官民連携手法による 公的資産マネジメント

官民連携手法による
公的資産マネジメント
(11)地方公共団体における
PRE戦略実践にあたっての課題
だけたと思う。
効であるということが理解いた
公的資産マネジメントを行う上
で、PRE戦略という考えが有
過去2回の連載で、効率的な
公共団体にはこれら知識を有す
要である。しかし、多くの地方
財務・建築・資産評価など複数
分野にわたる専門的な知識が必
が、そのためには金融・法律・
う考えであり、保有不動産を適
切に維持管理するという従来の
管財的役割とは異なるものであ
る。したがって、企画・財政・
建設・管財などの部門が持って
いる知識・ノウハウを兼ね備え
売却手法に関するノウハウにつ
が地方公共団体に対して行った また、土地の有効活用方策や
関する研究会(PRE研究会)
」 となっている。
管部署が保有する不動産の集約
化や、用途の転換も検討する必
略実践にあたっては、異なる所
が必要である。また、PRE戦
た組織によって推進されること
アンケートによると、「保有不動
いても新たに獲得する必要があ
要があるため、庁内横断的な専
る 人 材 が 不 足 し て お り、 人 材 育
成または獲得が重要なポイント
産の合理的な所有・利用の必要
る。
しかし、国土交通省の「公的
不動産の合理的な所有・利用に
性」について、
必要がある。しかし、PRE戦
・2%が「必
要性を感じ ている」と回答して
❷市場動向などの情報獲得
いる一方、その中ですでに実行 不動産の処分・有効活用を検
置している地方公共団体は数少
・6%に
る。しかし地方公共団体にはそ
どの市場動向の把握が必要であ
状である。
なく、多くは企画・財政部門や
管財部門が担当しているのが現
略推進のための専属の部署を設
門の推進組織を新たに設置する
討するためには、民間事業者の
意向や土地の市場価格の変動な
しているとの回答は
PRE戦略の必要性は、ほと
れらの情報が不足しており、保
❹制度的な課題
とどまっている。
んどの地方公共団体が認識して
有不動産の取り扱いの意思決定
で本稿では、PRE戦略実践に
あたっての課題とその解決方策
について述べることとする。
1.PRE戦略実践の課題
❶知識・ノウハウの獲得
PRE戦略実践にあたって
組みを構築することが必要であ
についての情報を把握できる仕
手に関する情報、市場のニーズ
保有不動産の市場価値、買い
の課題となっている。
補助金の返還が必要な場合があ
場合、用途転換や処分するには
助金を活用して建設した施設の
り、その用途や処分に関して制
約がある場合が多い。また、補
り、柔軟な資産配分を行う上で
る。
❸推進体制の構築
継続して保有、売却、貸付、P
点で見直し、投資効率を最適化 以上PRE戦略実践には様々
の所有・利用形態を戦略的な観
2.課題の解決方策
FI…等)の中から最適なも
するような資産配分を行うとい
な課題が存在しており、それら
のを選択し実行する必要がある
用形態を複数の選択肢(例えば PRE戦略とは、公的不動産
は、保有する不動産の所有・利
が進んでいないのが現状であ 公的資産は民間資産と異な
る。
いるが、その実践は進んでいな
いというのが現状である。そこ
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月刊 指定管理者制度 09. 2月号 46
に わ た っ て、 職 員 の 研 修 等 に よ
か も 専 門 的 で あ る。 全 て の 分 野
は、 法 律・ 財 務・ 建 築・ 資 産
評 価 な ど 複 数 分 野 に わ た り、 し
⑴知識・ノウハウ獲得のため
❶民間との連携の推進
る。
れる。PRE戦略における資産
ニーズは十分存在すると考えら
は、 地 方 公 共 団 体 と の 情 報 交 換
向を持った民間事業者にとって
あ る。 公 的 資 産 マ ネ ジ メ ン ト
という新たな市場に参入する意
と恒常的に情報交換を行う場を
る。 不 動 産 会 社 や 調 査 会 社 な ど
が、首長などにより研究組織か
上が見込めるという利点がある
する方法である。研究会を通じ
断 的 な 研 究 会 な ど か ら 発 展 し、
資産活用を行う専門部署を設立
高める必要である。
員のPRE戦略に関する意識を
るという利点があるが、担当職
いる自治体を中心とした、情報
が、先進的な取り組みを行って
イトなどの開設も考えられる
て担当職員の意識・スキルの向 国が主導となったポータルサ
ための努力を行うことが必要で ボトムアップ方式は、部門横
設定するなど、常に情報入手の
ら権限を持った担当課に昇格さ
果の具体例を必要としている。
地方公共団体は、先進的な取組
み事例や、PRE戦略実践の効
E 戦略を推進しようとしている
ない。したがって、
これからPR
体に情報・ノウハウの蓄積が少
るため、ほとんどの地方公共団
効果を検証することが必要であ
り内部で確保できるのであれば
の活用手法の中には、資産の証
交換の場を設けることも有効で
ある。その際、民間企業も含め
指示により保有資産の把握と活
よ い が、 多 く の 地 方 公 共 団 体 で
券化、リースバック、PFIな
せる必要がある。
ど、民間事業者との共同事業と しかし、いずれの方式で組織
たものとすれば官民の連携も促
揮することが期待される。
は 人 材 不 足 の た め、 内 部 で の 確
を整備したとしても、PRE戦
進され、PRE戦略がいっそう
が地方公共団体のPRE戦略推
保が困難であることが予想され
る。 そ こ で、 不 足 し て い る 知 識
なるものも多い。民間事業者と
略推進のためには、施設管理担
普及することが期待される。
る。
や ノ ウ ハ ウ に 関 し、 外 部 の 専 門
当課を初めとする全庁の職員の
用を行う部署を新たに設置する
家やコンサルタント等の活用に
W in W-in の 関 係 に な る こ
とが、PRE戦略を成功させる
協 力 体 制 が 不 可 欠 で あ り、 そ
⑵情報獲得のため
よって補完するという方法も検
ためには重要であり、民間事業
のために、PRE戦略に対する
全職員の意識の向上が必要であ
進の障害となっていると考えら
討 す べ き で あ る。 想 定 さ れ る 知
者のニーズ把握のためにも恒常
的な情報交換の場の設定は有効
る。一つの方策として、
PRE戦
という方法である。首長などの
❸全国的な情報交換体制
指示によるため権限が明確にな PRE戦略は新しい概念であ
識・ ノ ウ ハ ウ と し て は、 売 却 が
難 し い 土 地 の 活 用 方 策、 媒 介 や
である。
略の効果を庁内全体に可視化す
用 す る 際 に は、 個 別 不 動 産 の 処
理 に 関 す る 単 発 的 な 委 託 よ り、
専 門 家、 コ ン サ ル タ ン ト を 活
方式とボトムアップ方式の2種
団体の先進事例によると、組織
整備の方法には、トップダウン
の部署を設置している地方公共
PRE戦略推進のための専属
標 を 定 量 的 に 設 定 す る こ と と、
そのためには、PRE戦略の目
する認知度が高まり、取り組み
が 加 速 し た と い う 事 例 も あ る。
の方法により、PRE戦略に対
るということが有効である。こ
㈱日本総合研究所
総合研究部門
主任研究員
京都大学大学院工学研究科修士課
程修了。
平成2年株式会社日本総合研究所
に入社、現在に至る。
専門分野は、地域開発、地域振興、
行財政改革等に関する調査・コン
サルティング。
47 月刊 指定管理者制度 09. 2月号
れ る。 そ れ で は ど の よ う な 解 P R E 戦 略 推 進 の た め に は、
決方策があるのかを以下に述べ
市場動向の把握が不可欠であ
バルクセール等の効果的な売却
❷全職員への普及啓発
PRE戦略全体に関する包括的
類がある。
小長井 由隆
PRE戦略推進に必要な知識
手 法、 資 産 流 動 化 に 関 す る ノ ウ
なアドバイザリー業務の委託の
戦略実行にあたっては常にその
ハウなどである。
方が、より効果が高い効果を発 トップダウン方式は、首長の
〈筆者略歴〉