運動器カテーテルレポート 整形外科・放射線科 奥野祐次 広義の肩関節周囲炎に対して腱板疎部の異常血管を治療することで改善した症例 患者背景 診断:肩関節痛(広義の肩関節周囲炎) 症状:右肩痛、右上肢しびれ 糖尿病にて通院中。約半年前からの右肩痛があり、特に外旋および内旋動作時に疼痛が顕著に生じるよ うになった。ステロイド関節内注射で改善せず。来院時の身体所見では AE: 140/150 ER: 30/40 IR: B/Th8(右/左)であり、右烏口突起に圧痛を認めた。腱板疎部および烏口突起基部の脂肪体の異常血管の 増殖を想定してカテーテル治療を施行した。塞栓物質はイミペネム・シラスタチンを用いている1。 画像所見 同側の橈骨動脈から穿刺した。腋窩動脈から直接分岐し肩関節前方に向かう血管(Direct Branch と呼ぶ) を、選択的血管撮影したところ腱板疎部およびその周囲組織に異常な血管増生を認めた(Fig1a、b=正 面像、Fig1c=側面像)。同部位から塞栓物質を投与した。塞栓剤投与前の血管撮影では異常な血管の濃 染と静脈早期描出を認めたが、投与後には見られなかった(Fig1d)。 図1a 図1b 図1c 治療後の経過および考察 治療後すぐに除痛は得られなかったものの、徐々に 疼痛症状は改善し、治療 1 ヵ月後には日常生活では 図1d 気にならないレベルまで低下した。同時期に烏口突 起の圧痛も消失している。1 か月後の内旋可動域は L2まで改善した。今後も経過を追う予定である。 狭義の肩関節周囲炎(Adhesive Capsulitis)は「前方挙 上 100 度以内、外旋は健側の半分以下、夜間痛あり」 の条件がある。われわれは今までに狭義の AC に血 管撮影を行い、全例で腱板疎部に異常血管を認め、 塞栓物質の投与により効果を得ている(現在、論文 投稿中)。一方でこの条件を満たさないものの肩関 節の疼痛症状を主訴にする患者は多く、広義の肩関 節周囲炎と呼ばれることもある。特に内旋制限を訴 える患者が多い。本症例のようにACの範疇にない 広義の肩関節周囲炎においても同じように烏口突 起の圧痛と腱板疎部に異常血管を認め、塞栓治療に より良好な結果を得ている(n=10)。腱板疎部の炎 症が多くの肩痛に関連している可能性がある。 参考文献 1)Okuno Y, Matsumura N, Oguro S. Transcatheter arterial embolization using imipenem/cilastatin sodium for tendinopathy and enthesopathy refractory to nonsurgical management. J Vasc Interv Radiol 2013; 24:787-92. doi:10.1016/j.jvir.2013.02.033
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