OE12 IT-BCP を考える 要旨 近年、企業において IT システムが果たす役割は大きくなっている。また、エンドユーザ がシステムに求める要求レベルも高くなっている。ひとたび、災害や大規模障害の発生に よりシステムが停止すると、企業活動に甚大な影響を及ぼす状況となっており、システム の可用性は企業にとって最重要課題のひとつとなっている。 企業には、事業継続マネジメントに取り組むことにより、社会的責任の遂行とお客様の 満足、信頼の獲得を目指すことが求められている。 2011 年 3 月に発生した東日本大震災では、電話通信や一部の安否確認サービスが利用し づらい状況となったことで、従業員の安否確認や被害状況の把握等、コミュニケーション 上の課題が発生し、改善すべき点が多数あることが認識された。 これに伴い、東日本大震災以降、各社において、BCP(Business Continuity Plan、事業 継続計画)の策定や見直しの気運が高まっている。 ここで、各社で策定する BCP には、災害対策やセキュリティリスク対策、パンデミック 対策など、さまざまな内容が含まれているが、本研究において取り扱う BCP は「災害対策」 と定義する。 各社で策定する BCP の内容は、初動フェーズと復旧フェーズに大別され、その初動フェ ーズにおいては、 安否確認サービスなどの IT ツールが導入されていることが一般的である。 しかし、これらの IT ツールが円滑な初動対応をとるために活用され、当初想定していた 機能を果たしているかは疑問である。 (例えば、ツールの存在が従業員全員に周知されていない、定期的な訓練が行われてお らず肝心なときに使い方がわからない、部門や拠点で導入しているツールが異なっている、 など) また、各社が導入している IT ツールは、目的や用途によって異なる複数の製品が導入さ れていることが多い。製品間の連携が取れていないことから、結果として、情報が散在し て状況の把握に時間を要すことになり、このことが迅速な初動対応の阻害要因となってい る。 我々のグループは、災害時に迅速な初動対応をとることが、業務への影響を最小限に留 め、復旧までの時間を短縮する重要な要因であると考える。言い換えれば、災害復旧のプ ロセスの中でも、初動対応が肝心である。 業務改善では、People(人) 、Process(業務) 、Product(技術)の3つの要因それぞれ をバランスよく改善する必要があるとされている。 本研究では、上記要因の Product(技術)の観点から、迅速な初動対応をとるにはどうす ればよいかを検討した。 その結果から、迅速な初動対応の阻害要因である情報散在化の解決策として、災害時の 2014 Beacon Users' Group OE12 IT-BCP を考える 要旨 総合ポータル(窓口)システムの構築を提案する。復旧プロセス(初動対応~復旧)の情 報を一元管理し、全社で統一されたプラットフォーム上で必要な情報を収集・共有する仕 組みを用いて情報の散在化を防ぐ。災害発生時、復旧に向けての意思決定が円滑に行える ように、情報集約の仕組みを整備することが、自社およびステークホルダーの利益確保に 直結すると確信している。 以上 2014 Beacon Users' Group
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