BRMによる全体最適化プロセスの構築~みんなで回

OE06 システム運用における継続的な業務改善
要旨
はじめに
これまで、システム運用部門はITを使用した業務の効率化や自動化を求められてきた
が、ITの進化は著しく、与えられた役割をこなすだけの組織では顧客やユーザ部門、経
営層のニーズに応えられていないと考えられる。また、システム部門には、絶えず変化す
るIT市場を察知し、世の中の流れに順応する組織が求められている。
目的
我々は研究会のテーマを通じ、「システム運用部門における職場環境(働きやすさ、や
りがい、認知度、評価などを)を改善し、会社への貢献度を高める」ことを目的とした。
背景・問題
世間一般的にシステム運用部門における問題点として、ノウハウ(知識の属人化)や、
適正な業務量になっていない、エンドユーザが業務を理解していないなどの問題が多いこ
とが分かった。
また、我々メンバ内で問題点を洗い出した結果、同じような問題が上がった。
さらに、業務上の問題の他に、「モチベーションが上がらない」「評価されない」「不満
の捌け口がない」「全体的に暗い」等、メンタル面についての問題も多く上がった。
そして、これらの問題は全ての企業に対して悪影響を与えるものであると考えられる。
課題
問題点から課題を整理した結果、「評価方法の改善」、「業務の可視化」、「モチベー
ション向上」などが挙げられた。これらは多くの運用現場が抱える問題であり、かつ、解決さ
れにくい問題であると考えられる。なぜなら、関係部門全体の利害関係が影響しており、シ
ステム運用部門単独の改善では解決が難しいと考えられるからである。
こうした課題を改善するには、関連する部門全ての課題を収集し、他部門との関わりを
意識した上で最良の解決策を導き出すBRM(Business Relationship Management)の役割
を担う組織をたて、「全体最適」の仕組みを作っていくべきだと考えた。また、世の中の
変化に対応し続けるためには「継続的に課題を解決できるプロセス」が求められる。
これらの課題が解決されることにより、職場環境(働きやすさ、やりがい、認知度、評
価など)の改善に繋がり、ひいては、会社への貢献度向上へ繋がるであろう。
仮説
私達は、このBRMの役割を、一つの部門として担うべきであると考えた。
BRMはシステム運用部門だけでなく他関連部門の人員も含めて構成されており、新た
なスキル(コミュニケーション、ファシリテーション、分析力等)が必要となる。
次に「継続的に課題を解決できるプロセス」として、BRMが中心となり、関連部門全
体の利害関係を総合的に見た上で改善案を継続的に検討・提案・修正し、実施と評価をマ
ネージメントする「継続的改善モデル」を考え、「BRModel」と名付けた。
BRModelは以下の要素で構成される。
・不満、意見、「声のない」改善ポイントを関係部門全体から収集する仕組み
©2014 Beacon Users’ Group
・会社全体を俯瞰し、総合的に分析して、改善提案する組織(BRMが担う)
・改善案を利害関係者全体に公開し、継続的にアップデートできる仕組み
・改善実施後の評価を行い、公開する仕組み
BRModelを適用することで、一度だけの場当たり的、局所的な改善にとどまらず、
継続的な改善がなされ、ひいては会社全体に良い波及効果を及ぼすことができると考えた。
仮説検証
この仮説を検証するためにSNSサービスを利用した疑似的BRModel環境を構築
し検証した。検証方法としては、SNS上でメンバ各々に各部門の役割を担わせ、意見を
出し、それらの意見を元にBRMが総括し改善策を出すこととした。
その後、改善策を実施したものとして、関係部門それぞれにおける課題が解決されたか
どうかの判断を行った。
仮説検証結果
検証は2回行い、「YWT分析」で結果を分析した。
※YWT分析…Y:良かったこと、W:分かったこと、T:次にやるべきこと
1回目の検証結果をYWT分析で実施し、改善点を洗い出し、その改善点を踏まえて2
回目を実施し、結果を再度YWT分析で結果分析した。
題材は以下の通り
・1回目・企画部門からの新機能開発の期間短縮について
・2回目・システム運用部門からの新機能運用についての問題点
考察
検証結果から本モデルを継続的に使用することで関係部門相互の課題が解決されていく
ことが分かった。
また、BRModel導入にあたり、モデルの改善、SNSの目的の明確化、書き込む
ための仕組み、何よりBRMは非常に高いスキルを要することが判明した。
おわりに
BRModelを適用することで当初の目的(システム運用部門の環境改善)を達成す
ることが可能になり、かつ会社への貢献度向上も見込める。全体最適に向けてまだまだ深
堀が必要ではあるが、初めの一歩として本研究グループ同様の悩み、課題を持つ方々には
是非とも我々の考案したBRModelの適用を検討して頂きたい。
©2014 Beacon Users’ Group