特集 特 集 特 集 指定管理者制度における 修繕費のあり方 〜自治体の指針・ガイドライン等に見る実態とは〜 地方自治体が有する公共施設 その一方で、地方自治体では財 扱いに関しては、自治体によって は、高度経済成長期に設置された 政状況の厳しい団体が少なくな 対応が異なり、リスク分担など曖 ものが多く、それらは築後30年 く、公共施設の大規模修繕はもち 昧な点が少なくない。具体的な費 から40年以上を経過して老朽化 ろん日常的な修繕工事も容易には 用負担や事務手続きの場面で種々 が大きな課題となっている。照明 進んでいないのが現状だ。 の問題も発生している。 や空調などの設備機器の老朽化・ このような状況下では、公共施 ここでは、全国の自治体が策定 陳腐化はもちろん、建物の基幹部 設を管理運営する指定管理者に している指定管理者制度に関する 分 (屋根・外壁等)の汚損・剥落・ とって、限られた修繕費の範囲内 指針やガイドライン等の中から、 ひび割れ等が進み、利用者の快適 で老朽化した建物設備を如何に適 特徴的な事例をとりあげつつ、修 性の問題に止まらず安全上の問 切且つ安全に保全していくかが重 繕費のあり方について考察してみ 題まで指摘されるようになってき 要な課題となってくる。しかしな たい。 た。 がら、指定管理者の修繕費の取り 6 月刊 指定管理者制度 15.1月号 特集 1 をみると、 「基準額」 について明記していない自治 指定管理者制度における 修繕費の取り扱い 体が9団体、施設毎に個別に設定するとしている 自治体が11団体 (平成26年11月末現在) ○修繕費に関する具体的な取り扱い (役割分担、基 ライン等 (以下、指針等) を見てみると、修繕費に関 準額又は支払予定額等) に関しては、基本協定書 する一般的な取組方針は大凡 (おおよそ) 以下のとお に明記することになっている⇒具体的には協定書 りとなっている。 にリスク分担表 (ケース毎の役割分担に関する一 ○指定管理料に修繕費を含むケースと別途支払う 覧表) を貼付 ケースとがある⇒一般的には含むケースが多い ○修繕工事を行う場合には、自治体と事前協議を行 が、別途支払うケースでは年間修繕費の上限が設 い承認を得たうえで実施し、工事終了後は自治体 定され、収支計画書に定額の修繕費を計上するこ に報告しその検査を受ける⇒緊急を要する場合に とになる (当該修繕費は他に流用できず、年度末 は、事前協議をせずに実施し、自治体に事後承認 の精算対象となる) を得る ○修繕費は殆どのケースで年度末の精算対象となっ ○修繕工事後の施設・設備の所有権は自治体に帰属 ており、たとえ余剰金が発生した場合でも次年度 する⇒指定管理者の提案により修繕後に資産価値 へ繰り越せない⇒年度初めに概算払いされ、実績 が向上した場合でも、所有権は自治体に帰属 に基づいて年度末に精算 *例外として、豊橋市の運用方針には、 「修繕費に 2 ついても指定管理料に含め、精算は行わない」 と 明記。 リスク分担方法の考え方 ○修繕費負担の役割分担 (リスク分担) は、ほぼ全て 公共施設の修繕については、 「事後保全」 のケース のケースにおいて金額の規模 (=修繕の規模)に が一般的であり、故障・汚損・破損・剥落等の問題 よって決まる⇒一定の基準額を設定し、これ以下 が発生した後にその修繕を行うことが多い。この場 の金額の場合 (小修繕) は指定管理者の負担、これ 合、故障・汚損・破損・剥落等の問題はリスクの一 を超える場合 (大規模修繕) には自治体の負担、と 種であり、 修繕はリスク管理のひとつと言える。従っ いう手法が一般的⇒基準額は1件当り○○万円と て、自治体と指定管理者との間でどのようにリスク いう設定が一般的で、指定管理者が小修繕を行う を分担するかが重要なテーマとなってくる。 場合にはこの範囲内で実施 常識的には 「リスクを最もよく管理することがで き、リスクを適切にコントロールできる者がリスク ○上掲の 「基準額」 については、全ての施設に一律の 金額を設定するよりも、施設の種類・規模・耐用 管理をする」 というのが原則だ。 年数・利用状況等に応じて個別に設定するケース 北九州市の 「北九州市指定管理者制度ガイドライ が多い⇒例えば、政令指定都市20団体の指針等 ン」 (平成26年4月改訂)では、リスク分担を検討 <指定管理料のイメージ> 指定管理料 経費 (精算による返還の対象外) 光熱水費・修繕費・原材料費 剰余・不使用分 剰余分 事業実績 (精 算) 事業経費 指定管理者の利益 事業経費 市へ返還 (出所)「平塚市指定管理者制度運用の手引き」平成26年6月改訂 より 月刊 指定管理者制度 15.1月号 7 特 集 自治体の指定管理者制度に関する指針及びガイド
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