天然ガス・水素の活用、インフラ整備がカギ

公益社団法人
日本経済研究センター
Japan Center for Economic Research
2015 年 1 月 7 日
天然ガス・水素の活用、インフラ整備がカギ
-サハリン-鹿島のパイプライン、4000 億円弱で敷設可能か-
日本経済研究センター
2014 年 12 月 18 日(木)に第 12 回会合を開き、シェール革命が進行する天然ガス
と地球温暖化対策やエネルギーの貯蔵法として期待が高まる水素について、普及がど
こまで進む可能性があるのか、討論した。パイプラインや水素ステーションなどのイ
ンフラ整備が普及の成否を握るとみられる。議論の要旨は下記の通り。
1. 2030 年のエネルギーミックスを考えると、6割の電源は火力発電になる。シェー
ル革命で価格が下がっている天然ガスの活用は重要になる。数年後には米国は年
間 7000 万㌧(日本の年間消費量は約 8000 万トン)輸出し、うち 3000 万㌧はア
ジアが輸入するだろう。米国はシェール・オイルも大量に産出しており、エネル
ギー価格決定の中心的な役割を果たすようになる。
2. 日本は、原油価格連動で液化天然ガス(LNG)を輸入しており、欧米に比べ割
高になっている。足元の原油の暴落で、割高価格は解消される方向だ。しかし恒
久的に解消するには、米国のシェールガスの輸入、パイプラインの整備が必要に
なる。シェールガスは4ドル/100 万 Btu(英国熱量単位)であれば、日本着で
原油換算 60 ドル/バレルになり、競争力がある。またサハリンの天然ガスを輸
入する「サハリン-石狩、苫小牧経由-茨城県・鹿島」のパイプラインは、3700
億円で敷設可能だろう。
3. 水素普及は、水素の供給コスト引き下げも課題だが、インフラ整備が不可欠だ。
水素ステーションと燃料電池自動車・バスの導入を同時に進めるということだ。
東京都は 25 年までに 10 万台の燃料電池車、80 カ所のステーションという計画だ
が、1 ステーション当たりの 2000 台くらいであればペイするが、それにはまだ届
かない。しかしステーションなしに燃料電池車の普及は進まないので、先に整備
を進めておく必要もある。日本ではステーションの整備に 5-6 億円かかるが、
欧米では半額と言われる。規制緩和を進めてコストを下げる必要がある。そのた
めにも「水素は危険」という懸念を払拭する努力も欠かせない。
4. 日本の水素戦略ロードマップでは、2030 年で市場規模 1 兆円、50 年に 8 兆円を
目指している。2030 年に水素で総発電量の 5%を賄うと、水素量にして 300 億㎥
となる。30 円/㎥とすると 9000 億円。さらに燃料電池自動車が 200 万台普及し
ているとすると、1 台当たり年間 1000 ㎥必要として総需要は 20 億㎥に達する。
自動車への充填を 50 円/㎥とすると 1000 億円。合わせて水素供給規模として 1
兆円となる。CO 2 の削減効果として石炭、石油、天然ガスの何を代替するかに
よって変わるが、2.5~3%にあたる(エネルギーの総量に占める割合は 2.5%)
http://www.jcer.or.jp/
- 1-
日本経済研究センター
エネルギー・環境の未来を語るラウンドテーブル
「エネルギー・環境の未来を語るラウンドテーブル」メンバー
座長
岩田一政
日本経済研究センター理事長
座長代理
鈴木達治郞
日本経済研究センター特任研究員/長崎大学教授
山地憲治
地球環境産業技術研究機構
植田和弘
京都大学大学院経済学研究科教授
橘川武郞
一橋大学大学院商学研究科教授
増田寛也
野村総合研究所顧問(元総務相・前岩手県知事)
伊丹敬之
東京理科大学教授・イノベーション研究科長
竹内純子
国際環境経済研究所
小山
日本エネルギー経済研究所
有識者
堅
小西雅子
理事・研究所長
理事・主席研究員
常務理事・首席研究員
世界自然保護基金(WWF)ジャパン
気候変動・エネルギープロジェクトリーダー
枝廣淳子
環境ジャーナリスト
平田仁子
気候ネットワーク理事
日本経済団体連合会
経済団体
経済同友会
エレクトロニクス、エネルギー、化学、住宅、自動車関連、金融機関、
会員企業
商社、食品、IT、建設機械、エンジニアリング、建設、運輸・通信、
不動産など当センター会員企業 21 社
小林光
アドバイザー
西岡幸一
事務局
日本経済研究センター研究顧問/慶應義塾大学教授・元環
境事務次官
日本経済研究センター研究顧問/専修大学教授・元日経コ
ラムニスト
小林辰男
日本経済研究センター主任研究員/政策研究室長
高地圭輔
日本経済研究センター主任研究員
当ラウンドテーブルは、月1回のペースで開催、忌憚ない意見交換を促すため非公
開を原則とするチャタムハウスルール 1* で運営しています。
本稿の問い合わせは、研究本部(TEL:03-6256-7740)まで
※本稿の無断転載を禁じます。詳細は総務・事業本部までご照会ください。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
〒100-8066
公益社団法人 日本経済研究センター
東京都千代田区大手町1-3-7 日本経済新聞社東京本社ビル11階
TEL:03-6256-7710 / FAX:03-6256-7924
1
Chatham House Rule。英王立国際問題研究所に源を発する、会議参加者の行為規範である。
チャタムハウスルールを適用する旨の宣言の下に運営される会議においては、当該会議で得ら
れた情報を利用できるが、その情報の発言者やその他の参加者の身元および所属に関して秘匿
する(明示的にも黙示的にも明かにしない)義務を負うというルール。
http://www.jcer.or.jp/
- 2-