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慶應義塾大学総合政策学部【小論文】解答例 問1
[選んだ資料3] 資料3によれば、データを収集・分析し、数量によって示すことには以下の三つの効果
がある。すなわち命題の趣旨が明確になること、命題の真偽が検証可能になること、お
よび他の命題との関係が論理的に明確になることである。よって数量的データに基づく
意志決定には、個人の主観や感情に左右されないというメリットが生じる。しかしその
一方でこうした数字は見せかけの正確さのみを与え、判断を誤らせるというリスクも孕
んでいる。
[選んだ資料4]
資料4によれば、統計学における数字データは、観察・分類を基盤としつつも人為的な
操作が加わるため、対象の量的性格を直接反映するわけではない。また統計学の方法は
過程志向的経験主義であり、そこからは一般的法則を導き出すことはできないという限
界がある。他方こうした経験主義は、早急な理論モデルの構築を目指す理論主義の立場
を戒め、より現実に即した妥当性の高い意思決定に貢献するという利点を有する。
問2 選択した課題:(2)
定量的指標: 父親の育児参加率(%)=(Nf/Nm+Nf)×100
指標の定義: Nf=父親の育児休業取得日数 Nm=母親の育児休業取得日数
資料・データの収集方法:
ある市区郡を対象に、国勢調査などをもとに未就学児童を抱える夫婦共働きの家庭の概
数を推計する。続いてこの推計された概数をもとに標本数を決定する。こうして決定さ
れた標本数に基づいて調査対象となる家庭をランダムに選択し、取得した育児休業の日
数を父親、母親のそれぞれについて調査し、その日数をそれぞれに合計する。このよう
にして求められた父親の育児休業取得日数と母親の育児休業取得日数を合算して、特定
地域における総育児休業取得日数を求め、このうち、父親の育児休業取得日数が占める
割合を導き出す。この割合を父親の育児参加率として、その地域において男性がどれだ
け積極的に育児に参加しているのかを示す指標とする。
問3
【解答例】
本指標は男性の育児参加を育児休業取得日数という明確な規準に還元することで、具体
的な解決策の提示に貢献しうる。しかし、本来指標や統計は多様な現実そのものを完全
に反映することはできない。本指標も夫婦共働きの家庭のみを対象として算出されるた
め、例えば専業主婦のいる家庭や、男性が中心的に育児を行う家庭における男性の育児
参加が反映されていない。また、本指標によって導かれる数値がそのまま問題解決のた
めの意思決定に繋がるわけではない。つまり、そこには本指標によって導かれた育児休
業取得日数の大小について価値判断をする主体、すなわち人間の主観が存在しなければ
ならない。本指標を用いた意思決定には以上の限界がある。