公益社団法人 日本経済研究センター

公益社団法人
日本経済研究センター
Japan Center for Economic Research
2015 年 4 月 2 日
データ立国への課題
-具体的なメリットの提示で規制強化のスパイラル回避へ-
日本経済研究センター
研究本部
2015 年 3 月 16 日(月)に第 6 回会合を開き、「わが国の産業におけるデータの重要
性」をテーマにインターネット業界の専門家を招き、討論を行なった。制度整備にあ
たっては、消費者の生活が具体的にどう良くなるのかを示すことで、事故と規制強化
のスパイラルから抜け出し、データ利活用を成長機会に繋げることが求められる。議
論の要旨は下記の通り。
1. 端末やセンサーなどから集められる膨大なデータが新たな価値を生み出しており、
データを上手く活用する企業は、今後の成長期待からグローバルな時価総額ランキ
ングでも上位を占めている。人工知能の進化はこの趨勢を加速するだろう。日本の
目下の課題は、①制度整備、②データセンターの整備、③データサイエンティスト
とエンジニアの確保、が挙げられる。
2. 特に制度整備について、今国会で改正が予定されている個人情報保護法では第三者
委員会の設置が予定されている。これは厳格な情報管理を目指すマイナンバー法に
基づく第三者委員会が母体となっており、欧州型の厳格なルール整備を指向する可
能性がある。但し、欧州の制度をコピーすることに合理性は薄いのではないか。一
見厳格な制度を持つ欧州も、対極にある米国とはセーフハーバー協定を結び、南米
など歴史的に経済関係が深い諸国に対しては柔軟に十分性を認定している。戦略性
を持った制度整備が必要であり、データ利用に積極的であるべきだ。
3. マイナンバー法は、番号の管理を民間にさせた上で漏洩時の直罰を設けており、コ
ストと危険を民間にばら撒いている面があり、特に小規模事業者の負担は大きい。
今後、不要情報削除の努力規定が一般ルールとして広がれば、実務的にはさらに大
きな負担となる可能性がある。しかし、この背景には、昨今大きなニュースとなっ
た個人情報の漏洩事故などがあり、データ活用の戦略的重要性とか対策の実務的負
担を強調するのみでは、漏洩と規制強化の連鎖が止まらない。官は民間に大きなリ
スクを負わせるような制度整備を避け、民間は消費者に対してデータ利活用のメリ
ットを具体的に提示することが重要だ。
4. 産業界におけるデータ利活用は米国に遅れを取っている。日本では、データで売り
上げが伸ばせるという認識が弱く、社内の根回しが最大の障壁であるという状況だ。
これは、日本企業のマーケティングへの取組みの弱さや、経営トップからの ICT の
距離の遠さなどが原因だと見られる。また、2000 年以降の日本の経済状況を反映
して、経営も過度に内向きになっているのかもしれない。各社の実情に合わせた具
体的な提案、経営戦略に関与する CIO の設置といった組織改革などが対策として考
えられる。
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日本経済研究センター
情報通信技術が変える経済社会研究会
情報通信技術が変える経済社会研究会
座長
有識者
経済団体
メンバー
岩田
一政
公益社団法人日本経済研究センター理事長
浅見
徹
東京大学大学院情報理工学系研究科教授
奥和田久美
科学技術振興機構シニアフェロー
高口
鉄平
静岡大学大学院情報学研究科准教授
実積
寿也
九州大学経済学研究院教授
篠崎
彰彦
九州大学経済学研究院教授
日本経済団体連合会
エレクトロニクス、自動車関連、IT、小売、流通など会員
企業等 10 社
企業
オブザーバー
アドバイザー
NHK、総務省
鈴木達治郎
日本経済研究センター特任研究員/長崎大学
教授
高地
圭輔
日本経済研究センター主任研究員
小林
辰男
事務局
同
上
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