鉱業・製造業が弱含むなかサービス業が景気を下支え

平成 28 年(2016 年)1 月 22 日
鉱業・製造業が弱含むなかサービス業が景気を下支え
2014 年後半以降の資源価格の大幅下落は、企業部門を通じ、景気を下押してきた。
影響が大きい鉱業・製造業の業績をみると、売上高が減少し、利益面でも鉱業は大幅
減と、企業収益全体を悪化させている(第 1 図)。このような環境下、2015 年 7-9 月
期の新規設備投資は前年比▲17.8%と落ち込んだほか、雇用面でも製造業や鉱業の雇
用者数減少が目立つ展開となった。賃金上昇率も 7-9 月期は、資源部門に引きずられ
る格好で前年比+2.3%と、1997 年の統計開始以来最低水準にとどまっている。
しかしながら、雇用者数が全業種合計では増加傾向を辿っていることは注目される。
業種別にみると、医療・福祉や宿泊・外食サービス等の家計関連サービス業の拡大が、
全体の増加に繋がっていることがわかる(第 2 図)。この背景には、高齢化に対応す
べく政府が打ち出した支援策による介護ニーズの高まりのほか、豪ドル安による観光
客・留学生の増加がある。実際、7-9 月期の海外からの来訪者数をみると同+7.4%と
増加が続いている。サービス業は、労働集約型産業であることから、企業部門全体の
売上高、設備投資額に占める割合は各々3 割、2 割と寄与は小さいが、雇用者数に占
める割合は約 6 割と大きく、労働市場では雇用の受け皿となっている。また、海外観
光収入の増加はサービス輸出の拡大を通じ、資源関連財の減少で下振れる輸出の減少
幅縮小に寄与している。このように鉱業・製造業部門の不振を、資源価格下落の影響
が波及しにくい家計関連サービス業で下支えしていることが、消費の底堅さを通じて、
景気の底割れ回避に繋がっている。
企業業績の底打ちや求人数の増加傾向などを踏まえれば、今後、賃金上昇率の鈍化
は歯止めがかかることが見込まれる。豪州は、ロシア・ブラジルなど他の資源国とは
異なり先進国型のサービス産業の裾野の広がりがみられることから、足元の一段の資
源安の影響には留意する必要があるものの、所得に裏打ちされた消費が下支えとなり
景気は底堅く推移するものとみられる。
第1図:民間企業の売上高と営業利益
15
第2図:業種別にみた賃金上昇率と雇用者数
(前年比、%)
5
10
5
0
-10
8
6
2
4
1
2
-2
13
14
売上高
15
12
13
14
15
雇用者数 2015年平均〈右目盛〉
賃金 2015年平均
賃金 2010-14年平均
0
-2
-4
製 鉱 不 卸 建 電 金 公 通 小 運 芸 教 行 宿 専 医
造 業 動 売 設 気 融 務 信 売 輸 術 育 政 泊 門 療
業
産 業 業 ・ ・
サ 業 ・
倉 ・
福
ガ 保
娯 ・
学 ・
支 ・
外 ・
技 ・
ー
業
ス 険
庫 楽 習 援 食 術 祉
ビ
・
業 サ 支 サ サ サ
水 サ
ス
ー 援 ー ー ー
道 ー
ビ
ビ
ビ ビ ビ
ス
ス
ス ス ス
(注)『賃金』は、ボーナスを除く時間当たり賃金、2015年は7-9月期までの平均。
(資料)豪州統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
-15
12
10
3
-1
その他業種
鉱業
製造業
全体
(前年差、万人)
4
0
-5
(前年比、%)
(年)
営業利益
(注)『その他業種』は、卸売、小売、建設、サービス業等。
(資料)豪州統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
1
照会先:三菱東京 UFJ 銀行 経済調査室
竹島 慎吾 [email protected]
前原 佑香 [email protected]
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