失業率は上昇も - 第一生命保険

Economic Indicators
定例経済指標レポート
テーマ:労働力調査・一般職業紹介状況(2015年1月)発表日:2015年2月27日(金)
~失業率は上昇も、内容は良好~
第一生命経済研究所 経済調査部
担当 主席エコノミスト 新家 義貴
TEL:03-5221-4528
(%)
5.6
5.4
5.2
5
4.8
4.6
4.4
4.2
4
3.8
3.6
3.4
3.2
09
(倍)
求人倍率の推移
(季節調整値)
(倍)
1.2
完全失業率(季節調整値)
1.9
1.8
有効求人倍率
1.1
1.7
新規求人倍率(右目盛)
1
1.6
1.5
0.9
1.4
0.8
1.3
1.2
0.7
1.1
0.6
1
0.9
0.5
10
11
12
13
14
0.8
15
0.4
(出所)総務省統計局「労働力調査」
(注)2011年3~8月は、補完推計値を用いた参考値
0.7
09
10
11
12
13
14
15
(出所)厚生労働省「一般職業紹介状況」
○ 失業率は上昇したが、雇用者数は順調な拡大傾向が続く
総務省から発表された2015年1月の完全失業率は3.6%と、前月から0.2%ポイント悪化した(市場予想:
3.4%)。ただこれは、労働力人口が増えた(労働参加率が高まった)ことで失業率が押し上げられている面
がある。就業者数、雇用者数は好調を持続しており、むしろ内容は良好な部類である。また、失業率は前月
から0.2ポイントの上昇だったが、小数点第2位以下まで計算すると14年12月が3.446%、15年1月が3.564%
である。四捨五入の関係で前月対比0.2ポイントの上昇となっているが、実際にはほぼ0.1%の上昇だ。今月
の失業率悪化を問題視する必要はないだろう。
1月の季節調整済みの就業者数は前月差▲2万人(14年12月:+26万人)、雇用者数は前月差▲3万人
(14年12月:+33万人)だった。ともに微減だが、14年12月に大きく増加していた後にしては反動減はむし
ろ小さめ。就業者数、雇用者数とも順調な拡大傾向が続いていると判断できる。後述の求人動向と合わせ、
雇用環境は良好と言って良い。
○ 求人数も増加
雇用者数に先行する求人動向でも改善の動きがみられた。厚生労働省から公表された15年1月の有効求人
倍率は1.14倍、新規求人倍率は1.77倍と、ともに前月と同水準だった。有効求人倍率は1992年4月(1.14倍)
以来、新規求人倍率は1992年2月(1.80倍)以来の高水準であり、労働需給が引き締まった状況にあること
が示されている。
また、実際の企業の採用意欲を示す求人数で見ると、有効求人数が前月比+0.6%(14年12月:+0.2%)
と4ヶ月連続の増加、新規求人数は前月比+0.4%(14年12月:+2.9%)と3ヶ月連続の増加となっている。
求人数は増税後に改善が止まり、横ばいからやや弱めの動きとなっていたが、14年11月以降は改善がみられ
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
ている。国内景気が最悪期を脱し、持ち直しに転じていることを反映した動きとみられる。先行きも景気の
持ち直しが予想されているため、求人数も増加傾向で推移する公算が大だろう。
このように、雇用者数に先行する求人数に改善の動きがみられていることから考えて、先行きの雇用は増
加傾向で推移する可能性が高い。引き続き企業の雇用不足感が非常に強く、採用意欲も旺盛であることも雇
用の改善を後押しする。
○ 先行き、所得回復ペースが速まる見込み
こうした雇用の増加に加え、先行きは賃金の増加も期待できる。注目される春闘では、2年連続でベース
アップが実施され、昨年を上回る賃上げ率が実現することが予想される(賃上げ率2.40%、ベア0.6%を予想。
昨年は賃上げ率2.19%、ベア0.4%)。消費増税後に景気は悪化したが、円安効果等もあって14年度も増益は
維持可能とみられ、企業収益の水準も高い。労働分配率も低水準で、企業の賃上げ余力は存在する。低水準
の失業率に見られるとおり、労働需給が改善していることも賃上げに繋がる材料だ。加えて、政府からの賃
上げ要請圧力が強まることも賃上げを後押しするだろう。連合が指針として掲げる「2%以上のベースアッ
プ」はさすがに実現不可能だろうが、企業側としても、こうした諸条件を無視してのゼロ回答は困難だろう。
既に企業もベースアップ容認姿勢を強めつつあり、最終的には企業側が労働者側にある程度歩み寄る形で決
着する可能性が高いと予想する。
このように、雇用者数の増加に賃金の持ち直しも加わり、先行き雇用者所得は増加が見込まれる。また、
物価の鈍化傾向が強まり、夏場には一時的にCPIのマイナス転化が予想されることも家計の実質購買力増
加に繋がるだろう。2015年度の実質雇用者所得(実質賃金×雇用者数)は+2%以上増加してもおかしくな
い状況だ。実質所得の減少が消費の大幅な抑制に繋がった2014年度とは逆に、2015年度は実質所得の増加が
個人消費の持ち直しをもたらすことになるだろう。
(万人)
5650
雇用者数(季調値)
(万人)
6450
5600
就業者数(季調値)
6400
6350
5550
6300
5500
6250
5450
08
09
10
11
12
13
14
15
6200
08
09
10
11
12
13
14
15
(出所)総務省「労働力調査」
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
(万人)
(万人)
有効求人数(季調値)
新規求人数(季調値)
90
240
85
220
80
75
200
70
180
65
60
160
55
140
50
45
120
08
09
10
11
12
13
14
15
08
09
10
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15
(出所)厚生労働省「一般職業紹介状況」
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。