スクラップから高品質な鉄鋼-電炉で自動車向け鋼板も可能に

公益社団法人
日本経済研究センター
Japan Center for Economic Research
2015 年 9 月 18 日
スクラップから高品質な鉄鋼
-電炉で自動車向け鋼板も可能に-
日本経済研究センター
2015 年 9 月 7 日(月)に第 20 回会合を開き、専門家を招いて電炉を使った高品質な
鉄鋼の可能性について議論した。今後大量に発生する老廃スクラップ(ビルの解体な
どで発生するスクラップ)から技術的には自動車用の高品質な鋼板を生産できるとい
う。高品質な鉄鋼を電炉で量産できれば、エネルギー消費量・CO 2 排出量を大きく削
減できる。議論の要旨は下記の通り。
1. 日本の粗鋼生産は高炉メーカーが4分の3を占める。同生産の内需は6割で、
残りは輸出に回っている。欧米先進国は、鉄スクラップを原材料にする電炉が
国内生産の 50%前後を占める。欧米では電炉で生産した鉄も、家電や自動車で
使われている。特に米国ではニューコア社を筆頭に電炉が粗鋼生産の6割に達
している。
2. ビルや工場などの解体で発生する鉄スクラップ(老廃スクラップ)からは、建
設向けの棒鋼などは生産できるが、自動車向けの品質の高い鋼板(高張力綱)
の生産は難しいとされている。しかし技術開発によって高炉生産と遜色ない製
品を試作できるようになっている。スクラップが含む不純物の銅による脆化が
発生するとされていたが、含有率が 0.3%までであれば、発生しないことがわか
ってきたからだ。電炉で生産可能になれば、発生するCO 2(エネルギー消費量)
は3分の1から4分の1になる。
3. 高品質な鋼板が生産できれば、現在の高い電気料金でも採算が合う。例えば自
動車向け鋼材のうち、約5割を構成する骨格系部材は電炉が占めることが可能
ではないだろうか。また現在は高炉生産が独占する「めっき鋼板」
(自動車や電
気機器で利用)の分野にも家電を端緒に参入できるだろう。
4. 国内には 13 億㌧の鉄鋼が蓄積されており、中国でも 2020 年には 100 億㌧、韓
国でも 7.5 億㌧に達する。現在は中韓では、スクラップが足りず、日本から年
間 700 万㌧程度輸出されているが、高度成長が一段落すると、東アジアから大
量の鉄スクラップが発生する。特に老廃スクラップは大量に余る時代がやって
くる。現在はスクラップ価格が高く、鉄鉱石の価格は世界経済の停滞によって
安くなっているが、この状態が継続することはないだろう。
5. 自動車は高額商品で消費者の見る目は非常に厳しい。燃費、再生材の質・量、
デザインなど様々な項目を気にしている。ただ、環境分野に重きを置いて製品
を選別する消費者が徐々に増えてきている。
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日本経済研究センター
エネルギー・環境の未来を語るラウンドテーブル
「エネルギー・環境の未来を語るラウンドテーブル」メンバー
座長
岩田一政
日本経済研究センター理事長
座長代理
鈴木達治郞
日本経済研究センター特任研究員/長崎大学教授・核兵器
廃絶研究センター長
有識者
山地憲治
地球環境産業技術研究機構
植田和弘
京都大学大学院経済学研究科教授
橘川武郞
東京理科大学大学院教授
増田寛也
野村総合研究所顧問(元総務相・前岩手県知事)
伊丹敬之
東京理科大学大学院教授
竹内純子
国際環境経済研究所
小山
日本エネルギー経済研究所
堅
小西雅子
理事・研究所長
理事・主席研究員
常務理事・首席研究員
世界自然保護基金(WWF)ジャパン
気候変動・エネルギープロジェクトリーダー
枝廣淳子
環境ジャーナリスト
平田仁子
気候ネットワーク理事
日本経済団体連合会
経済団体
経済同友会
エレクトロニクス、エネルギー、化学、住宅、自動車関連、金融機関、
会員企業
商社、食品、IT、建設機械、エンジニアリング、建設、運輸・通信、
不動産など当センター会員企業 22 社
日本経済研究センター特任研究員/慶應義塾大学大学院
アドバイザー
小林光
事務局
小林辰男
日本経済研究センター主任研究員/政策研究室長
高地圭輔
日本経済研究センター主任研究員
特任教授・元環境事務次官
当ラウンドテーブルは、月1回のペースで開催、忌憚ない意見交換を促すため非公
開を原則とするチャタムハウスルール 1* で運営しています。
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チャタムハウスルールを適用する旨の宣言の下に運営される会議においては、当該会議で得ら
れた情報を利用できるが、その情報の発言者やその他の参加者の身元および所属に関して秘匿
する(明示的にも黙示的にも明かにしない)義務を負うというルール。
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