為替トピックス3月16日号 (PDF/547KB)

2015/
為替トピックス
3/16
投資情報部
FX ストラテジスト
五十嵐 聡
NZ準備銀行は当面の金利据え置きを想定
 ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は3/12の会合で政策金利を3.50%に据え置いた。声明
では「我々の中心的な見通しは、政策金利の安定期間を設けることと一致している」と述べ
て、中立的な金融政策スタンスを強調、ハト派姿勢の弱さからNZドルは反発した。
 同時に公表された金融政策報告(MPS)では、堅調なGDP成長率の見通しを維持する一方、
インフレ率については下方修正し、今年第1四半期はゼロ%に鈍化するとした。また、短期金
利の見通しも下方修正し、予想期間を通じて現在の水準を続けるとの見通しを示した。
 RBNZは金融政策について中期的なインフレトレンドに焦点を当てており、原油安の効果等
に直接的には影響されないと指摘。一方、中期的な見通しに影響を与える企業の価格設定
行動や生産資源への需要動向に注目する姿勢を示した。
 NZドルの対ドル相場は米雇用統計を受けた米ドル高や、マクロプルーデンス政策への言及
等から下落したが、中立的な金融政策姿勢を受けて反発した。NZドル高けん制は続けてい
るものの、堅調な景気動向や金利据え置き見通しから、今後も底堅い動きが続くと予想。
RBNZは中立スタン
スを強調、ハト派姿
勢の弱さからNZドル
は反発
ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は3/12の金融政策発表で、政策金利であ
るオフィシャル・キャッシュレート(OCR)を3.50%に据え置いた。政策金利据
え置きは昨年9月以降、5会合連続となる。市場でも据え置き予想が大勢となっ
ていたこともあり、結果自体にサプライズはない。
ただ、声明では国内経済の強さを強調する一方、一部地域での干ばつや財政
再建、乳製品事業者の所得減少、通貨高等が経済の重しになっていると表明
し、バランスをとった記述となっている。また、金融政策については、
「イン
フレ率が中期的に2%で安定するよう努めることに焦点を当てている」として、
原油安等の一時的要因を重視しない姿勢を示したうえ、
「我々の中心的な見通
しは、政策金利の安定期間を設けることと一致している」と述べて、当面は
政策金利を据え置く可能性を強調。前回声明でも指摘された「更なる金利調
整は、上下どちらになるとしても、今後発表される経済指標に依存するだろ
う」との文言を残し、中立的な金融政策スタンスを示している。
市場では、声明でややハト派姿勢を強めるのではないかとの見方もあった
が、結果的には想定したほどハト派ではないことが確認され、NZドルは結果
発表後に買い戻しから反発する展開になっている。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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為替トピックス
堅調な成長見通しを
維持する一方、イン
フレ率、短期金利見
通しは大幅に下方修
正
今回は同時に四半期に1度の金融政策報告(MPS)が公表された。この中で、
RBNZは国内経済の強さや緩和的な金融政策、原油安が需要を押し上げること
等を理由に、向こう2年間にわたり前年比+3~4%の高成長が続くとの見方を示
した。これは2%台半ばとされる潜在成長率を上回る堅調なペースである。
一方、インフレ率については通貨高や世界的な低インフレ、直近の原油価格
の急落を背景に、貿易財価格が一段と下落、CPIは今年の第1四半期には前年
比+0.0%まで鈍化するとして、見通しを大幅に下方修正した。ただ、成長率見
通しの強さを背景に今後は需給ギャップが拡大、設備稼働率が徐々に上昇す
ることで、その後CPIは上昇に転じ、2016年末にかけては同+1.7%程度まで緩
やかに上昇していくとの見通しを示した。
こうした中で、インフレ率が足元で非常に穏やかなものにとどまっており、
今後も徐々にしか上昇しないことを踏まえると、金融政策は長期にわたり緩
和的であることが適切であると指摘。前回MPSと比べて中期的なインフレ圧力
が抑制されており、インフレ期待も低下していることから、政策金利は現行
程度の水準に維持することが適切であるとして、90日物銀行間金利の見通し
を大幅に下方修正、17年末にかけて4.5%程度まで上昇するとの見方から予測
期間全般にわたり現在と同水準の3.7%にとどまるとの見通しを示した。
(%)
5.0
NZ実質GDP前年比実績と見通し
(四半期:2007/3~2017/12)
4.0
8
3.0
7
2.0
6
1.0
5
0.0
4
実質GDP前年比
▲1.0
2
RBNZ見通し(15/3時点)
1990年以降のトレンド成長率
▲3.0
RBNZインフレ目標レンジ
(1~3%)
CPI前年比
RBNZ見通し(14/12時点)
RBNZ見通し(15/3時点)
90日物銀行間金利
RBNZ見通し(15/3時点)
3
RBNZ見通し(14/12時点)
▲2.0
NZ消費者物価指数と短期金利実績と見通し
(四半期:2008/3~2017/12)
(%)
9
1
▲4.0
0
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(注)実質GDPは2014年7-9月期まで
出所:ブルームバーグ、RBNZのデータよりみずほ証券作成
16
17
18
08
(年)
09
10
11
12
13
14
15
16
17
(注) CPIは2014年10-12月期まで、90日物銀行間金利の直近値は3月12
日時点の四半期平均値
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
18
(年)
RBNZは中期的なイ 前述した通り、RBNZは金融政策について「政策目標合意(PTA)」により中期
ン フ レ ト レ ン ド に 焦 的なインフレトレンドに焦点を当てており、原油安の効果等に直接的には影
点、当面は金利据え 響されないと指摘している。このため、CPI上昇率がインフレ目標レンジ(前
年比+1~3%)を下回ったとしても、それがすぐに利下げの根拠にはならない
置きの公算
との認識を示している。その一方で、中期的なインフレ率に影響を与える要
因として企業の価格設定行動や生産資源への需要の強さ等に注目する姿勢を
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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為替トピックス
示している点には留意が必要となろう。
とりわけ震災からの復興需要や住宅不足等を背景に住宅価格の上昇が続く
等、住宅市場が堅調に推移していることや、依然として高水準の純移民流入
が続いていること等が注目される。また、低金利環境の継続や原油価格下落
による個人消費や設備投資等の需要押し上げ等も今後のインフレ圧力を強め
る方向に働く可能性が指摘される。
一方、世界的な低インフレや通貨高が非貿易財価格の上昇を緩やかなものと
しており、期待インフレ率も足元で目標レンジの中間水準近くまで低下して
いることは、企業の価格設定行動の抑制を通じ、今後の中期的なインフレ見
通し低下から利下げを正当化する要因になり得ることに注目する必要があろ
う。実際、RBNZは1つのシナリオとして、期待インフレ率が1%まで低下した場
合には、90日物銀行間金利は現行水準より低くする必要があると述べている。
NZ純移民流入と住宅価格・売上高(前年比)
(月次:2006/1~2015/2)
(%)
18
(%)
6.0
40
12
5.0
20
6
4.0
0
0
3.0
▲6
2.0
(千人、%)
60
▲ 20
▲ 40
▲ 60
06
07
08
09
10
11
12
(注)純移民流入は2015年1月まで
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
NZド ル は 底堅い 推
移が続く公算
13
14
0.0
▲ 18
15
(年)
RBNZインフレ目標レンジ
(1~3%)
CPI前年比
CPI非貿易財 前年比
RBNZインフレ期待(2年)
1.0
▲ 12
純移民流入 過去1年累計(左目盛)
REINZ住宅売上高 前年比(左目盛)
REINZ住宅価格 前年比(右目盛)
NZインフレ関連指標と期待インフレ率
(四半期:2006/3~2015/3)
06
07
08
09
10
11
12
13
(注)CPIは2014年10-12月期まで
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
14
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(年)
NZドルの対米ドル相場は、米2月の雇用統計の予想を上回る結果を受けた米
ドル高の動きや、RBNZが追加的なマクロプルーデンス政策の検討を開始する
と表明したことによる利下げへの思惑、ニュージーランドの大手乳業組合に
対して粉ミルクに毒物を混入するとの脅迫状が届いた事件等を背景に、3月に
入ってから急速に下落する動きとなっていた。しかし、今回の金融政策会合
でRBNZが中立的な姿勢を示したことから反発する展開となっている。
昨年末にかけての原油価格急落を受けて、1月中旬以降は新興国や資源国を
中心に利下げを行う動きが相次いだ。こうした中で、RBNZも利下げに転じる
のではないかとの思惑が一部で強まる場面もあったが、結果的には堅調な景
気見通しを維持したこと、インフレ率の見通しは下方修正したものの、金融
政策は中期的なインフレトレンドに焦点を当てており、CPI上昇率の一時的な
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低下がすぐに利下げにはつながらないことを改めて示したこと等から、むし
ろ下値の堅さが強まる動きになっている。
また、RBNZはこれまでNZドル高に対する強いけん制を継続してきたが、今回
の声明ではその表現に変化の兆しも見られる。今回もNZドル相場の水準につ
いて「依然正当化されず、持続不可能」との認識を維持したものの、
「貿易加
重ベースでは」との前提が付け加えられるとともに、
「実質為替レートの相当
程度の調整が必要」として、前回までの「更なる著しい下落を予想」との表
現からは若干ながら穏やかなものになっているように見える。
実際、3/12にはウィーラー総裁が「現在のNZドルの対米ドル相場の水準に満
足している」と述べたとの報道も伝えられている。
これは、足元で乳製品の電子入札価格が6回連続で上昇しており、価格の下
落に歯止めがかかるとともに、底入れ感が徐々に強まってきたこととも関係
しているものと思われる。ニュージーランドは資源国とはいえ、輸出の中心
は乳製品等のソフトコモディティであり、大幅な供給超過による構造的な問
題が指摘されている鉄鉱石等のハードコモディティとは状況が異なる。確か
に、交易条件(輸出物価/輸入物価)は昨年4-6月期のピークから6%程度低下
しているとはいえ、歴史的には依然として高水準にあり、RBNZも輸出価格の
良好な見通しと原油価格の下落に伴う輸入価格の下落を受けて、今後も交易
条件の良好な見通しは継続すると予想している。
今年の半ばにかけて米連邦準備理事会(FRB)が利上げに転じるとの見方が
強いことや、ギリシャ問題の先行きが依然として不透明であること等を考慮
すれば、NZドルは対ドルで引き続き上値の重い推移を続けると見込まれるも
のの、景気の堅調さや相対的な高金利、RBNZの中立的な金融政策スタンスに
変わりがない限り、下値も底堅い動きが続くと予想される。
(%)
5.0
(1NZドル=ドル) (2002/6=1000)
0.90
1450
NZドルと政策金利
(日次:2013/1/1~2015/3/12)
1400
0.88
4.5
0.82
1200
3.0
0.80
1150
0.78
1100
2.0
13/1
13/4
13/7
13/10
14/1
14/4
14/7
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
14/10
0.75
0.70
0.65
0.60
0.55
1050
0.76
1.5
0.80
NZドル/米ドル(右目盛)
1250
3.5
3ヵ月銀行手形先物15/12限月(左目盛)
NZ政策金利(左目盛)
NZドル米ドル(右目盛)
0.85
1300
0.84
2.5
(1NZドル=ドル)
0.90
交易条件(左目盛)
1350
0.86
4.0
NZ交易条件指数とNZドル
(四半期:2000/3~2015/3)
1000
0.50
0.74
950
0.45
0.72
900
(年/月)
0.40
00
15/1
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
(注)NZドルは3/12までの四半期平均値
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
11
12
13
14
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(年)
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広告審査番号 : MG5690-150316-13
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