844KB - 第一生命保険

1/3
World Trends
マクロ経済分析レポート
オージー高とキウィ安の背景と見通し
~豪ドル/日本円相場は米ドル/日本円相場の動向如何~
発表日:2014年8月26日(火)
第一生命経済研究所 経済調査部
担当 主任エコノミスト 西濵
徹(03-5221-4522)
(要旨)
 『高金利通貨』として注目を集めるオセアニア通貨だが、昨年末以降はNZドル高が進む一方で豪ドル相
場は相対的に弱含み易かった。NZ景気はカンタベリー地震の復興本格化などで盛り上がる一方、豪州は
中国景気の減速や資源税制などが重石となり、景気の勢いの違いが顕著だったことがある。結果、NZで
は今年3月以降利上げが進んだが、豪州では金融緩和が続くなど政策の方向性が異なることも影響した。
 NZは急進的な利上げを行ったが、足下では先行きの景気に不透明感が出つつある。豪州も景気への不透
明感はくすぶる一方、不動産市況の高騰で金融緩和には動けず、当面金利を据え置かざるを得なくなって
いる。金融政策の方向感の差が両国為替相場に影響しているが、足下の豪ドル高は市場での米ドル高圧力
が増幅させていると見込まれる。豪ドルの対米ドル相場は一進一退の展開が続くと予想されるなか、先行
きの豪ドル/日本円相場の行方は米ドル/日本円相場の動向が鍵を握るものと見込まれる。
 日本国内のみならず、国際金融市場においては『高金利通貨』として注目されやすいオセアニア通貨(豪ドル
及びNZドル)だが、昨年末から年明け直後にかけてはNZドル相場が相対的に堅調な推移をみせる一方、豪
ドル相場は金融市場の混乱に伴う世界的なマネーの動揺の余波を受ける形で調整する状況がみられた。しかし、
足下ではこうした動きが大きく変化しつつある兆候が確認 図 1 豪州・NZ の実質 GDP 成長率(前期比年率)
されている。その背景としては、両国の景気動向に変化が
出ていること加えて、景気の動きに伴って金融政策を巡る
方向感が変化していることも影響している。NZ経済を巡
っては、2011 年に発生したカンタベリー地震からの復興需
要の本格化により建設需要を中心とする内需が堅調な拡大
をみせていることに加え、米国など先進国を中心に世界経
済に持ち直しの動きが強まるなか、外需に回復感が出てい
る。結果、NZの経済成長率は昨年後半以降、3四半期連
続で前期比年率+4%を上回るなど潜在成長率を上回るペ
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
図 2 豪州・NZ の政策金利の推移
ースで拡大を続けるなど、景気は急速に勢いを取り戻す状
況が続いてきた。一方の豪州経済については、今年1-3月
期の実質GDP成長率は前期比年率+4.51%と久々に高い
伸びを記録したものの、最大の輸出先である中国経済の減
速やそれに伴う資源需要の鈍化、前政権下で実施された資
源関連税制などが重石となり、資源関連での設備投資需要
の低迷が景気の足かせとなる状況が続いてきた。こうした
景気の勢いの差を受けて、NZ準備銀は今年3月に3年7
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判
断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一
生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
2/3
ヶ月ぶりの利上げ実施に踏み切り、その後も4会合連続で利上げを実施しており、昨年後半には両国の政策金
利は過去最低の同水準で横並びとなったが、足下ではNZ準備銀による利上げ分の差が生まれている。他方、
豪準備銀は中国景気の不透明感などを理由に昨年8月まで利下げ局面を続けたことに加え、その後も景気の勢
いに乏しいことから、金融政策は緩和姿勢を続けざるを得ない状況となった。こうした差が、豪ドル相場に対
するNZドル相場の底堅さに繋がってきたものの、ここ1ヶ月ほどで状況は変わりつつある。
 NZ準備銀は今年3月以降、4会合連続で利上げを実施するなど性急な金融引き締めを図ってきたが、その背
景には世界的な金融緩和によるリスクマネーの膨張が続いて同国への資金流入圧力が強まるなか、カンタベリ
ー地震の復興需要の本格化や移民増加による住宅需要の旺盛さが重なり、不動産市況が急上昇したことが大き
く影響している。インフレ率は直近でも準備銀の定めるインフレ目標(1~3%)の下限近くで推移している
にも拘らず、不動産価格は昨年9月時点で前年比二桁%の伸びにまで加速したため、昨年 10 月からNZ政府
は不動産融資に対する規制強化の取り組みを始めるなど、市況加熱による景気への悪影響を懸念する姿勢が強
まった。結果、足下では一連の政策効果に加え、金融引き締めの影響も重なって不動産市況に頭打ちの動きが
確認されるなか、NZ準備銀はNZドル相場が乳製品をはじめとする同国の主要輸出財の国際価格の下落にも
拘らず、実勢に比べて高水準で推移していることを警戒する姿勢を強めており、7月の金融政策委員会では先
行きの金融政策については「中立」に変更する可能性を示唆する動きに転じている。豪準備銀は昨年8月に政
策金利を過去最低水準に引き下げて以降、一貫して金融政策の方向性は「中立」のまま据え置く姿勢を続けて
おり、こうした状況は今月初めの金融政策委員会でも変わっていない。さらに、先行きも中国景気を巡る不透
明感がくすぶっており、豪州景気は依然として勢いを取り戻しにくい環境にあるにも拘らず、海外資金の活発
な流入などを背景に足下の不動産価格は前年比二桁%を上回る高い伸びが続いており、豪準備銀は金融緩和に
図 3 豪州・NZ 通貨の対日本円相場の推移
も動けない厳しい状況に直面している。他方、NZ経済に
とっても昨年は中国が最大の輸出相手となったことでこの
不透明感が景気に影響しやすくなっている上、世界的な乳
製品価格の低迷も先行きの景気の足かせになることが懸念
されているが、過去4回の利上げ実施により金融緩和の余
地も生まれている。こうした先行きの金融政策の方向感は、
FX(外国為替証拠金)取引などを通じて取引高が拡大し
ている両国通貨の対日本円の動きに大きく影響していると
思われ、足下で日本円に対して豪ドル相場は急速に上昇し
ている一方、NZドル相場は停滞しているものと考えられ
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
図 4 豪州・NZ 通貨の対米ドル相場の推移
る。しかし、目下の国際金融市場においては米Fedによ
る金融政策の動向、特に、利上げ実施時期に注目が集まっ
ているが、両国通貨の対米ドル相場の動きをみると、対日
本円相場と異なる状況がうかがえる。NZドルに対しては
日本円同様に米ドルも上昇しており、先月の金融政策委員
会における金融政策の姿勢の転換が影響を与えていると考
えられる。しかし、豪ドル相場は米ドルに対して過去1ヶ
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
月弱程度は一進一退の推移が続いており、NZドルのよう
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判
断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一
生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
3/3
に相場のレンジが大きく切り替わっている様子は確認出来ない。このように考えると、日本円とオセアニア通
貨との為替相場は独自要因で動く要因以外に、日本円と米ドルとの為替相場の変化が大きく影響していること
を見逃すことは出来ない。先行きの両国経済には外的な不透明要因がくすぶり、早期に金融政策の変更が行わ
れる可能性が低くなっていることを勘案すれば、依然として金融緩和が続く日本からは、特に政策変更リスク
が小さい豪ドルが買われやすくなっている。しかし、豪州経済自体が勢いを取り戻しにくい状況にあることか
ら、米ドルに対して足下の水準から大幅に上昇していくことは考えにくく、今後は米国の利上げが意識される
ことによる米ドル高(日本円安)の動きが豪ドルの対日本円相場の上昇を促すことが見込まれよう。
以
上
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判
断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一
生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。