石油の国内需要、2030 年には半減の可能性も

公益社団法人
日本経済研究センター
Japan Center for Economic Research
2015 年 7 月 3 日
石油の国内需要、2030 年には半減の可能性も
-総合エネルギー産業への転換、迫られる-
日本経済研究センター
2015 年 6 月 18 日(木)に第 18 回会合を開き、国内石油産業の行方について討論し
た。人口減少や燃料転換、経済成長の鈍化に伴い、国内の石油需要量は 2030 年度には
半減する可能性もある。業界再編に加えて海外進出や総合エネルギー産業への転換が
生き残りには欠かせないだろう。議論の要旨は下記の通り。
1. 石油の国内需要は石油ショックが起きた 1973 年度から 85 年度までに省エネル
ギーの進展や原子力、石炭、天然ガスなどへのエネルギー転換で 20%以上減少
した。その後の景気回復もあり、90 年代半ばには 73 年度を上回る水準まで増加
したが、2013 年度(原発の稼働はゼロ)には 95 年度比で 20%以上減少してい
る。サービスなど経済活動にエネルギーを多く使わない産業が国内で台頭した
ことも大きな要因だ。また中東への依存度は 80 年代後半に 70%を切る水準まで
低下したが、現在は 80%を超えるレベルになっている。
2. 今後、石油需要は経産省は 2030 年度に 05 年度比で 40%減、40 年度に 50%減と
みているが、業界では 30 年度にも 05 年度比で半減するとの見方がある。国内
には 23 の製油所があるが、すべてを維持することはできない。国内は 17 社か
ら6社体制になっているが、今後も再編は進むだろう。
3. 生き残りには製油所の国際競争力の更なる向上に加え、総合エネルギー産業へ
転換することが必要になる。ナフサ等を原料にした化学製品を生産したり、よ
り高度な機能化学品の分野へ進出したりする必要がある。電力自由化を機会に
電力事業を拡大することも検討されている。またLNG(液化天然ガス)や石
炭といった他の化石燃料事業も強化している。水素も将来は有力だが、現状で
は経済性が厳しい状況にある。
4. 海外進出も課題だ。東南アジアで日本企業が油田やガス田開発に乗り出してい
る。例えば、JX日鉱日石エネルギーはマレーシア等で石油・天然開発を手が
けている。米国はCO 2 の貯留・回収の技術を使い、古くなった油田の増産に取
り組もうとしている。ただ米国の独立系の会社に比べても規模は小さい。
5. 石油業界の 2030 年度までの地球温暖化防止への取り組みは、温暖化ガスの削減
対策を施さなかった場合に比べて原油換算で 100 万㎘のエネルギー削減を石油
製品の製造段階で実現するというものだ。CO 2 に換算すると 270 万㌧(日本の
年間CO 2 排出量は 12 億㌧)になる。
- 1 -
日本経済研究センター
エネルギー・環境の未来を語るラウンドテーブル
「エネルギー・環境の未来を語るラウンドテーブル」メンバー
座長
岩田一政
日本経済研究センター理事長
座長代理
鈴木達治郞
日本経済研究センター特任研究員/長崎大学教授・核兵器
廃絶研究センター長
有識者
山地憲治
地球環境産業技術研究機構
植田和弘
京都大学大学院経済学研究科教授
橘川武郞
東京理科大学大学院教授
増田寛也
野村総合研究所顧問(元総務相・前岩手県知事)
伊丹敬之
東京理科大学大学院教授
竹内純子
国際環境経済研究所
小山
日本エネルギー経済研究所
堅
小西雅子
理事・研究所長
理事・主席研究員
常務理事・首席研究員
世界自然保護基金(WWF)ジャパン
気候変動・エネルギープロジェクトリーダー
枝廣淳子
環境ジャーナリスト
平田仁子
気候ネットワーク理事
日本経済団体連合会
経済団体
経済同友会
エレクトロニクス、エネルギー、化学、住宅、自動車関連、金融機関、
会員企業
商社、食品、IT、建設機械、エンジニアリング、建設、運輸・通信、
不動産など当センター会員企業 22 社
小林光
アドバイザー
西岡幸一
事務局
日本経済研究センター特任研究員/慶應義塾大学大学院
特任教授・元環境事務次官
日本経済研究センター研究顧問/専修大学教授・元日経コ
ラムニスト
小林辰男
日本経済研究センター主任研究員/政策研究室長
高地圭輔
日本経済研究センター主任研究員
当ラウンドテーブルは、月1回のペースで開催、忌憚ない意見交換を促すため非公
開を原則とするチャタムハウスルール 1* で運営しています。
本稿の問い合わせは、研究本部(TEL:03-6256-7730)まで
※本稿の無断転載を禁じます。詳細は総務・事業本部までご照会ください。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
〒100-8066
公益社団法人 日本経済研究センター
東京都千代田区大手町1-3-7 日本経済新聞社東京本社ビル11階
TEL:03-6256-7710 / FAX:03-6256-7924
1
Chatham House Rule。英王立国際問題研究所に源を発する、会議参加者の行為規範である。
チャタムハウスルールを適用する旨の宣言の下に運営される会議においては、当該会議で得ら
れた情報を利用できるが、その情報の発言者やその他の参加者の身元および所属に関して秘匿
する(明示的にも黙示的にも明かにしない)義務を負うというルール。
- 2 -