平成28年度 裁判所職員(一般職) 小論文 講評&解答例 0 001112 155008 KL15500 頒布・複写を禁じます 問 題 近年,人工知能の開発が目覚ましい速度で進んでいるが,人工知能が社会に及ぼす影響と課題 について,具体例を挙げながら論じなさい。 解答例 人工知能とは,一般的に,人間の知的営みをコンピュータに行わせる技術,また,人間の知的営 みが行えるコンピュータプログラムのことだとされる。 近年,この人工知能の開発が目覚ましい速度で進んでいる。例えば,ソフトバンクは人工知能を 搭載したロボット「Pepper」を発表した。 「Pepper」は人間の声などから感情を読み取り,人が悲し んでいるときに励ますこともできるという。また,東京大学に合格する人工知能を開発するプロジ ェクトも進行中である。この人工知能は年々偏差値が上がっており,2015 年には,大学センター試 験模試にて,全大学中6割で合格可能性が 80%と測定されたことが話題にもなった。 では,人工知能が社会に及ぼす影響とは何か。わが国では現在,少子高齢化の進展に伴って労働 力の低下が問題視されている。このため,不足する労働力を補う形で人工知能が一層活用される可 能性が高まる。例えば, 「Pepper」のようなロボットが高齢者の見守りを担ったり,店舗内の接客等 を行うのではないかと予期されている。また,人工知能が生徒に学習内容を教えるのはもちろん, 多くの生徒の学習データを分析することで,単元ごとにつまづきやすい箇所やそのパターンを認識 し,それに対応した教授法も取れるようになることも考えられる。 しかし,この変化に伴って懸念されるのは,人間の労働が人工知能に奪われ,大量の失業がもた らされるかもしれないということである。実際に,すでにメガバンク各行がコールセンター業務に おける人工知能の導入を発表している。その他,工場のオペレーターやローンの融資担当など,対 応をマニュアル化しやすい労働については,今後,人工知能で代替される可能性は高いと言わざる を得ないだろう。 このような影響を踏まえた場合,課題となることは何か。それは,人間と人工知能が共存してい くことであり,とりわけ労働分野においては両者の役割分担が重要になると考える。具体的には, 機械学習を得意とする分野については人工知能を積極的に活用する。これに対し,人工知能が担う には技術が未達で新たな発想力を必要とする分野や,個々人の状況に応じた対人コミュニケーショ ンや精神面でのサポートが重視される分野は人間が中心となって担っていくのである。例えば,教 育分野でも,生徒の学習意欲を高めるといったことに関しては教師が担う方が適任であるように思 われる。 近年,技術の進化は著しい。社会の発展のために我々は,それを役立てつつ,自ら生産性や創造 1 公務員試験対策 平成 28 年度 裁判所職員(一般職) 小論文 解答例 頒布・複写を禁じます 性向上に一層努めていくことが重要になると考える。 (約 1060 字) 以 上 講 評 難易度:C[難問] 裁判所職員採用一般職試験では,社会人として組織で働くにあたっての適性を問う視点からの出 題が長らく続いていた。しかし,今年は傾向が大きく変わり,現代社会の時事的関心を問う課題と なった。本問出題の背景には,人工知能に関わることが話題となることが増えているのに加え,裁 判所でも過去の判例を調べることや関連法令のチェックなどに人工知能が活用される可能性があり うることとも関連していると推察される。 論述は, 「定義→人工知能の開発が目覚ましい速度で進んでいる現状→人工知能が社会に及ぼす影 響→影響を踏まえた課題と対応」という流れで行っていけばよい。影響については,メリットとデ メリットの両面に配慮できるとバランスのよい論述となる。そして影響もしくは課題(可能であれ ば双方)で具体例を挙げつつ意見の立証を行っていく必要がある。具体例が指摘できるかも含め, 本問は平素から社会時事に広く関心を持っていなくては試験会場で論じるには難しい出題であり, 従来からの出題傾向の変化も含め,難問に位置づけられよう。 公務員試験対策 平成 28 年度 裁判所職員(一般職) 小論文 解答例 2 著作権者 株式会社東京リーガルマインド (C) 2016 TOKYO LEGAL MIND K.K., Printed in Japan 無断複製・無断転載等を禁じます。 KL15500
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