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慶應義塾大学経済学部【小論文】解答例 設問A リベラルな自由とは、すべての人が自らの価値観や目的を選択・追求できる
ということであり、ここでは政府は道徳に対して中立でなければならないとさ
れる。これに対して、共和主義的政治理論では、自由は自己統治の分かち合い
に支えられていると考える。この点ではリベラルな自由と共和主義的な自由は
矛盾しないが、後者は政府が国民に共通の市民道徳を求める。自己統治とは、
国民が共通善について議論し共同体の未来を自ら決定することだが、そのため
には、公的な事柄に関する知識、帰属意識、全体への関心、道徳的な連帯感が
不可欠だ。こうした特性を国民の中に培う公共政策によって、共和主義的政治
理論の自由は保障されるのである。 設問B リベラルの立場から、私が石油や森林資源を消費する自由を主張したとしよ
う。この自由は、他者の自由も認め、次世代の人間という他者が資源や環境を
利用するためのコストを私が払う限りで認められる。しかし、まだ存在しない
未来世代の人間を「他者」と見なすには、それを善とする価値観や道徳がわれ
われの間で共有されていなければならない。したがって、確かに理論的にはリ
ベラルな自由の理解でも次世代のためにコストを払うことはわれわれの自由と
矛盾しないが、地球温暖化防止対策のように次世代のことを念頭に置く政策に
実効性をもたせるためには、現在世代の行動を道徳によって律する自己統治が
必要であると考える。