日経アジアスカラシップ 研究活動報告 要約 人口変化とそれに伴う潜在

日経アジアスカラシップ
研究活動報告 要約
公益社団法人
日本経済研究センター
Japan Center for Economic Research
2015年1月19日
人口変化とそれに伴う潜在経済成長率:
中国と日本の比較
ルー・ヤン
中国社会科学院人口・労働経済研究所准教授
人口変動は直接・間接のルートを通じて一国の潜在成長率に影響を与えるかもしれ
ない。人口ボ-ナスの消滅は潜在成長率を引き下げるかどうかについては多くの先行
研究で議論されてきた。第6次人口センサスのデータによると、中国の人口は基本的
に大きく変わりつつある。それは日本の1990年代に見られた人口変動パターンと同じ
であることを示している。
本論文では日中両国について潜在GDP成長率をそれぞれ推計した。その結果、以下
の点が明らかになった。第1に20年前の日本と同様に、中国の潜在成長率は近い将来、
人口変動によって鈍化する。現行の一人っ子政策の緩和によっても、中国は潜在成長
率の低下を覆すことはできない。中国は2010年に人口ボーナスが消滅した時点でもま
だ中所得国であるが、日本は1990年の人口ボーナスが人口オーナス(負荷)に転換す
る時点ですでに高所得国だった。
これは2010年の中国と1990年の日本における最初の相違点である。第2の大きな違
いは、2010年の中国の人的資本は1990年の日本より劣っている点である。これは中国
がいわゆる中所得国の罠の危機に面していることを意味する。中国は1990年代初頭の
日本の教訓を学ぶべきである。すなわち、日本は人口ボーナスが消えた後も景気刺激
策により経済成長を目指すことに固執したが、結局、日本のバブル経済の崩壊後に引
き続いて起きたのは、いわゆる「失われた10年」である。
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