産婦人科領域における6059-Sの 臨床的検酎 湯 浅 - 日本化学療法学会

918
NOV.
CHEMOTHERAPY
産 婦 人 科 領 域 に お け る6059-Sの
1980
臨床 的検酎
湯 浅 充 雄
姫路赤十字病院産婦人科
Oxacephem系
1)性
抗 生 物 質6059-Sに
器 感 染症,帝
g,1日2∼5回,静
1例,有
べ21株
MIC
関 す る臨床 的 検 討 を行 な い以 ドの結 果 を 得 た。
切後 の創 傷感 染 症 及 び子 宮頸 癌 術 後 の尿 路 感染 症 計24例
脈 内 もし くは筋 肉内へ 投 与 し,著 効17例,有
や 有効1例,無
効
効 率91.7%の
極 めて す ぐれ た成 績 を 得 た。 細 菌学 的に は,24症 例 中18例 か ら8種 類の
の 原 因 菌が 検 出 され,20株
が 消失(消 失率95.2%)し
た。 存 続 した1株 は,本 剤 に対 す る
200μg/mlのP.aeruginosaで
2)副
効5例,や
に本 剤 を1回1∼2
あ った。
作 用 に 関 して は,特 記 すべ き もの は 認 め られ なか った。 筋 注 例 に おけ る局 所 部位 の 変化 も特
に認 め られ な か った 。 臨床 検 査値 に異 常 を示 した症 例 も存 在 しなか った。
3)木 剤 は 従来 の β-lactam系 抗 生物 質 に比 し,す ぐれ た 治療 効 果 が え られ る安 全性 め 高 い薬剤 で
あ る と結 論 され る。
緒
脈 内 も し くは 筋 肉 内へ施 行 した 。
言
臨床 効 果 に つ いて は,本 剤投 与 開始 後 きわ めて速 やか
6059-S:(6R,7R)-7-(2-carboxy-2-(4-hydroxyphenyl)
acetamido)-7-methoxy-3-((1-methyl-1
に 自他 覚 所 見 の改 善 を認 あ 本剤 中 止 後 も症 状 の再燃 をみ
H-tetrazol-5-yl-
thio)methyl)-8-oxo-5-oxa-1-azabicyclo(4.2.0.)oct-2ene-2-carboxylic
acid
disodium
salt
所 で 開 発 され た新 規 なOxacephem系
phem系
は,塩 野義製薬研究
抗 生 物 質 で あ る。Oxace-
抗 生物 質 は,そ れ に 対応 す るCephalosporin系
質 に比 して そ の抗 菌 力 が4∼8倍
優 れ て い る とい う特 長 を 有 し
て い る とい わ れて い る1)。 本 剤 は,さ
加 え て,従
抗生物
来 のCephalosporin系
ら に側 鎖 に 化学 的修 飾 を
抗 生 物 質 に抵 抗 性 のindole
(+)Proteus,Citrobacter,Enterobacter,Serratiaお
よび 嫌
気 性 菌 に対 して 強 力 な 抗菌 力 を 有 し,し か もP.aeruginosaに
対 して も抗 菌 力 を 有 す る広 範 囲 な 抗 菌 スペ ク トラム を持 って お
り,か つ,β-lactamaseに
わ れ て い る2)。 また,本
対 して も安 定 な抗 生 物 質 で あ る とい
剤 の 吸収 ・排 泄 等 に 関 す る研 究 で は,
そ の体 内動 態 はCefazolin(CEZ)の
そ れ に 類 似 してい る と い
な い場 合 を 著効,明
らか に 自他 覚 所見 の改 善 を認 めた場
合 を有 効,自 他 覚 所見 の 改 善 を認 めて も本 剤 中止後直 ち
に症 状 の 再燃 を み た場 合 を やや 有効,自 他 覚所 見の改善
が 認め られ ない 場合 を無効 と判 定 した。 なお,原 因菌が
検 出 しえ た症 例 に つ いて は,そ の消 長 に よ り細 菌学 的効
果 を消 失,減 少,菌 交 代,不 変 と判 定 した。同 定 した原
因 菌 に つ いて は,可
(MIC)を
能 な限 り本 剤 の最 小 発育 阻止濃度
日本 化 学療 法 学 会標 準 法4)に 基 づい て測定 し
た。
臨 床効 果 の判 定 と平 行 して,本 剤 の副 作 用有 無の観察
並 び に 臨床 検 査値 へ 及 ぼす 影 響 につ いて も併せ て実施 し
た。
わ れ て い る3)。
臨 床 成
績
今 回,本 剤 を産 婦 人 科 領 域 に お け る 各 種 感 染 症 に使 用 す る機
性 器感 染 症(含 外 性 器感 染)12例
会 を 得 た ので 以 下 報 告 す る 。
研
対 象 と した症 例 は,昭
究 対
象
和54年5月
か ら昭 和55年
に対 す る6059-Sの
成 績 概 要 をTable
1に 示 す 。 外 陰部 膿瘍4例
は,著 効3例,有
効1例
と も菌 の消 失 を認 め た。 有 効 と した1例
1月 ま で の間 に,当 産 婦人 科 入院 の 外 陰部 膿 瘍4例,
P.aeruginosaが
バ ル トリン腺 膿瘍1例,骨
消 失 な らびに 除菌 に要 した期 間 も他 の3例
織 炎2例,子
感 染2例,主
10例,計24症
盤腹 膜 炎4例,子
宮 内 膜炎1例,帝
宮 労結 合
王切 開 分娩 術 後 の 創傷
と して 子 宮頸 癌 術 後 に発 症 した尿 路感 染
例 で あ る。
に対 して
で あ り,細 菌 学 的 には,4例
は,膿
汁から
分 離 され た 症例 で あ り,自 他 覚所 見の
日数 を 要 した。 バ ル トリ ン腺 膿瘍 の1例
有 効 で あ り検 出 したE.coliも
に 比 し若 干
は,臨
床 的に
消 失 した。 骨 盤腹 膜炎4
例 に対 して は,全 例 術 後 で重 篤 な状 態 で あ った のに もか
か わ らず,自 他覚 所 見 の改 善 が 速 やか で あ り全例 著効 と
研
6059-Sの
投 与 は,1回
究 方
法
量1∼29,1日2∼5回,静
判 定 した。 子 宮 労結 合 織 炎2例
の 消 退が 極 め て速 や か で あ り2例
に対 して も,感
染症 状
と も著効 と判 定 した。
VOL.
28
S-7
CHEMO
THERAPY
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CHEMOTHERAPY
細 菌学 的 に は.S.aureusを
証 明 しえ た1例
の 消失 を み た。 子 宮 内膜 炎 の1例
において菌
は,分 離菌 で あるE.
coliの 消失 を み た もの の 自他覚 所 見 の消 退 までに1週
間 を要 した ため 有効 と判 定 した。
帝 切 術 後の 創 傷感 染2例
に対 しては,3日
目までに
感 染 症 状の 消 退 が 認め られい ず れ も著効 と判 定 した。 う
ち1例
は,褥 創か ら分 離 され たP.mirabilisの
み て い る(Table
消失 を
2)。
主 と して 子宮 頸 癌 術 後に 発生 した尿 路感 染症(腎 孟腎
炎9例,膀
胱 炎1例)10例
有 効2例,や
や 有 効1例,無
に対 して は,著 効6例,
効1例
であ った。細菌
学 的 には,全 例 の 尿 中か らグ ラム 陰性桿 菌 を 中心 とした
細 菌を 検 出 した が,MIC200μg/mlのP.aeruginosa
1
株 を 除 い て 全 株 消 失 した。 治療 後 も存 続 したP.aeruginosaの 症 例 は 臨床 的に も無 効 で あ った。 な お,尿 路
感 染 症 に対 す る本剤 の 成績 概 要 は,Table
研 究 対 象 と した24症
3に 示 した。
例 中,特 記 すべ き副 作用 は1例
も認 め られ な か った 。 筋注 例 に おけ る局所 部位 の変化 も
特 に 認 め られ な か った。 また,臨 床検 査 値(末 梢 血液所
見,肝
・腎 機 能 所見)に 異 常 を示 した症 例 も存 在 しなか
っ た(Table
4)。
考
最 近,多
案
くの新 薬 が 開発 途 上 に あ る β-lactam系 抗生
物 質 の 中 で,本 剤 はそ の 化学 構造 上 従来 のCephalosporin骨 格 の 硫 黄原 子(S)を
酸 素原 子(O)で
置 換 した ユ
ニ ー クな新 規 抗 生物 質 で あ り,我 々の 領域 で問 題 となる
グ ラム陰性 桿 菌 な らびに嫌 気 性 菌 に対 して 広範 囲 なスペ
ク トラ ム と強 い 抗菌 力 を 有 して お り,か つ,臓 器移 行性
も良 好 の よ うで あ る5)。
今 回,対 象 と した性 器 感染 症(含 外性 器 感染 症)12例
は,そ の ほ とん どが他 剤 無効 例 で あ り重篤 な症例 も含ま
れ て い るに もか か わ らず 全 例 有効 以上(著 効9例,有
効3例)と
い う極 めて す ぐれ た 臨床 効 果 が認 め られ,
上 述 の本 剤 の特 長 が少 数 例 で は あ るが裏 付 け られた と考
え られ る。 投 与)量の 観点 か らは,外 性器 感 染症 は1日2
g以 下 の 分2投
与 で 充分 その 治療 効 果 は 期待 で きる と
思 わ れ る。 子 宮 内 お よび骨 盤 内 感染 症 に おい ては,今 回
の 自験 例 が 他 剤無 効 の 重篤 例 が 多か ったた め1日
量 も2∼6gを
投与
要 した 結果 とな っ たが,そ の 点を 考慮す
れ ば 一 般 的に は さ らに 投 与量 を 減 じて も充分 な 治療効果
はえ られ る と推 察 され る。 現 に,諸 家の 報 告で も1日2
g投 与 が そのmain
doseと
な って い る5)。
一 方 ,細 菌 学 的 効 果 に関 して は,24症
ら8種
類 の べ21株
例 中18例
か
の原 因 菌 が検 出 され,う ちMIC
200μg/mlのP.aeruginosa
1株 が 存 続 し たの みで他 の
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CHEMOT
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以 上 の 観点 か ら,本 剤6059-Sは
全株は消失 した とい う極 めて す ぐれ た もの で あ り,本 剤
従 来 の β-lactam系
の抗菌力に関 す る諸家 の 基礎 的研 究5)を 裏 づ け る もの で
抗 生 物 質 に比 し,極め て す ぐれ た 治 療効 果が え られ,か
ある。本剤の抗 菌力 が比 較 的劣 ると され て い た グ ラム陽
つ,安 全 性 の 高 い葉 剤 で あ る と考え られ る。
性菌4株 もすべ て消 失 して お り,自
験 例 か らの 判 断 で
文
はグラム陽性菌 感染 症 に対 して も本 剤 は,グ ラム陰 性 菌
同様,充 分に その効 果 を発 揮 し うる と思 わ れ る。 また,
グラム陰性菌 中,本
1)
剤 に対 して比 較 的抵 抗性 で あ るP.
aeruginosaに対 して は,3株
中2株
NARISADA,
M.;
antibiotics.
Part
が 消 失 して お り,
(4
methyl
れる。
dethla
的困難ではあ るが)に
2)
き有力な抗生 物 質で あ る と思 わ れ る。
S.
5
cephem
4
3)
のほとんど
- yl)
on ƒÀ
-•k2
1
disodium
J.
- 2 -
- 3
thio•l-methyl•lacid
- lactam
-carboxy
methoxy
1 -oxacephems.
T.;
M.
NARISADA,
KUWAHARA
:
S.
6059
- •k•k(1
- oxa
salt
Med.
-
- 1 (6059
Chem.
Oct.
2
1978
S.;
HARADA
T.
&
S.
MATSUURA,
S,
(1)
MATSUURA,
M.
-7ƒ¿-
carboxylic
related
7ƒÀ
22
:
1979
ICAAC,
れ らが 無効 の 症 例 に対 し
studies
of
acetamido•l
1 -oxacephalosporin
本剤に よる 治療 開 始前 の 使 用抗 生 物 質 は す べ て β-
が 有効以上 で あ る とい う事 実 か ら,本
Synthetic
Synthesis
tetrazol-
its
YOSHIDA,
&
て用いたに も か かわ らず 本 剤 の 効 果 は,そ
3
and
757•`759,
が,そ の抗菌力か ら して 嫌 気 性 菌感 染 症 に は,試 み るべ
lactam系 抗 生物 質 で あ り,そ
- 1H-
S)
本 荊 を 使用 す る機会 が な か っ た
al,:
10.
- hydroxyphenyl)
この菌に対 して も本 剤 の効 果 は 期待 で き る もの と推 察 さ
今回,嫌 気性 菌 によ る感 染症(嫌 気 性 菌 の検 出は比 較
et
献
a
new
W.
NAGATA
parenterally
Microbiological
active
studies.
18th
(Atlanta)
YOSHIDA,
K.
SUGENO,
KUWAHARA
6059-S,
a
Y.
HARADA,
new
parente-
剤 は 市 販 の βrally
active
1
- oxacephalosporin
(2)
Pharmacological
lactam系 抗生物 質 とは交叉 耐 性 を 有 しな い と推 察 され,
studies.
このことは本 剤の 大 き な利 点 と考 え られ る。
4)
本剤筋注時 に おけ る局 所 部位 の 変 化 は特 に 認 め られ な
5)
第27回
れば,本 剤の筋 注 投与 は可能 と考 え られ る。
STUDIES
ON
6059-S
Clinical
tained
studies
were
1.
6059-S
2 cases
with
operation
fects
as
of
IN
THE
Of
was
a
novel
intravenously
infections
cervical
cancer,
were
excellent
rate
21
6059-S,
Obstetrics
FIELD
and
parenteral
2,
1978
(Atlanta)
OF
1126∼1128,
日本 化学 療 法 学 会 西 日本 支 部 総会
定法改討
1974
新 薬 シ ンポ ジ
阪)
OBSTETRICS
AND
GYNECOLOGY
YUASA
Gynecology,
Himeji
oxacephem
antibiotic,
Red
Cross
were
Hospital
carried
out
and
the
results
was
strains
or
intramuscularly
caused
totally
in
24
17
administered
cesarean
cases,
section
cases,
at
good
and
a daily
in
5 cases,
to
10
dose
cases
of
fair
cases
with
2•`6
in
12
g
for
1 case
with
genital
urinary
3•`10
and
organ
tract
days
poor
in
infections,
infections
and
1
the
case.
caused
clinical
ef-
Clinical
ef-
200 ƒÊg/ml),
re-
95.2%.
isolated
from
patients,
20
were
disappered
and
only
1,
P.
aeruginosa
(MIC
mained.
2.
No
3.
6059-S
antibiotics.
ob-
follows:
wound
obtained
fectiveness
on
of
Oct.
ウ ム6059-S。1979(大
MITSUO
Department
ICAAC,
に つい て 。Chemotherapy22:
いことか ら,症 例 を限 定 し,投 与 量 ・投 与 期 間を 制 限 す
CLINICAL
18th
日本 化 学 療 法学 会: 最 小 発 育阻 止 濃 度(MIC)測
adverse
was
effect
evaluated
and
abnormal
to
be
laboratory
a
useful
findings
and
safe
were
antibiotic
observed.
comparing
to
the
prevailing ƒÀ-lactarn