為替トピックス

2015/
為替トピックス
3/4
投資情報部
FX ストラテジスト
五十嵐 聡
RBAは金利据え置き、追加利下げ示唆。豪ドルは反発
 豪州準備銀行(RBA)は3/3の金融政策会合で政策金利を史上最低水準の2.25%に据え置
いた。市場では利下げ予想がやや優勢だったため、発表後に豪ドルは反発した。
 声明では「当面政策金利を据え置くことが適切」と述べる一方、「更なる緩和が適切となる可能
性がある」として追加利下げの可能性を示唆した。その背景には少ない利下げ余地を有効に
使う観点や、豪ドル高への強いけん制を示す意図があると思われる。
 今後は商品市況や為替相場の動向等を睨みながら、追加緩和のタイミングを探る動きにな
ると予想。RBAは2016年以降の強気の景気シナリオを維持する一方、需要が上向く時期は
後ずれすると見ており、その間には何らかの政策措置が必要と判断しているもよう。
 豪ドルの対米ドル相場は材料出尽くし感や調整一巡感から下げ渋る動きが続いている。
RBA総裁が指摘した水準近くまで下落したことで、目標達成感が強まる可能性もある。た
だ、RBAは通貨安戦略を維持しており、当面は安値圏での推移が続くと予想。
RBA は 金利据え 置
き、利下げ予想が優
勢の中、発表後に豪
ドルは反発
豪州準備銀行(RBA)は3/3に開催された金融政策会合において、政策金利で
あるオフィシャル・キャッシュレート(OCR)を過去最低水準の2.25%に据え置
いた。市場では0.25%の利下げ予想がやや優勢となっていたこともあり、結果
発表後に豪ドル相場は買い戻し主導で反発する展開となった。
RBAは前回会合で2013年8月以来1年半ぶりの利下げを実施、声明では今後の
金融政策に関するスタンスを明示しなかったものの、景気認識を下方修正し
ており、四半期に1度公表される金融政策報告(SMP)では、今年の成長率お
よびインフレ率の見通しが下方修正された。このため、市場ではRBAが金融緩
和方向にかじを切ったとの見方が増えて、今後の利下げを織り込む動きが強
まった。
その後発表された経済指標でも、1月の雇用統計で失業率が予想を上回る上
昇となったことや、昨年10-12月期の設備投資が予想以上の減少幅となったこ
と等もあり、市場では3月会合でも追加利下げが実施されるとの予想が次第に
優勢となっていった。
しかし、結果的にRBAは今回の声明で「前回会合での金融緩和を踏まえ、当
面政策金利を据え置くことが適切であると判断した」と述べ、しばらく状況
を見極める姿勢を示した。ただ、同時に「今後、持続可能な需要の伸びを促
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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進し、目標に沿ったインフレ率を達成するために、更なる緩和が適切となる
可能性がある」として、緩和方向のバイアスを示した。
豪ドルの推移
(日次:2013/1/1~2015/3/3)
(1豪ドル=円)
106
104
対円(左目盛)
102
対ドル(右目盛)
100
98
96
94
92
90
88
86
13/1
13/4
13/7
13/10
14/1
14/4
14/7
14/10
(1豪ドル=ドル)
1.08
1.06
1.04
1.02
1.00
0.98
0.96
0.94
0.92
0.90
0.88
0.86
0.84
0.82
0.80
0.78
0.76
15/1
(年/月)
豪
ド
ル
高
豪
ド
ル
安
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
追加緩和を示唆した
背景には少ない利下
げ余地や豪ドル高け
ん制を示す意図
RBAが今回、政策金利を据え置く一方で、今後の追加緩和の可能性を示唆し
た背景には、中国経済や鉄鉱石価格等の商品市況の先行きに対する不透明感
が残る状況の中で、少ない利下げ余地を有効に使う観点に加えて、豪ドル高
への強いけん制を示す意図があると思われる。
RBAは2011年11月から13年8月にかけて累計2.25%の利下げを行った後、金融
緩和効果の波及状況を見極めるために政策金利の据え置きを続けた。しかし、
昨年以降の商品市況の大幅な下落は豪州経済を巡る環境を大きく変化させて
おり、何らかの政策措置が必要な状況となっている。しかし、金利水準自体
は相当に低く、住宅価格の過度の上昇等の不均衡も生じていることを踏まえ
れば、利下げ余地はそれほど大きくないとの認識があろう。
実際、今回の声明でも住宅投資向けの貸出増加や、住宅価格の大幅上昇等に
ついて引き続き言及すると同時に、
「長期金利低下を一因に株価や商業用不動
産価格が上昇した」との指摘が付け加えられており、RBAが一段の金利低下を
積極的には望んでいない可能性を匂わせている。
また、RBAは足元のインフレ見通しを下方修正したものの、今後については
「向こう1∼2年にわたり目標に沿って推移する」と述べており、原油価格下
落にともなうインフレ率低下はあくまでも一時的なものであり、基調インフ
レ率で見れば安定して推移するとみていることがうかがえる。このため、実
質金利ベースで見れば政策金利はすでにゼロ%に近く、積極的に利下げを行う
理由は見当たらない。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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こうした中で、RBAがとっているのは通貨安戦略であると言えよう。特に、
資源国である豪州は輸出商品価格の下落が即、交易条件の悪化につながる。
これを相殺するためには自国通貨安が必要となる。実際にRBAは豪ドル高けん
制を継続すると同時に、スティーブンスRBA総裁が「1豪ドル=0.75ドル付近が
望ましい」と述べる等、口先介入も交えて通貨安誘導を行っていると言える。
しかし、ここに来ての原油価格急落を背景に利下げを実施する国が相次ぎ、
豪州が利下げしなければ金融政策スタンスの違いを背景に豪ドル高に振れる
恐れがあったことが、2月のサプライズ利下げの背景にあったとの指摘もあ
る。実際、前回会合の議事要旨では利下げ実施か見送りかで議論があり、結
局早期に追加のメッセージを送るため利下げに踏み切ったとの記述がある。
(%) (2012年度=100)
6
120
豪州消費者物価指数(前年比)と政策金利
(月次:2005/1~2017/6)
(%)
9
RBAインフレ目標レンジ(左目盛)
(2~3%)
基調インフレ率(前年比)(左目盛)
RBAスタッフ予想(15/2時点)(左目盛)
政策金利(左目盛)
実質政策金利(右目盛)
8
7
6
5
豪州交易条件と豪ドルレート
(四半期:2000/3~2015/3)
(1豪ドル=米ドル)
1.1
110
4
1.0
100
0.9
3
90
2
5
0.8
80
4
1
3
0
2
▲1
60
▲2
50
0.7
70
交易条件(左目盛)
1
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(注) 基調インフレ率は四半期ベースで2014年10-12月期まで、政策金利
は3/3時点、実質政策金利は政策金利-基調インフレ率(前年比)、
RBAスタッフ予想は予想レンジの中間値で表示
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
今後は 商品市況や
為替相場を睨みなが
ら、追加緩和のタイミ
ングを探る動きに
0.5
00
17
(年)
0.6
豪ドル/米ドル(四半期平均)(右目盛)
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(注) 交易条件は2014年10-12月期まで、豪ドル相場は四半期平均値、
直近は3/3までの平均値、豪州の年度は7月から翌年6月まで
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
(年)
今後については、RBAは国内需要の動向とともに、商品市況や為替相場の動
向等を睨みながら、追加緩和のタイミングを探る動きになると予想される。
今回の声明では豪州経済について、「成長率が引き続きトレンドを下回り続
けており、国内需要は総じて非常に弱い」
「その結果、失業率はここ1年で徐々
に上昇した」
「経済はまだしばらくの間、余剰生産能力が内在する可能性があ
る」等と述べており、弱めの景気認識を維持している。
一方、2/6に発表された金融政策報告(SMP)では、足元の成長率とインフレ
率の見通しを下方修正したものの、先行き16年以降は天然ガス輸出の拡大、
消費や鉱業部門以外の設備投資の拡大等を背景に、トレンドを上回る成長
ペースに加速していくとの見通しを示しており、基本的には強気の姿勢を維
持している。ただ、これらの需要が上向く時期は全般に当初の見通しよりも
後ずれすると見ており、それまでの間は需要を支えるために何らかの政策措
置が必要になると判断しているもようである。特に年前半にかけては中国景
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気の減速やそれにともなう商品市況の一段の下落等の不透明感が続くと予想
されるため、常に利下げの可能性が存在していると見る必要があろう。
また、商品価格の大幅な下落について声明では、「需要の伸びの弱さと、よ
り重要なのは、顕著な供給の増加を反映している」との認識を示している。
金融政策報告(SMP)では「原油安による鉄鉱石輸送コストの削減効果等もあ
り、鉄鉱石減産の動きは限定的になると見込まれる」と述べている点から見
ると、鉄鉱石価格の底入れにはまだ時間がかかると見ている節がうかがえる。
これらの点から見ても、年前半にかけては追加利下げが実施される可能性に
留意する必要があろう。特に、4/22に1-3月期のCPI統計が発表された後の5/5
の金融政策会合では、その直後の5/8に四半期に1度の金融政策報告が発表さ
れ、成長率やインフレ率の見通しの改定が実施されることもあり、利下げの
可能性が高いとみられる。
豪州実質GDP成長率(前年比)とRBA予想
(四半期:2005/3~2017/6)
(%)
6.0
(ドル/トン)
170
実質GDP前年比
RBAスタッフ予想(15/2時点)
RBAスタッフ予想(14/11時点)
1990年以降のトレンド成長率
5.5
5.0
4.5
4.0
鉄鉱石価格と豪ドル相場の推移
(日次:2012/1/2~2015/3/3)
(1豪ドル=ドル)
1.10
160
1.05
150
140
1.00
130
3.5
120
3.0
110
2.5
100
2.0
90
1.5
1.0
0.5
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
(注) 実質GDPは2014年10-12月期まで、RBAスタッフ予想は予想レンジ
の中間値で表示
出所:ブルームバーグ、豪州準備銀行(RBA)のデータよりみずほ証券作成
豪ドル相場には調整
一巡感が出るも、し
ばらくの間は安値圏
での推移が続く見通
し
(年)
0.95
0.90
0.85
80
中国輸入鉄鉱石価格(左目盛)
70
豪ドル米ドル(右目盛)
60
12/1
12/7
13/1
13/7
14/1
(注)鉄鉱石価格は2/25まで
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
0.80
0.75
14/7
15/1
(年/月)
豪ドルの対米ドル相場は、鉄鉱石等の商品価格の下落や米利上げ観測等を背
景に昨年後半にかけて大幅に下落、年明け後は利下げ観測の高まりから一段
安となり、2月の利下げ実施直後には一時09年5月以来となる0.7626ドルまで
売り込まれた。
しかし、その後は材料出尽くし感や調整一巡感から全般に下げ渋っており、
今回の金融政策会合では利下げ予想がやや有力だった中で金利が据え置かれ
たこともあり、買い戻しが優勢の動きになっている。また、今回の金融政策
会合でRBAは追加緩和の可能性を指摘したものの、市場にとって意外な内容で
はなかった。金利先物市場ではすでに年内に0.25%刻みであと2回、1.75%程度
までの利下げが織り込まれており、IMM通貨先物の豪ドル売り越しポジション
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為替トピックス
が積み上がっている点から見ても、為替市場においても一定程度の追加利下
げをほぼ織り込んでいる状況にあると考えられよう。
また、RBAは声明で「豪ドルは対米ドルでは著しく下落した」との認識をす
でに2月会合で示しており、少なくとも対ドルではある程度の調整一巡感があ
るものと思われる。前述した通り、スティーブンスRBA総裁は昨年12月に「1
豪ドル=0.75ドル付近まで下落するのが望ましい」と述べていたが、すでにそ
れに非常に近い水準となっており、目標達成感が出てもおかしくない。
ただ、RBAとしては市場で目標達成感が強まり、豪ドル相場が反発すること
は避けたいだろう。景気の先行き不透明感が強く、商品市況の下落が続いて
いる間は、豪ドル安を望む姿勢を緩めることはないと思われる。RBAが豪ドル
高けん制を続け、必要に応じて利下げの選択肢を残している背景にはこうし
た事情があると言えよう。逆に言えば、RBAの意図に反して豪ドル相場が上昇
する状況となれば、利下げの可能性が強まることを意味していよう。
これらの点を踏まえれば、豪ドル相場は今後もしばらくの間は商品市況や中
国景気の動向、追加利下げの時期等を探りながら、安値圏での推移が続くと
予想される。ただ、今後16年以降の成長加速シナリオ自体が変わらない限り、
追加利下げの余地は限定的であると考えられることから、すでに数回の利下
げを織り込んだ状況で更なる下落余地は大きくないものと考えられる。
今後、商品価格に底入れ感が強まるとともに、世界経済の拡大が軌道に乗っ
て来れば、利下げ打ち止め感とともに豪ドル相場も徐々に底入れから上昇に
転じていく展開が予想される。
(%)
2.8
豪ドル為替レートと豪州政策金利
(日次:2013/7/1~2015/3/3)
(1豪ドル=ドル) (千枚)
0.98
100
2.7
0.96
2.6
0.94
2.5
0.92
2.4
0.90
2.3
0.88
2.2
0.86
2.1
0.84
2.0
政策金利(左目盛)
0.82
1.9
30日物銀行間金利先物 15/12限月(左目盛)
0.80
1.8
豪ドル(右目盛)
0.78
1.7
0.76
1.6
0.74
13/7
13/9 13/11 14/1
14/3
14/5
14/7
14/9 14/11 15/1
(注)30日物銀行間金利先物は14年7月1日から
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
15/3
(年/月)
豪ドル相場と通貨先物ポジション
(週次:2013/1/4~2015/3/3)
(1豪ドル=米ドル)
1.08
1.06
80
1.04
IMMポジション 買い越し-売り越し(左目盛)
1.02
豪ドル/米ドル(右目盛)
60
1.00
0.98
40
0.96
0.94
20
0.92
0
0.90
0.88
▲ 20
0.86
0.84
▲ 40
0.82
0.80
▲ 60
0.78
▲ 80
0.76
13/1/4 13/4/19 13/8/2 13/11/15 14/2/28 14/6/13 14/9/26 15/1/9
(注) 豪ドルの直近値は3/3時点、IMMポジションは毎週火曜
(年/月/日)
日集計、2/24までの数値
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
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金融商品取引法に係る重要事項
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用等)をご負担いただきます。債券を当社との相対取引によりご購入いただく場合は、購入
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 なお、債券の利金・償還金の支払いについて、発行者の信用状況等によっては、支払いの
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ふまえて当社が決定した為替レートによるものとします。また、売却時等の為替相場の状況
によっては為替差損が生じ、損失を被るおそれがあります。
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目論見書またはお客さま向け資料等をよくお読みください。
商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号
加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
広告審査番号 : MG5690-150304-36
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