2014年12月 - 三菱東京UFJ銀行

平成 26 年(2014 年)12 月 29 日
資源価格の下落が輸出と財政を中心として豪州経済の重石に
豪州経済は、住宅価格や株価の上昇による資産効果を背景に個人消費が牽引役とな
り、緩やかな回復基調を維持してきたが、足元では資源価格の下落を受け減速してい
る。輸出は主力輸出品目である石炭や鉄鉱石価格の大幅下落を受けた中国向けを中心
に減少し、5 月から 10 月まで 6 ヵ月連続のマイナスとなっている(第 1 図)。
資源価格下落の影響は財政面にも及んでいる。財務省は 12 月 15 日に発表した年央
経済財政見通しで、2014 年度(2014 年 7 月~2015 年 6 月)の財政赤字を今年 5 月時
点の名目 GDP 比▲1.8%から同▲2.5%へ、2015 年度を同▲1.0%から同▲1.9%へ下方
修正した(第 2 図)。財政赤字拡大の背景としては、資源価格下落による資源関連税
収の大幅な下振れが主因である。財務省は、低金利と豪ドル安が景気を下支えすると
みており、成長率見通し(2014 年度:前年比+2.5%、2015 年度:同+3.0%)を据え置
いたが、成長率が下振れし、財政赤字が更に拡大する可能性もある。
豪ドル相場は、12 月 3 日発表の 7-9 月期の実質 GDP 成長率で景気減速が確認され
たことや、米国の利上げ観測の高まりなどを受け、足元では 1 豪ドル=0.81 ドル台と、
2010 年以来の低水準で推移している。豪州準備銀行(RBA)は 12 月も政策金利を過
去最低水準に据え置いたが、16 日発表の議事録において、ここ数ヵ月の商品価格の下
落を踏まえると、豪ドルは依然割高な水準にあるとの見方を示している。さらに、ス
ティーブンズ総裁は豪紙のインタビューにおいて、当面は政策金利の据え置きを示唆
する一方で、為替相場について、1 豪ドル=0.75 ドル近辺が望ましいと具体的な水準
を明らかにした。財政出動や政策金利の引き下げ余地が乏しいなか、RBA は景気の
下支え役として、豪ドル安へ依存する姿勢を強めている可能性もある。
第2図:豪州財務省による財政収支見通しの変化
第1図:地域別輸出と商品価格
40
(2012年=100)
(前年比、%)
中国
30
160
4
140
2
(10億豪ドル)
(名目GDP比、%)
その他
EU
全体
商品価格(右軸)
20
10
80
60
0
0.5
財政政策
0
0.0
-2
-0.5
120
100
-4
-6
-8
40
-10
-20
12
13
14
-1.5
財政収支(5月)
(右軸)
-2.0
その他
-14
0
-16
-3.0
財政収支(12月)
(右軸)
-3.5
-4.0
2013-14
2014-15
2015-16
2016-17
2017-18
(注)棒グラフ中の『財政政策』、『税収』、『その他』は5月時点からの修正額。
(資料)豪州財務省資料より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
(資料)Bloombergより三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
1
-2.5
-12
20
(年)
-1.0
税収
-10
11
1.0
ASEAN
(年度)
照会先:三菱東京 UFJ 銀行 経済調査室 竹島 慎吾 [email protected]
大幸 雅代 [email protected]
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