公益社団法人 日本経済研究センター

公益社団法人
日本経済研究センター
Japan Center for Economic Research
2015 年 3 月 5 日
先進的な交通社会の実現に向けて
-競争の焦点は台数からサービスの質へと拡大-
日本経済研究センター
研究本部
2015 年 2 月 12 日(木)に第 5 回会合を開き、自動車産業の ICT 利活用の動向とそ
の将来像について議論した。自動車は、運転支援の高度化を経て漸進的に自動運転化
への進化する過程にあり、その実現には、制度的な対応や社会的な受容がカギとなる。
また、今後は台数を争う競争からサービスの質へと競争領域が拡大し、周辺産業を巻
き込んだビジネスモデルを作ることが必要となる。議論の要旨は下記の通り。
1. 1990 年代から ITS の取組みが本格化し、今や車を動かすための電子制御装置は百
数十個。現在は、加速・操舵・制動のうち、複数の機能を組み合わせた自動化が実
現できる段階にある。具体的には、カメラやレーダーによる自律系システムに加え
て車車間通信・路車通信を利用して、車間制御やレーン制御を半自動化したり、見
通し外の状況を運転者に通知したりする高度運転支援が商用化されつつある段階。
2. そこからの進化には制度的対応や社会的受容性の進展がカギ。端的な例では、条約
上、自動車にはドライバーが必須であり、実験を超えた完全自動運転を実用化する
ためには条約改正も必要となるため、自動運転の商品化については出来ることから
着手すべき。
3. 高度運転支援は様々な社会課題の解決に貢献する。物流業界では事故の防止が最優
先の課題の一つだが、ドライバーのバイタル情報のモニターや、車車間通信による
自動車の走行状況の交換などは事故防止に有効。保険料率等を変更できればインセ
ンティブにもなる。また、定速で隊列走行することでトラックの燃費が 15 パーセ
ント以上向上するという調査結果もある。
4. 今後は、新興国向けと先進国向けでは自動車に求められる機能が大きく異なってく
る可能性がある。将来的には、先進国では台数を増やす時代ではなくなり、稼働率
を上げつつサービスを充実させる時代になっていく事も想定される。データを利活
用したサービスで付加価値を提供するのもその一つであり、コンテンツ製作者にプ
ラットフォームを開放する取組みなども始まっている。
5. 自動運転は、閉じた地域や専用レーンなどでは技術的には可能だが、船や航空機と
異なり、自動車の場合は周囲の環境が非常に複雑。一般車と混在するような環境で
は危険が大きいのが実態。トラブル発生時にはシステムと運転者の責任分界点の原
則なども決める必要がある。まずは運転者主導と車主導の切り替えがスムーズに行
なわれる半自動化が現実的なライン。東京五輪の期間限定で、自動走行を行なうこ
とは可能かもしれない。しかし、五輪後にどうするのかを考えなくてはならない。
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日本経済研究センター
情報通信技術が変える経済社会研究会
情報通信技術が変える経済社会研究会
座長
有識者
経済団体
メンバー
岩田
一政
公益社団法人日本経済研究センター理事長
浅見
徹
東京大学大学院情報理工学系研究科教授
奥和田久美
科学技術振興機構シニアフェロー
高口
鉄平
静岡大学大学院情報学研究科准教授
実積
寿也
九州大学経済学研究院教授
篠崎
彰彦
九州大学経済学研究院教授
日本経済団体連合会
エレクトロニクス、自動車関連、IT、小売、流通など会員
企業等 10 社
企業
オブザーバー
アドバイザー
NHK、総務省
鈴木達治郎
日本経済研究センター特任研究員/長崎大学
教授
高地
圭輔
日本経済研究センター主任研究員
小林
辰男
事務局
同
上
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