海外経済フラッシュ No.2016-4 1

海外経済フラッシュ
No.2016-4
2016 年 3 月 3 日
オーストラリア:20151年 10-12 月期の実質 GDP 成長率
~資源価格下落の影響で減速も、消費の底堅さは健在~
経済調査室
<ポイント>
 10-12 月期の実質 GDP 成長率は前期比+0.6%と前期から減速した。もっとも、
中身を見ると、資源価格下落の影響を受け低迷する企業部門を、家計部門が支え
ているという構図が続いており、景気は底割れを回避した。
豪州連邦準備銀行(RBA)は、GDP 発表の前日に開催された金融政策決定会合後
の声明の中で、鉱業部門が設備投資を中心に低迷する中、非鉱業部門の成長が景
気回復や雇用改善に寄与していることを指摘している。
今後も、企業部門は鉱業の設備投資の低迷が続くものの、サービス業を中心とし
た雇用環境の改善を背景に、家計部門が下支えとなり景気の底割れは回避されよ
う。ただし、この先も資源価格の低迷が見込まれる中、企業部門の回復には時間
を要することから、回復ペースはこれまでに比べ緩やかに止まる見込みである。


<結果概要>
 3 月 2 日に発表された 10-12 月期の実質 GDP 成長率は前期比+0.6%と 7-9
月期の同+1.1%(改定値:同+0.9%から上方修正)から減速した(第 1 図)。
この結果、2015 年通年では前年比+2.5%と 2014 年(同+2.6%)と、資源
価格が下落するなかでも景気の底割れは回避する結果となった。
 需要項目別では、外需の伸び悩みから輸出が前期比+0.6%の成長に止まっ
たほか、鉱業・製造業の低迷を背景に設備投資が同▲3.3%と 4 四半期連
続で減少し、企業部門は低迷が継続した。一方で、民間消費は同+0.8%と
家計部門は引き続き底堅さを維持したことに加え、政府支出・公共投資は
前期の反動から同+1.2%と増加した(第 2 図)
第1図:実質GDP成長率
6
第2図:需要項目別にみた実質GDP成長率
(%)
6
(前期比、%)
4
5
2
4
0
3
-2
-4
2
-6
1
2015年7-9月期
2015年10-12月期
実
質
GDP
0
成
長
率
前期比
-1
民
間
消
費
住
宅
投
資
設
備
投
資
前年比
-2
在
庫
投
資
政
府
支
出
・
公
共
投
資
純
輸
出
内需
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(年)
(資料)豪州統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
1
(注)『在庫投資』と『純輸出』は、前期比寄与度。
(資料)豪州統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
輸
出
外需
輸
入
2016 年 3 月 3 日
 産業別にみると、鉱業が伸び悩む一方、卸売・小売・サービス業の伸び率
は加速した(第 3 図)。鉱業部門の成長鈍化を、卸売・小売・サービス業
などの非鉱業部門が成長を下支えしている構図が続いている。
 営業利益をみると、鉱業部門は資源価格下落による影響を受け低下傾向を
辿っている一方で、卸売・小売業やサービス業を中心とした非鉱業部門は
名目 GDP 比で 10%近傍と安定して推移しており、鉱業部門の低迷により
サービス業や小売業までもが底割れする展開とはなっていないことが確
認できる(第 4 図)。
第4図:鉱業部門と非鉱業部門の営業利益
第3図:産業別にみた実質GDP成長率
5
4
(前年比、%)
その他
鉱業
卸売・小売・サービス業
実質GDP
16
(名目GDP比、%)
14
鉱業
非鉱業
12
3
10
2
8
1
6
4
0
2
-1
08
09
10
11
12
13
14
15 (年) 0
07
08
09
10
11
12
13
14
(注)『その他』は、農業、製造業、建設業、電気・ガス・水道、持家の帰属家賃等。
(資料)豪州統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
(資料)豪州統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
15 (年)
<金融政策決定会合の概要>
 豪州連邦準備銀行(RBA)は、GDP 発表の前日に開催された金融政策決
定会合後の声明の中で、鉱業部門が設備投資を中心に低迷する中、非鉱業
部門の成長が景気回復や雇用改善に寄与していることを指摘している。
 金融政策については、インフレ率が直近 10-12 月期で前年比+1.7%と RBA
の目標レンジである同+2~3%を下回る「低水準」が続いている中、緩和
的な金融政策が適切であると言及。
 現在の政策金利が 2.0%と過去最低水準に据え置かれていることで、貸出
金利は低下し、企業向け貸出残高は緩やかながらも増加傾向を保っている
(第 5 図)。
 一方、RBA が過熱を懸念する住宅市場については、リスクが抑制されて
いると評価。実際、住宅価格をみると RBA が過熱状態と指摘していたシ
ドニー、メルボルンで伸びが鈍化している。また、住宅ローン残高全体の
伸びは 1 月も前年比+8.5%と高い伸びが続いているが、内訳を見ると、政
府や中央銀行の投機需要抑制方針により、投資家向け住宅ローン残高の増
加ペースは鈍化している(第 6 図)。
2
2016 年 3 月 3 日
第5図:企業向け貸出金利と貸出残高
9
(%)
8
第6図:住宅価格と住宅ローン残高
(前年比、%)
40
20
貸出残高〈右目盛〉
35
10
貸出金利:大企業向け
30
7
(前年比、%)
住宅価格:全国
メルボルン
シドニー
0
25
6
-10
20
13
5
15
4
10
3
5
2
0
1
-5
0
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
(資料)豪州統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
15
-10
16 (年)
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
14
15
16 (年)
住宅ローン残高
(前年比、%)
居住者向け
投資家向け
合計
13
14
15
16 (年)
(資料)コアロジック社、豪州中央銀行統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
<コメント>
 年明け以降、資源価格が一段と下落していることから企業部門は鉱業の設
備投資の低迷が続くものの、サービス業を中心とした雇用環境の改善を背
景に、家計部門が下支えとなり景気底割れは回避しよう。
 ただし、この先も資源価格の低迷が続き、企業部門の持ち直しには時間を
要することから、回復ペースはこれまでに比べ緩やかに止まる見込みであ
る。かかる環境下、RBA は政策金利を据え置く公算が大きい。
(H28.3.3
前原
佑香
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