CHEMOTHERAPY FKO37の 抗菌力 と臨床成績 - 日本化学療法学会

OCT.
CHEMOTHERAPY
140
FKO37の
1994
抗 菌 力 と臨床 成 績
齋
藤
玲
北海道大学医療技術短期大学部
富
澤
磨須美
札幌社会保険総合病院内科
現:北 央病院内科
中
山
一
朗
札幌鉄道病院第一内科
現:新 札幌パウロ病院内科
佐
藤
清
北海道大学医学部附属病院検査部
FKO37は
新 し い 注 射 用 セ フ ァ ロ ス ポ リ ン系 抗 生 物 質 で あ る。本 剤 の 各 種 臨 床 分 離 株 に対 す る
抗 菌 力 と 臨 床 成 績 に つ い て 検 討 し た 。 臨 床 分 離 の7菌
CFU/ml接
種 で 測 定 し,対
照 薬ceftizoxime
種239株
(CZX),
に つ い てFKO37
ceftazidime
(CAZ),
のMIC
cefixime
を106
(CFIX)と
比較 した。
MIC90で
み る とmethicillin-sensitive
cillin-resistant
S.aureus
を 示 し た 。Escherichia
Staphylococcus
(MRSA)は12.5μg/mlで
coli,
Klebsiella
aureus
あ り,対
Pneumoniaeに
対 し て は,全
対 照 薬 よ り 同 等 も し く は 優 れ る 成 績 で あ っ た 。Servatia
mirabilisは0.2μg/mlでCAZと
S.marcescensで
は 優 れ て い た 。Morganella
た 。Pseudomonas
aeruginosaは100
細 菌 性 肺 炎4例(マ
次 感 染1例,陳
4∼15日
ほ ぼ 同 等,CZX,
間 点 滴 静 注 し,臨
学 的 に はStreptococcus
さ れ,全
下 で あ り,
Protezis
はP.mirabilisで
若 干 劣 る もの の
対 照 薬 よ り優 れ て い
り若 干 劣 る抗 菌 力 で あ っ た 。
イ コ プ ラ ズ マ 肺 炎 と の 合 併 例 を1例
陳 旧性 肺 結 核 再 燃 例 の1例
株0.1μg/ml以
morganiiは1.56μg/mlで
の8例
methiも強 い 抗 菌 力
marcescensは3.13μg/ml,
CFIXと
μg/mlでCAZよ
旧 性 肺 結 核 の 再 燃 例1例
(MSSA)は0.78μg/ml,
照 薬 剤 に 比 較 し,最
に 対 し,
含 む),慢
性 気 管 支 炎2例,珪
FKO37を1回0.5∼2.09
肺 の二
を1日2回,
床 的 検 討 を行 っ た 。
を 除 い た7例
pneumoniae
で の 臨 床 効 果 は著 効1例,有
2株,Haemophilus
効6例
であ った。細 菌
influen2ae2株,Ecoli1株
が検 出
株 消 失 し た。
副 作 用 は 全 例 に認 め ら れ ず,臨
床 検 査 値 異 常 と して 白 血 球 数 減 少 とGPT上
昇 が 各1例
認 め
られ た 。
Key
FKO37は
words:
FKO37,抗
菌 力,臨
床効 果
藤 沢薬品工業株式会社 において開発 された注
射 用 セ フ ァロ ス ポ リ ン剤 で あ り,3位
ゾール 基 を,7位
側 鎖 に ア ミノ ピ ラ
側 鎖 にア ミノ チア ゾール 基 と メ トキ シイ
に お いて も優 れ た効 果 が 認 め られ て い る鋤 。 本 剤 の抗 菌 力
お よび 内科 感 染 症 に対 す る臨床 効 果 に つ い て検 討 を行 った
の で報 告 す る。
ミノ基 を配 した構 造 を有 す る。 本 剤 は ブ ドウ球 菌 を含 む グ
ラ ム陽性 菌 か ら,緑 膿 菌 を含 む グ ラム陰 性 菌 まで 幅 広 い 抗
菌 力 を有 してい る1,2)。
また,本 剤 は各 種 β-ラ クタ マ ーゼ に
対 して非 常 に安 定 で あ り,in
* 〒060
札 幌 市 北 区北12条
西5丁
vivoに お け る感 染 防御 効 果
目
I
1
方
法
抗菌 力
北 海 道 大 学 医 学 部 附 属 病 院 に お い て, 1992∼1993
年 に 臨 床 検 体 よ り 分 離 さ れ たmethicillin-sensitive
VOL.42
S-3
FKO37の
Staphylococcus
aureus
resistant
27Š”,
S.
27Š”,
50Š”,
pneumoniae
Proteus
morganii
27Š”,
(MRSA)
Klebsiella
cens
(MSSA)
aureus
測 定 した。増 菌 用 培 地 と し
を 用 い た。 な お,oxacillin
μg/ml以
ま た,対
よ びcefixime
様 の 方 法 でMICを
な お,菌
作 所)を
(CZX),
(CFIX)に
cefta-
つ い て も同
久間 製
用 いた。
若 干 劣 る もの
は 優 れ て い た 。M.morganiiに
値 は1.56μg/mlで
あ り,対
つ
照 薬 よ り明
つ い て はMIC50
値 は100μg/mlと,CAZよ
り
り優 れ た 抗 菌 力 を 示 し た 。
臨床 成績
個 々 の 症 例 の 概 要 をTable2に
核 の1例(No.8)は,肺
示 し た。陳 旧 性 肺 結
結 核 の 再 燃 で あ っ た た め,臨
床 効 果 の 判 定 を 不 採 用 と し た 。 残 り7例
は 著 効1例,有
効6例
t∝o∝us
での臨 床効 果
で 全 例 に 効 果 が あ り,有
効率 は
あ っ た 。 細 菌 学 的 検 査 で はStreP-
Pneumoniae
2株,Ecoli
2. 臨 床 成 績
ほ ぼ
と はP.mirabilisで
若 干 劣 る が,CZX,CFIXよ
2.
は3.13
は0.2μg/mlでCAZと
CFIX
7例/7例(100%)で
測 定 した 。
接 種 は ミ ク ロ プ ラ ン タ ーMIT-P(佐
1992年5月
P.mirabilisで
ら か に 優 れ て い た0P.aeruginosaに
12.5
し て 分 類 し た0
照 薬 剤 と し てceftizoxime
つ い て はMICgo値
値 は50μg/ml,MICg。
ッス イ)
(MPIPC)のMICが
上 のS.aurezesをMRSAと
zidime (CAZ)お
ッ ス イ),
培 地 一N(ニ
μg/ml,
い て はMICg。
27Š”‚É‘Î
日 本 化 学 療 法 学 会 標 準 法50に 従 っ
測 定 用 培 地 と し て感 受 性Disk用
て い た 。S.marcescensに
の,S.marcescensで
Morganella
定 用 ・感 受 性 測 定 用 ブ イ ヨ ン(ニ
141
同 等,czx,
marces-
aeruginosa
て,接 種 菌 量106CFU/mlで
てMIC測
coli
Serratia
27Š”,
Pseudomonas
す る本 剤 のMICを
methicillin
Escherichia
27Š”,
mirabilis
27Š”,
抗 菌 力 と臨 床 成 績
1株
2株,HaemoPhilus
の 計5株
が4例
influenzae
で 分 離 さ れ,全
株 消
失 した。
か ら1992年12月
け た 感 染 症 患 者8例
まで に入 院 治療 を受
に つ い てFKO37の
行 った 。 症 例 は 細 菌 性 肺 炎4例(マ
との 合 併 例 を1例
含 む),慢
結核 の 再 燃 例1例
の8例
年 齢 は53∼76歳
イ コプ ラズマ肺 炎
性 気 管 支 炎2例,陳
旧性肺
で あ っ た 。男6例,女2例
で 平 均65.3歳,体
で 平 均52.4kgで
臨床 検討 を
で,
重 は41.8∼63kg
副 作 用 は 全 例 に認 め られ な か っ た 。 本 剤 投 与 前 後 に
お け る 臨 床 検 査 値 をTable3に
1)でWBCの
→4日
減 少(開
後:
2 ,600→7日
3)でGPTの
後:
者 の 同 意 に つ い て は全 例 口 頭 に て確 認 を 行 っ た0効 果
後:
上 昇(開
124→14日
後:
あ っ た 。な お,本 剤 の 使 用 に お け る 患
示 し た が,1例
始 前:7,100→2日
2,900/mm3)と1例
始 前:
42U)が
21→3日
3,900
(No.
後:
42→7日
認 め られ た 。
III. 考
FKO37は,ブ
(No.
後:
察
ドウ 球 菌 を含 む グ ラ ム 陽 性 菌 か ら緑 膿
判 定 は細 菌 学 的 効 果 と臨 床 効 果 で み た 。 細 菌 学 的 効 果
菌 を 含 む グ ラ ム 陰 性 菌 に 対 して 幅 広 い 抗 菌 力 を 示
は 喀痰 よ り 分 離 さ れ た 起 炎 菌 の 消 長 を み て,消
す1,2)。MRSAに
(eradicated),減
少(decreased),不
交 代(replaced)の4段
失
て 低 く,マ
変(persisted),菌
階 で 判 定 し た 。 臨 床 効 果 は 自他
覚 症 状 の 推 移 とWBC,
CRP,
察 して 著 効(excellent),有
ESRの
変 化 を観 察,考
効(good),や
や 有 効(fair),
無 効(poor)の4段
階 で 判 定 し た 。本 剤 使 用 中 の 副 作 用
に つ い て は,薬
剤 に よ る と思 わ れ る 症 状 を厳 重 に 観 察
した 。な お,本 剤 投 与 前 後 に 血 液 検 査(RBC,Hb,
WBC,好
GPT,
Ht,
酸 球 数,血 小 板 数 な ど),肝 機 能 検 査 (GOT,
ALPな
ど),腎 機 能 検 査(BUN,S-Crな
II. 結
1
を 示 す と い わ れ,β-ラ
ど)な
果
抗 菌力
我 々 の 検 討 に お い て もMSSA,
成 績 をTable1に
示 し
た。
対 す る抗
に 対 し てMICが25μg/ml以
上 を 示 す 耐性 菌 は認 め
ら れ な か っ た 。P.aeruginosaに
μg/mlか
あ り,CAZよ
対 し てMICg。
値 は
り若 干 劣 っ て い た が,1.56
ら感 受 性 を示 す 株 も あ り,有 効 性 の 期 待 され
る もの で あ っ た 。8例
の 呼 吸 器 感 染 症 に 本 剤 を1回
0.5∼2.0gを1日2回
の 点 滴 静 注 で,臨
旧 性 肺 結 核 の 再 燃 例 の1例
床的検討 を
を 除 き全 例 有
効 以 上 で あ り,分 離 菌 も全 株 消 失 し て お り,良 好 な 成
績 が 得 られ た 。
FKO37のMICg0値
は,MSSAで0.78μg/
ml,
副 作 用 は 認 め ら れ ず,臨
MRSAで12.5μg/mlで
あ り,他 の3剤
に比 べ 明 らか
球 数 減 少 とGPT上
に優 れ て お り,MRSAで
は25μg/ml以
上 の 耐 性菌 を
数 が 減 少 した 症 例 は,投
認 め な か った 。E.coli,
株0.1μg/ml以
MRSAに
菌 力 は対 照 薬 剤 に比 べ て 明 らか に優 れ て お り,MRSA
行 っ た が,陳
7菌 種 に つ い て のMICの
ク タマー ゼに安 定 でか つ親和 性
は 低 い3,4)。
100μg/mlで
どの 測 定 を行 っ た 。
対 し て は,高 度 耐 性 菌 出 現 頻 度 は極 め
ウ ス の 感 染 実 験 に お い て も優 れ た 治 療 効 果
KPneumontaeのMICは
下 で 他 の3剤
全
よ り 同 等 も し くは 優 れ
床 検 査 値 異 常 と し て,白
昇 が 各1例
血
に 認 め られ た 。 白血 球
与 前 の 脱 水 状 態 の 改 善 も関 与
して い る と思 わ れ,ま た,GPTの
上 昇 に つ い て も投 与
中 に改 善 傾 向 を 認 め て い る こ とか ら,臨 床 上,特
に問
Table
1.
Antibacterial
Table
BW : body
OCT.
CHEMOTHERAPY
142
weight,
DM : Diabetes
activity
2-1.
mellitus,
of FK037
Summary
*1 : patients
and
other
of 8 patients
in early
phase
antibiotics
treated
with
against
II study6), *2
clinical
1994
isolates
FK037
: patients
in dose-finding
study7)
VOL.42
S-3
FKO37の
Table
BW : body
weight,
DM : Diabetes
B: before
treatment
A:
after
2-2.
Summary
mellitus, *1
patients
143
抗 菌 力 と臨 床 成 績
of 8 patients
in early
phase
treated
with
II study6),
cephalosporin.
以 上 の こ と よ り,本 剤 は新 し い 注 射 用 セ フ ェム 剤 と
37:
4)
して 有 用 性 が 期 待 で き る 薬 剤 で あ る と考 え ら れ る。
文
Y,
FK037,
et
a
al
novel
phalosporin.
2)
3)
J
Mine
Y,
et
novel
parenteral
献
: In
vitro
46:
al : Excellent
46
and
H
C,
: 99•`119,
Chin
g-lactamase
71•`87,
activity
N,
Mine
Y,
et
a
FK037,
al
: In
novel
J
vivo
Soejima
therapy
cephalosporin,
7)
R,
for
Antibiot
et
al : An
46:
88•`98,
early
tract
: 1128•`1142,
副 島 林 造, 他(34施
activity
設):
29:
phase
infections.
of
In
FK037,
vitro
activity
a parenteral
1143∼1161,
1994
ce-
1993
定法
76∼79,
1981
II study
of
Chemo-
1994
FKO37の
細 菌性 肺 炎 にお け
る 至 適 用 量 検 討 試 験 。Chemotherapy
H:
of
broad-spectrum
最 小 発 育 阻 止 濃 度(MIC)測
respiratory
42
Chemother
antibacterial
parenteral
日 本 化 学 療 法 学 会:
FK037
a
J
Agents
再 改 訂 に つ い て 。Chemotherapy
6)
1993
stability
5)
ce-
Staphylococci.
Huang
of
1993
of
broad-spectrum
Antibiot
Neu
activity
broad-spectrum
Antibiot
methicillin-resistant
study7)
1993
ohalosoorin.
antibacterial
parenteral
against
in dose-finding
Antimicrob
566•`573,
FK037,
Mine
*2. patients
treatment
題 と な る も の で は な い と思 わ れ た 。
1 )
FK037
42:
OCT. 1994
CHEMOTHERAPY
144
Bacteriological
and clinical
Akira
studies
on FK037
Saito
College of Medical Technology, Hokkaido University
Nishi-5-chome, Kita-12-jo, Kita-ku, Sapporo 060, Japan
Masumi
Tomizawa
Department of Internal Medicine, Sapporo Social Insurance General Hospital
Present Address : Department of Internal Medicine, Hokuo Hospital
Ichiro Nakayama
First Department of Internal Medicine, Sapporo Tetsudo Hospital
Present Address : Department of Internal Medicine, Shin Sapporo Paul Hospital
Kiyoshi Sato
Clinical Laboratories, Hokkaido University Hospital
We
investigated
the
antibacterial
activity
and
clinical
efficacy
of
FK037,
a new
parenteral
cephem
antibiotic.
The
MICs
method
of
with
ceftazidime
ity
MIC90
S.
MICs
FK037
Serratia
of
Eight
patients
relapse
with
old
All
the
strains
isolated
MIC90
(2
of
other
were
compared
aureus
measured
with
using
those
of
a plate
dilution
ceftizoxime
Staphylococcus
(MRSA).
was
chronic
and
FK037
was
(CZX),
aureus
showed
treated
100 ƒÊg/ml,
(4 with
with
Streptococcus
pneumoniae,
MIC90
being
being
inferior
the
(MSSA)
strongest
activ-
by
was
similar
superior
to
secondary
that
0.5•`2.0
g b.i.d.
was
Haemophilus
3.13
to
to
other
of
CAZ.
drip
of
all
against
CAZ.
agents.
Against
complication
of
infusion
excellent
in
pg/ml
that
including
infection
tuberculosis,
2 of
were •…0.1 ƒÊg/ml
FK037
was
pneumonia;
1 with
old
of
and
pg/ml,
bacterial
FK037
excluded
pneumoniae
The
mirabilis,
1.56
bronchitis,
7 patients,
Klebsiella
agents.
Proteus
MIC90
infections
were
in
of
against
the
2 with
evaluation
coli
those
respiratory
tuberculosis)
clinical
7 species
methicillin-sensitive
S.
0.2 ƒÊg/ml
pneumonia,
of
The
against
Escherichia
to
morganii,
aeruginosa,
mycoplasinal
of
and
antibiotics.
superior
and
Morganella
Pseudomonas
isolates
CFU/ml,
0.78 ƒÊg/ml
against
or
marcescens
Against
106
methicillin-resistant
FK037
similar
clinical
of
(CFIX).
was
aureus
of
and
239
size
cefixime
against
against
The
and
of
12.5 ƒÊg/ml
strains,
against
inoculum
(CAZ)
The
and
FK037
an
for
in
influenzae,
of
silicosis,
4-15
1 and
1 of
1 with
good
E.
coli)
days.
in
eradicated.
No
seen
side
in
one
effects
each.
were
observed,
and
in
laboratory
findings,
leukopenia
and
elevation
of
GPT
6.
was
were