三次の発展学習では、 中核教材の学習を生かして説明文を書くという活動を位置付けた。単元全体を通して、同じ文章構成や 用語、認識方法を用いることにより学習者は、説明文について理解を深めた。 図2は学習者が書いた作品である。認識方法の学習を生かして順序に気をつけた文章を考え、適切な 接続語や文末表現で表されている。 検証授業1ではまだ説明文を書くことに難しさを感じる学習者がいたので、検証授業2では中核教材 の読み取りから書く活動へとスムーズに行うためのさらなる手立てを行う。 ② 検証授業2(所属校4年生 16時間)の概要 単元名 かんきょう問題を全校に発信しよう 中核教材 「ウミガメのはまを守る」 (図3) (図4) 検証授業1の課題を受けて、図3のように発展学習をより意識した中核教材の指導を工夫した。題名 に込められた筆者の意図を、 「対比」という認識方法で読み取った。本単元の中核教材は、環境問題に 対して保護活動が始まった経緯が原因と結果の繰り返しによって書かれていることと、保護活動が5W 1Hをキーワードにして書かれているという特性がある。その特性に着目させることによって論の展開 (図5) 方法に気付かせた。そして、毎時間読み取ったキーワードを つかって要約文を書く活動を設定し、発展学習で説明を書く 手立てとした。図4は学習者が発展学習で書いた説明文であ 1学期に書いた説明文と比べ、 る。図書資料から書きたいことを引用したり要約したりし、 2学期の冊子は書きやすかったか 中核教材で学習した文章構成に沿って書いている。あとがき には、自分の考えを書いている。検証授業2の後のアンケー トでは、 「説明文の学習に自信がついた」という学習者が検 証授業1の後より増えた。また、図5から分かるように、発 展学習につながる要約する活動を中核教材の学習で、毎時間 設定したことにより1学期より説明文が書きやすかったと いう学習者が多かった。 5 研究のまとめ (1)教材の特性を生かして説明文を書くために、単元の中で同じ用語や認識方法での学び方を繰り返し学 習することで、書き方が分かる。分かった書き方を活用して表現する(説明文を書く)ことが、さらに 学習者に学びの実感をもたらすことにつながる。 (2)適切な言葉で表現できるようになるには、自分自身の伝えたい内容に合った言葉を選び出す活動を 単元の中に設定し、書く活動の機会を多くする必要がある。 6 今後の課題 (1)必然性のある課題作りや学習者が主体的に読みたくなる書きたくなるような単元構想の工夫をする。 (2)書く活動へのさらなる手立てを工夫する。 7 おわりに 国語科の力とはどのようなことをさすのか、その力をどのようにつけるのか、どのような状態になれば力 がついたといえるのか。学習指導要領により指導事項が明記されていても、国語科における指導には常にあ いまいさがつきまとう。本研究は学習事項を表現活動において使いこなすことを目標に、あいまいさを払拭 する一つの試みでもあった。今後も本研究を土台として、学習者の実態に即して学びの実感がもてる国語科 の学習を実践していきたい。
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