燃料の柔軟・安定な調達が極めて重要-ピーク時を石油からLNGに

公益社団法人
日本経済研究センター
Japan Center for Economic Research
2015 年 11 月 10 日
電力自由化、燃料の柔軟・安定な調達が極めて重要
-ピーク時を石油からLNGに、メリット大きく-
日本経済研究センター
2015 年 10 月 15 日(木)に第 21 回会合を開き、電力自由化時代のエネルギー産業の
対応について議論した。電力自由化時代には、コスト低減のために液化天然ガス(L
NG)を柔軟に安定的に調達する体制が欠かせない。それによりピーク時もLNG火
力で対応でき、コスト高の石油火力に依存する必要がなくなるからだ。その実現には
調達力向上を目指した買い手側の規模拡大が不可欠になる。議論の要旨は下記の通り。
1. 電力会社の成長戦略は大きく3つある。国内外のエネルギー産業やホテルや不
動産など他業種に幅広く投資するタイプ、通信事業と融合してサービス提供す
るタイプ、エネルギーに特化して燃料調達から販売まで一貫して行い、事業エ
リアの拡大を図るタイプだ。東電と中部電が新設・リプレースの火力事業を統
合したことは、最後のタイプの戦略を推し進めるものだ。
2. LNG火力が震災後に注目されるが、LNGは均等に配船供給され、需要に合
わせた調達が難しい。スポット市場で調達可能な量は限られる。常温で気体に
なるので貯蔵も難しい。だからピーク時は1kWh 当たり 15 円の石油火力に依存
している。これを同7円程度のLNGに置き換えられれば、原発停止による悪
影響を食い止められる。
3. LNGの柔軟な供給には、調達力を高める必要がある。購入規模の拡大と調達
先の多様化が必要だが、この二つは矛盾する。多様化すると購入規模が小さく
なるからだ。この問題を解決するには買主側が連携する必要がある。1プロジ
ェクトで生産されるLNGを丸ごと購入できると、採掘・液化事業といった上
流権益も獲得しやすくなる。
4. 地域間の送電網の整備・拡大は、多くの規制や地権者との調整にコストと時間
がかかる。簡単には進まない。送電網拡大よりも、各地域に発電所を建設した
方がコスト安になることも多い。
5. 電気料金の低下には発電効率を向上させることが欠かせない。1ポイントの改
善で年間 300 億円近い燃料費が削減できる会社もある。
6. 原発を維持するのであれば、エネルギー安全保障を担う公益電源としてリスク
もメリットも全国民が共有することが必要ではないか。事故時の賠償や政策変
更リスクがある原発は、競争電源として電力会社に任せていては、自由化の下
では維持できない可能性が高い。
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日本経済研究センター
エネルギー・環境の未来を語るラウンドテーブル
「エネルギー・環境の未来を語るラウンドテーブル」メンバー
座長
岩田一政
日本経済研究センター理事長
座長代理
鈴木達治郞
日本経済研究センター特任研究員/長崎大学教授・核兵器
廃絶研究センター長
有識者
山地憲治
地球環境産業技術研究機構
植田和弘
京都大学大学院経済学研究科教授
橘川武郞
東京理科大学大学院教授
増田寛也
野村総合研究所顧問(元総務相・前岩手県知事)
伊丹敬之
東京理科大学大学院教授
竹内純子
国際環境経済研究所
小山
日本エネルギー経済研究所
堅
小西雅子
理事・研究所長
理事・主席研究員
常務理事・首席研究員
世界自然保護基金(WWF)ジャパン
気候変動・エネルギープロジェクトリーダー
枝廣淳子
環境ジャーナリスト
平田仁子
気候ネットワーク理事
日本経済団体連合会
経済団体
経済同友会
エレクトロニクス、エネルギー、化学、住宅、自動車関連、金融機関、
会員企業
商社、食品、IT、建設機械、エンジニアリング、建設、運輸・通信、
不動産など当センター会員企業 22 社
日本経済研究センター特任研究員/慶應義塾大学大学院
アドバイザー
小林光
事務局
小林辰男
日本経済研究センター主任研究員/政策研究室長
高地圭輔
日本経済研究センター主任研究員
特任教授・元環境事務次官
当ラウンドテーブルは、月1回のペースで開催、忌憚ない意見交換を促すため非公
開を原則とするチャタムハウスルール 1* で運営しています。
本稿の問い合わせは、研究本部(TEL:03-6256-7730)まで
※本稿の無断転載を禁じます。詳細は総務・事業本部までご照会ください。
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Chatham House Rule。英王立国際問題研究所に源を発する、会議参加者の行為規範である。
チャタムハウスルールを適用する旨の宣言の下に運営される会議においては、当該会議で得ら
れた情報を利用できるが、その情報の発言者やその他の参加者の身元および所属に関して秘匿
する(明示的にも黙示的にも明かにしない)義務を負うというルール。
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