教職員定数に関する財政審の方針に対する意見 平成27年11月26日 全日本教職員連盟 財務省の財政制度等審議会は、教職員の基礎定数約 33,000 人、加配定数約 4,000 人の 機械的算出に基づいた削減案を示しました。これは、少子化により、9年間で 940,000 人 の児童生徒の減少、21,000 のクラス数の減少が見込まれるため、教職員数を 37,000 人 削減しても、1学校当たりの教職員数を維持できるというものです。 現在、我が国は、グローバル化、少子高齢化、高度情報化等による社会の急激な変化 により、子供たちを取り巻く環境が大きく変化しています。子供たちがこの変化の激し い時代を生き抜くために必要な資質や能力を身に付けられるように、 「特別の教科 道徳」 の導入やアクティブ・ラーニングの推進、英語の教科化等、次々と新たな教育施策が示 され、学校教育は大きな変革の只中にあります。 しかし、学校現場は、いじめや不登校等の生徒指導上の問題や特別な支援を要する児 童生徒の増加、保護者への対応等、複雑化、多様化、困難化した教育諸課題を抱え、疲 弊している状況です。このような過酷な現状においてもなお、我々教職員は、我が国の 未来を担う目の前の子供たちの健やかな成長を願い、我が国の発展を支える人材を育成 するべく、全身全霊を込めて教育活動に取り組んでいます。 財務省は教育への財政投資についてのエビデンスを求めていますが、教育は数値で表 せるものばかりではありません。何をもって成果とするかも含め、子供の実態や環境等 は様々であり、その要因が複雑に絡み合って結果は変化します。そもそも教育は、すぐ に結果が出るものばかりではありません。厳しい財政状況であり、予算を有効に活用す ることは大切ですが、単なる数字合わせではなく、教育の果たす役割の重大さを十分認 識し、我が国の未来を担う人材に対して先行投資するという視点で取り組む必要がある と考えます。 財務省は、教員は増えているがいじめや不登校は減っていないという見解を述べてい ます。しかし、ここであげられているいじめは認知件数であり、いじめを見過ごさず対 処し解決している件数も多く含まれており、財務省の見解は細かく子供たちの様子を見 取りながら、真摯に取り組んでいる学校現場の先生方の行動や調査結果を逆手に取った もので、到底納得できるものではありません。 また、いじめは起こりうるものとして捉え、いじめを深刻化させず、いじめによる自 殺や重大な事件を引き起こさせないようにきめ細かな対応をすることが重要だと考えま す。いじめられている子供へのケアはもちろん、いじめの加害者への対応も重要であり、 子供たちに関わる教員を1人でも多く配置することで、いじめや不登校等の問題が迅速 かつより的確に解決されると考えます。 個別の課題に対応した加配措置の効果は大きく、もし必要な加配を削減すれば、いじ めや不登校が更に増加し、子供たちに苦しみ、悲しみを強いる状況が生じるのは火を見 るより明らかです。いじめや不登校が減らないから先生は必要ないという暴論は絶対に 認められません。 これからの教育は基礎学力のしっかりとした定着はもちろん、社会の変化に対応し子 供たちが未来を生き抜くための資質や能力を高めるためのアクティブ・ラーニングの推 進等、学習指導にも多様な視点が求められています。そのためには教員の増員と研修の 充実が不可欠です。 教員を増やして教育諸課題に対する業務を分担し、時間的、精神的なゆとりを生み出 さなければ、教材研究や研修等に更に取り組むことはできない状況です。教育の質的向 上には、教員の量的な増大が必要なのです。 財務省は、関係機関との連携や外部人材の活用を推進し教員が授業に専念できる環境 を整備していくことが重要であるとしています。スクールカウンセラー等の外部人材の 配置を充実させることに反対ではありませんが、それを機能させるためには、連携体制 を構築し、コーディネートする人間が必要です。実際に子供たちに関わるのは教職員で あり、単に専門的な外部人材を登用しても、連絡調整等に追われ負担は更に増すことが 容易に予想されるからです。 「チーム学校」を有効に機能させるためには、子供たちに日々 寄り添い生活している教職員を増員することで、子供たちの抱える多様な問題に適切に 対処でき、指導の合理化、効率化を図ることができます。併せて行政機関等が行う調査 等の精選を進めることで、業務量の削減や多忙の解消が可能となると考えます。 財政審が示した教職員定数削減は、我が国の未来を担う子供たちに負担を強いるもの で、安倍政権の掲げる教育再生に逆行したものであり、学校現場の実態を知らない暴論 だと考えます。 「国づくりは人づくり」です。その人づくりを担う公教育を支えているの は、我々教職員であり、その教職員が今後も誇りを持ち安んじて職務に専念できるよう に、財務省に対して教職員定数削減の見直しを強く求めます。 そして、全日教連は、 「美しい日本人の心の育成」を理念とし、我が国全体の教育正常 化を目指す良識ある真っ当な教職員団体として、我が国の未来を担う子供たちと、熱意 を持って学校現場で頑張る教職員が報われる教育環境の実現のために、今後も継続的、 安定的な教職員配置を実現するための法改正を伴う基礎定数の改善とともに、個別の教 育課題への加配教員の充実を要望します。
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