2015/ 為替トピックス 3/19 投資情報部 FX ストラテジスト 由井 謙二 トルコ中銀は金利据え置き、リラ安進行への警戒を示す トルコ中央銀行(以下中銀)は3/17、主要政策金利の据え置きを決定。一部に追加利下げ を予想する声もあったため、据え置き発表後、トルコリラは対ドル、対円ともに上昇した。 中銀は政策金利を据え置いた理由として、食品価格の上昇というインフレ要因に加え、国 際金融市場の不安定化を指摘。米連邦準備理事会(FRB)が金融政策の正常化へ進む中 で、中銀が緩和姿勢を強めれば、トルコリラ安が一段と進みかねないことへの警戒があった とみられる。 政府内でもトルコリラ安に対する会合がもたれる等、通貨安への懸念を強めている節がう かがえることもあり、政府の中銀批判のトーンは和らぐ公算が大きい。もっとも、6月に総選 挙を控えて景気回復がもたつくようであれば、利下げを求める政治圧力が再度強まりかね ないことには留意したい。 トルコ中銀は主要政 策金利の据え置きを 決定し、リラは上昇 トルコ中央銀行(以下中銀)は、3/17の金融政策決定会合で主要政策金利であ る1週間物レポ金利を7.50%に据え置くことを決定した。また、金利誘導目標の上限 を示す翌日物貸出金利および下限を示す翌日物借入金利もそれぞれ10.75%、 7.25%に据え置いた。金融市場の一部には、追加利下げを予想する声もあり、主要 金利の据え置きを受けて、トルコリラ(以下リラ)は対ドル、対円ともに上昇した。 会合前に は 中銀総 裁と大統領が会談。 金融政策を巡る「対 立」への懸念払しょく をはかる 3/3に公表された2月の消費者物価指数(CPI)は前年比+7.55%と1月(同+7.24%) から加速した一方で、中銀が重視するとしているエネルギーや食品を除くコアCPIは 1月の同+8.63%から同+7.73%に鈍化した。利下げを求める政治圧力が強まる中で、 市場では中銀が追加緩和に踏み切るのではとの思惑が高まる場面がみられた。 しかし、政府高官から中銀の金融政策への過度な干渉が嫌気され、リラ相場が下 落基調を一段と強めると情勢は一変。ダウトオール首相を含む政府高官は、リラ建 て資産を保有する海外投資家への事情説明に追われたほか、3/11には、バシュ チュ中銀総裁がエルドアン大統領と会談。バシュチュ総裁は早急な利下げによるリ ラ安がもたらすリスクや、投資信頼性の向上、金融政策を安定化させる必要性を訴 え、その後トルコ政府は声明で中銀の独立性を尊重する見解を示したことから、次 第に据え置き予想が優勢となった。 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 2015/3/19 為替トピックス トルコの主要金利の推移 (週次:2010/7/2~2015/3/18) (%) 14 12 10.75 10 8 7.50 7.25 6 4 市場金利(翌日物銀行間金利) 政策金利(1週間物レポ金利) 上限金利(翌日物貸出金利) 下限金利(翌日物借入金利) 2 0 10/7 11/1 11/7 12/1 12/7 13/1 13/7 14/1 14/7 15/1 (年/月) (注)トルコ中銀は資金供給オペ等を通じ市場金利を政策金利近辺に誘導 市場金利の変動を許容する幅として、上限金利と下限金利を設定 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 中銀は据え置きの理 由として、インフレ要 因に加え、国際金融 市場の不安定化を指 摘 中銀は会合後の声明において、インフレに関し、「これまでの慎重な金融政策に よってインフレ動向、特にエネルギーや食品を除くコアのインフレ動向に好ましい影 響を及ぼし続けている」との評価を示した。しかし、前回会合で記された「今後もコア インフレ率は低下すると予想している」との文言は削除しており、インフレ見通しに対 して前回よりも慎重にみていることがうかがえる。 また、政策金利を据え置いた理由として、「国際金融市場の不安定化や食品価 格の上昇を踏まえると、慎重な金融政策を維持することが求められる」と述べ、イン フレ要因に加えて、国際金融市場の不安定化を新たに指摘した。これは米連邦準 備理事会(FRB)が金融政策の正常化へ進む中で、中銀が緩和姿勢を強めれば、 金利差縮小の思惑等から、リラ安が一段と進みかねないことへの警戒があったとみ られる。実際に1月中旬以降、海外投資家はトルコの株式や国債の売り越しに転じ、 株安、債券安(金利上昇)、通貨安の動きがみられている。 (ポイント) 100000 トルコの主要株価指数と10年国債利回り (週次:2012/1/6~2015/3/18) (%) 12 イスタンブール100(左目盛) (億ドル) 海外投資家のトルコ株式・国債の売買動向 (週次:2013/1/4~2015/3/6) 15 債券 株式 10年国債利回り(右目盛) 90000 11 80000 10 70000 9 60000 8 50000 7 10 5 0 ▲5 6 40000 12/1 12/7 13/1 13/7 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 14/1 14/7 15/1 (年/月) ▲ 10 13/1 13/5 13/9 14/1 14/5 (注)4週移動平均、プラスは取得超、マイナスは処分超 出所:トルコ中央銀行のデータよりみずほ証券作成 14/9 15/1 (年/月) この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 2 2015/3/19 為替トピックス トルコ中銀は引き続 き慎重な金融政策を 続ける意向を表明 今後の金融政策については、「将来の金融政策決定は、インフレ見通しの改善 次第である」、「インフレ見通しに明確な改善がみられるまでは、慎重な金融政策を 続ける」との方針を示した。 インフレ率が依然として中銀のインフレ目標(前年比5%±2%)の上限を上回って 推移していること、リラ安にともなう輸入物価の上昇がインフレ改善を阻害する可能 性があること、米国が金融政策の正常化を進める中で、中銀が利下げに踏み切れ ば資金流出圧力が強まる可能性があること、等から目先の利下げ余地は限定的で あると予想される。政府内でもリラ安進行に対する会合が開かれる等、通貨安への 懸念を強めている節もうかがえ、政府の中銀批判のトーンは和らぐ公算が大きい。 もっとも、6月に総選挙を控えて景気回復がもたつくようであれば、利下げを求める 政治圧力は再度強まりかねないことは引き続き留意されよう。 トルコの物価指数(前年比) (月次:2011/1~2015/2) (%) 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 インフレ目標(5%±2%) コアCPI(除く食品、エネルギー) 食料品価格 消費者物価(CPI) 生産者物価 13.70% 7.73% 7.55% 3.10% 11/1 12/1 13/1 14/1 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 年明け以降のリラ相 場は、中銀の金融政 策に対する政治圧力 が嫌気され、一段安 の展開 15/1 (年/月) 年明け以降のリラ相場を振り返ると、1月中旬にかけては、原油価格の下落がエ ネルギーのほぼ全量を輸入しているトルコの貿易収支の改善につながるとの見方 から、その他の新興国通貨と比較して底堅い推移が継続した。 しかし、1/16にエルドアン大統領が、政策金利を高く維持する中央銀行に対して 強い不満を表明したことや、中銀が政策金利の引き下げを決定(8.25%→7.75%)し た後、中銀総裁が「1月の消費者物価が大幅に低下した場合には緊急会合を開催 して利下げを行う」可能性を示唆したことを受けて、金融市場では金利先安観測の 高まりとともにリラが大幅に下落。対ドルで過去最安値を更新した。 2月に入り、1月の消費者物価が予想ほど低下しなかったため、中銀の緊急会合 が見送られるとリラはいったん反発したが、強い内容となった米1月雇用統計を受け たドル高や、トルコ政府からの度重なる利下げ要求から、リラは再び軟調地合いをた どった。また、2/24に中銀が1月に続いて利下げ(7.75%→7.50%)を実施した後も、エ ルドアン大統領をはじめ政府高官が相次いで中銀の金融政策を批判したことに加 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 3 2015/3/19 為替トピックス え、市場ではバシュチュ中銀総裁が更迭されるのではとの思惑も高まったこともあ り、リラ相場は一段安の展開となった。米2月雇用統計を受けたFRBによる早期利上 げ観測の高まりを背景としたドル買いも相まって、3月初旬には節目の1ドル=2.6リラ 台を突破し、過去最安値を更新。対円でも一時1リラ=46円台を割り込み、2014年3 月以来の安値を付けた。 しかし、3月中旬以降は、①中銀が1週間物外貨建て預金金利の引き下げ(ドル 建てを7.5%から4.5%へ、ユーロ建てを6.5%から2.5%)等により通貨防衛をみせたこと、 ②中銀総裁と大統領が会談し、その後政府高官が中銀の批判トーンを和らげたこ と、③中銀が主要な政策金利を据え置くことを決定し、改めて慎重な金融政策を続 ける姿勢をみせたこと、等から下げ渋りの動きをみせている。 トルコリラの推移 (日次:2013/1/2~2015/3/18) (1リラ=円) (1ドル=リラ) 1.6 58 対円(左目盛) 56 1.8 対ドル(右逆目盛) 54 リ ラ 高 2.0 52 2.2 50 48 2.4 46 2.6 44 42 13/1 2.8 13/7 14/1 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 リラ相場は対ドルで の減価ペースは緩や かに、対円では持ち 直し基調に転じると 予想 14/7 15/1 リ ラ 安 (年/月) 今後のリラ相場を展望すると、3月中旬にかけて年初来で10%近い下落を演じて いること、中銀や政府が通貨防衛の姿勢を示していることを考慮すれば、対ドルで の減価ペースは次第に緩やかなものになろう。また、政府が中銀に対して金融緩和 を求める動きを緩めるかを見極めるうえでも、鉱工業生産や、消費者信頼感等の景 況感が改善に向かうかどうかに注目したい。他方で、これまでの金融引き締めや原 油安を背景に、経常赤字の縮小が期待されることはトルコ経済の追い風になってい る。中銀の金融政策への信認が高まれば、経済ファンダメンタルズの改善を評価し た資金流入がリラ相場を下支えしよう。 対円では、52週移動平均線からの上方かい離率は修正され、調整一巡感も台頭 しつつある。日銀の量的・質的金融緩和の継続や、本邦公的年金等の運用改革に 基づく外貨資産買いの円売りフローを背景に円が売られやすい地合いは継続する とみられることもあり、リラ円相場も徐々に持ち直し基調に転じてくると予想している。 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 4 2015/3/19 (%) 25 為替トピックス トルコの鉱工業生産と消費者信頼感 (月次:2008/1~2015/2) (ポイント) 85 20 トルコの貿易収支 (月次:2010/1~2015/1) (億ドル) 0 80 15 ▲ 30 75 10 5 70 ▲ 60 0 ▲5 65 ▲ 10 60 ▲ 15 鉱工業生産指数(労働日数調整、前年比、左目盛) ▲ 20 消費者信頼感指数(右目盛) ▲ 90 55 原油 貿易収支(原油を除く) 50 ▲ 120 ▲ 25 08/1 09/1 10/1 11/1 12/1 13/1 14/1 10/1 10/7 11/1 11/7 12/1 12/7 13/1 13/7 14/1 14/7 15/1 15/1 (年/月) (注)鉱工業生産は2015/1時点 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 (年/月) 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 トルコリラ円の週足推移 (1トルコリラ=円) (1トルコリラ=円) (週次:2010/1/1~2015/3/13) 70 70 トルコリラ円 66 66 52週移動平均線 62 62 52週移動平均±10% 58 58 54 54 50 50 46 46 42 42 38 10/1 38 10/7 11/1 11/7 12/1 12/7 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 13/1 13/7 14/1 14/7 15/1 (年/月) この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 5 2015/3/19 為替トピックス 金融商品取引法に係る重要事項 当社取り扱いの商品等(外貨建商品等も含む)にご投資いただく際には、各商品等に所定 の手数料(投資信託の場合は銘柄ごとに設定された販売手数料および信託報酬等の諸 費用等)をご負担いただきます。債券を当社との相対取引によりご購入いただく場合は、購 入対価のみをお支払いいただきます。 各商品等には価格の変動や発行者の信用状況等の悪化等により損失を生じるおそれが あります。 なお、債券の利金・償還金の支払いについて、発行者の信用状況等によっては、支払いの 遅滞・不履行が生じるおそれがあります。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向を ふまえて当社が決定した為替レートによるものとします。また、売却時等の為替相場の状 況によっては為替差損が生じ、損失を被るおそれがあります。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面 や目論見書またはお客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-150319-21 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 6
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