電力自由化、安定供給から効率投資へ転換促す

公益社団法人
日本経済研究センター
Japan Center for Economic Research
2016 年 1 月 26 日
電力自由化、安定供給から効率投資へ転換促す
-消費者は選択肢拡大、料金低下には時間も-
日本経済研究センター
2016 年 1 月 14 日(木)に「エネルギー・環境の未来を語るラウンドテーブル・情報
通信技術が変える経済社会研究会」の合同会合を開き、電力自由化時代のエネルギー
政策、ビジネスについて専門家を招いて討論した。自由化によって消費者は電気料金
の選択肢が拡大するが、目に見えた料金低下には時間がかかるだろう。また人口減少、
低成長時代の自由化は、電力会社に安定供給一辺倒の経営から効率投資による収益拡
大、経営基盤強化を図ることを促す可能性がある。議論の要旨は下記の通り。
1. バブル崩壊後の 1990 年代半ば以降、電力消費量は伸び悩み、大規模な設備投資
による安定供給確保から効率投資へ力点を移すことが、業界には求められるよ
うになった。発電部門と小売り部門を自由化し、送配電部門のみを公益事業と
する今回のシステム改革は、これを促す狙いがある。競争にさらされる中で、
経営努力によるコスト削減効果をどう活用し、需要家に選択してもらうか、そ
の戦略を電力会社が独自に決められるからだ。
「独占を認める代わりに経営努力
結果をすべて値下げせよ」だけでは努力するインセンティブは働かない。
2. 16 年 4 月以降の託送料金(小売り事業者が他電力会社の送配電網を用いて電力
供給する際に支払う利用料金)は十分な検討時間が確保できなかった面もあり、
従来方式に基づいて算定されたが、これが最終形ではない。関係者からのヒア
リングなどを進め、抜本的な制度改正を議論しているところ。また卸電力市場
の整備も欠かせない。現在は前日に翌日の料金を決めるスポット市場が中心だ
が、リアルタイム市場等の導入に向けた検討が今後本格化するだろう。
3. 電力自由化で消費者は、選択肢が格段に増える。通信と比較されることが多い
が、航空自由化の方が類似性は高い。航空チケットは現在、さまざまな料金サ
ービスが提供され、インターネット上で選択・購入できる。今後、価格比較サ
イトを運営する企業も登場してくるだろう。ただ、大幅な料金低下が 4 月以降
にすぐ起きるとは限らない。
4. 地球環境問題や原子力等のエネルギー政策と電力システム改革は、切り離して
議論がなされてきた。ただ、これらエネルギー政策は自由化の行方を左右する。
例えば原子力事故やバックエンドコストなどを金融機関や保険会社が本格的に
リスクと認識すると、新規原発建設の資金調達は難しくなるだろう。現在の諸
政策は、現状を前提条件として検討を進めている。核燃サイクルの必要性など
はそもそも論から議論することが必要と思われるが、それには事務レベルでは
なく、高いレベルの政治的な決断が不可欠になる。
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日本経済研究センター
エネルギー・環境の未来を語るラウンドテーブル・情報通信技術が変える経済社会研究会
「エネルギー・環境の未来を語るラウンドテーブル」メンバー
座長
座長代理
岩田
一政
鈴木達治郞
公益社団法人日本経済研究センター理事長
日本経済研究センター特任研究員/長崎大学教授・核兵
器廃絶研究センター長
山地
憲治
地球環境産業技術研究機構
理事・研究所長
植田
和弘
京都大学大学院経済学研究科教授
橘川
武郞
東京理科大学大学院教授
増田
寛也
野村総合研究所顧問(元総務相・前岩手県知事)
伊丹
敬之
東京理科大学大学院教授
竹内
純子
国際環境経済研究所
小山
堅
日本エネルギー経済研究所
小西
雅子
枝廣
淳子
環境ジャーナリスト
平田
仁子
気候ネットワーク理事
有識者
経済団体
理事・主席研究員
常務理事・首席研究員
世界自然保護基金(WWF)ジャパン
気候変動・エネルギープロジェクトリーダー
日本経済団体連合会
経済同友会
エレクトロニクス、エネルギー、化学、住宅、自動車関連、金融機関、
会員企業
商社、食品、IT、建設機械、エンジニアリング、建設、運輸・通信、
不動産など当センター会員企業 22 社
アドバイザー
日本経済研究センター特任研究員/慶應義塾大学大学
小林
光
小林
辰男
日本経済研究センター主任研究員/政策研究室長
高地
圭輔
日本経済研究センター主任研究員
院特任教授・元環境事務次官
事務局
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日本経済研究センター
エネルギー・環境の未来を語るラウンドテーブル・情報通信技術が変える経済社会研究会
「情報通信技術が変える経済社会研究会」メンバー
座長
有識者
経済団体
岩田
一政
公益社団法人日本経済研究センター理事長
浅見
徹
東京大学大学院情報理工学系研究科教授
奥和田久美
文部科学省科学技術・学術政策研究所上席フェロー
高口
鉄平
静岡大学大学院情報学研究科准教授
実積
寿也
九州大学経済学研究院教授
篠崎
彰彦
九州大学経済学研究院教授
日本経済団体連合会
エレクトロニクス、自動車関連、IT、小売、流通など当センター会
企業
員企業等 10 社
オブザーバー
NHK、総務省
アドバイザー
鈴木達治郎
日本経済研究センター特任研究員/長崎大学教授・核兵
器廃絶研究センター長
高地
圭輔
日本経済研究センター主任研究員
小林
辰男
日本経済研究センター主任研究員/政策研究室長
事務局
本稿の問い合わせは、研究本部(TEL:03-6256-7730)まで
※本稿の無断転載を禁じます。詳細は総務・事業本部までご照会ください。
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