平成 26 年(2014 年)12 月 29 日 ロシア経済悪化の影響等を受け、成長ペースが一段と鈍化 ユーロ圏経済は低成長が続いている。ユーロ圏の牽引役であるドイツは、製造業の 高い国際競争力を武器に新興国を中心とした海外需要の取り込みを成長源としてき たが(第 1 図)、中国経済の減速を起点とする新興国経済全般の成長鈍化に、ロシア 経済減速が加わり、成長ペースが一段と低下している。足元では原油価格の下落によ る実質所得の増加やユーロ安を背景に、企業と家計のマインドに持ち直しの動きもみ られるものの、ユーロ圏の 10 月の鉱工業生産は前月比+0.1%の増加に止まるなど、 10-12 月期も景気は低調なままとみられる。2015 年にかけても、ユーロ圏経済では厳 しい状況が続いていく公算が大きい。 デフレ懸念も一段と高まっている。ユーロ圏の 11 月の消費者物価上昇率(HICP) は前年比+0.3%まで低下した。需給ギャップをみると、イタリアやスペインでマイナ ス(需要不足・供給超過)が大幅に拡大しているのみならず、ドイツでもマイナスに 突入している(第 2 図)。 こうしたなか、欧州中央銀行(ECB)は 12 月の理事会において成長率とインフレ 見通しを大幅に下方修正したものの、急落しているエネルギー価格の物価への影響を 見極めるのに時間を要することに加え、貸出条件付長期資金供給オペ(TLTRO)を含 む一連の政策効果を見極めたいとして、追加緩和策の導入を見送った。ドラギ総裁は デフレ回避に向けバランスシートを拡大させる方針を強調したが、12 月 11 日に実施 された TLTRO 第 2 弾も応札額が約 1,300 億ユーロ、第 1 弾とあわせても約 2,100 億ユ ーロと上限(4,000 億ユーロ)の半分に止まった。また、10 月以降実施しているカバ ードボンドと資産担保証券(ABS)の買入額も、これまでのところ 297 億ユーロに止 まっており、ECB が「意図」するバランスシートの 1 兆ユーロ拡大を実現させるため には、国債購入を含む追加緩和が必要な状況にあるようだ。 第2図:ユーロ圏主要国の需給ギャップ 第1図:ドイツの地域別輸出拡大の寄与率 60 (%) 4 50 2 2000-07年平均 40 (GDP比、%) ドイツ 2009-13年平均 0 フランス 30 -2 イタリア 20 -4 10 0 スペイン -6 先進国 内、ユーロ域内 新興国 内、ロシア 内、中東欧 内、中国 (36.8%) (10.3%) (6.1%) (58.8%) (3.3%) (41.2%) (注)『先進国』はユーロ圏、日本、米国、英国、スイス、『中東欧』はポーランド、 チェコ、ハンガリー、トルコ。( )は2013年の貿易シェア。 (資料)IMF統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成 -8 1999 2001 2003 2005 2007 2009 (資料)IMF統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成 1 2011 2013 (年) 照会先:三菱東京 UFJ 銀行 経済調査室 竹島 慎吾 [email protected] 大幸 雅代 [email protected] 当資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、金融商品の販売や投資など何らかの行動を勧誘す るものではありません。ご利用に関しては、すべてお客様御自身でご判断下さいますよう、宜しくお願い申し 上げます。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、当室はその正確性を保証する ものではありません。内容は予告なしに変更することがありますので、予めご了承下さい。また、当資料は著 作物であり、著作権法により保護されております。全文または一部を転載する場合は出所を明記してください。 また、当資料全文は、弊行ホームページでもご覧いただけます。 2
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