別記様式第 7号 平成 26年 2月 1 0日 博士学位論文の調査及び最終試験・苧力の詰認の結果報告書 論文調査委員会幹事 職名准教授 氏名 1 学位の種類 ι 印J ¥ 博士(匿ヨ・詳)(固・吾) 遼 東 安 2 氏名 鶴野玲治 3 学位論文の題目 A d a p t i v eL i q u i dS i m u l a t i o nf o rComputerG r a p h i c s ( づ ' / t : ' ・ , ,-J7 1乃 7J λ4先制アダフ 9 1 r ft 採停シミュ/,.-力 VJこ j司 1~4すY幻 4 学位論文の審査の結果の要旨 この論文は流体、特に水のような液体のコンビュータグラフィックス映像をシミュレーションベ ースで生成するフレームワークについての一連の研究をまとめたものである。流体をコンピュータ で取り扱うための離散化、その挙動を表現するための方程式の再検討、これを有限な計算環境の中 で実現するための方法、流体特有の複雑かっ大きな変化をともなう動きへの対応、リアリティを持 った映像化など、多くの問題解決をデータと計算モデ、ルの両方から行っている。この流れに合わせ て本論文は大きく三つのテーマによって構成されている。 Na v i e r S t o k e s方程式の離散化、アダプ ティプ FLIP粒子を使った薄膜形状の保持と深さに合わせた計算密度の可変化、四面体格子の新し い離散化方法による圧力計算の複雑性の低減と高精度の境界条件の提案である。それぞれ P r e r e q u i s i t e s ,P r e s e r v i n gF l u i dS h e e t s ,AdaptiveL i q u i dS i m u l a t i o n sf o rFLIPの章にまとめられ ている。 P r e r e q u i s i t e sの章では、流体の物理挙動を示す Na v i e r S t o k e s方程式に対し、 OperatorS p l i t t i n g を用いて移流項、圧力項、粘性項を独立させて計算する手法を解説し、連続体である流体をコンビ ュータ計算に載せるための具体的な方法を示している。計算コストの高い圧力項の解法と、また、 移流項の離散化において不可避的に導入される数値粘性を粘性挙動の付加に利用して物理粘性項の 効果的な削除を行っている。 次章 P r e s e r v i n gF l u i dSheetsの章では、アダプティブ FLIP粒子を用いた流体の薄膜保持手法を 提案している。流体、特に水が激しく動いた時に発生する膜状や糸状に変形する現象が対象である。 離散化によって得られた粒子モデ、ルは激しい動きの際に大きな粗密差が発生する。これは計算の効 率だけでなくレンダリング時のアーティファクトという意味でも問題になる。申請者はこの問題に 対し、運動の性質に合わせて粒子密度と大きさをアダプティブにし、運動が小さい流体深部におい ては粒子サイズを大きく、運動の大きい表層部やさらに激しく形状の変動が発生する界面部の粒子 密度を高くサイズを小さくしている。全体の粒子量をコントロールすることで体積も保持される。 提案手法による薄膜保持では、従来のレベルセット法やメッシュベース界面追跡法で、課題で、あった 数値拡散やメッシュの絡まりが発生せず、大きな変形を伴う流体運動を追跡することができ、流体 運動のシミュレーション品質が大幅に改善される。通常は相反するシミュレーション品質と計算速 度の両方において良好な結果が得られている。並列化の実装が簡便である点も本手法の利点である。 さらに粒子群から生成されるレンダリング像は全体の大幅な計算量の削減にも関わらず高精細な流 体形状変化を描出できることを示している。 AdaptiveLiquidS i m u l a t i o n sf o rFLIPの章では計算単位として四面体メッシュを用いた液体解 析手法を提案している。四面体メッシュによる液体解析法は従来から空力解析分野やコンピュータ グラフィックス分野で研究が進められてきた。従来手法は主に有限体積法と有限要素法の二種類が とられている。しかしいずれ場合でも数値頑健性に難点があり、またメモリアクセスも煩雑である ため解の精度や計算時間が犠牲になるという問題があった。これに対し、本論文では圧力の計算点 を四面体のノードに、流速の点を四面体の中心座標系の中心に、それぞれスタッガードに配置する。 対応する圧力の微分方程式の解は流速場の運動エネルギー関数の最小化問題と同値であるため、こ の問題を最小二乗法を用いて直接離散系で解いている。この手法は無条件に数値安定で。計算コス トが低く、解の収束が速くかっ実装も簡素である。さらに四面体メッシュを空間に応じてアダプテ ィブに適応するサイズ関数も提案し、動きの激しい「しぶき」や「渦J と穏やかな動きの場所など の場合に応じた離散精度、計算効率、再現性などすべてを高めた流体計算例を示している。本章で はこれに加えて、異なる大きさの粒子群から流体界面を抽出するアルゴリズムを考案している。近 隣の粒子をコンベックスハルで繋ぎ、そのコンベックスハノレを結合し、そのレベルセットを抽出す る方法で、流体表面の抽出に大きな凸凹が発生してしまう現象への解決法である。 以上のように、本論文は水のような流体の効果的かつ具体的なデータ化、動きの現実的な計算、計 算効率、精度、再現性のすべてにおける向上など、一連の多くの複雑な問題を解決し、一つのフレ ームワークとして大規模アダプティブ流体シミュレーションが実現可能なことを示している。これ は従来法と比較しても高品質かっ高効率なものであり、数値計算手法自身の発展にも寄与するもの であると同時に、コンビュータグラフィックスでの流体表現に対しても、非常に高いレベルの適応 !性、拡張性、表現性を拓くものである。 5 最終試験・挙寿命確謡の結果の要旨 各審査委員が提出論文を精査したのち最終審査会を実施した。申請者から研究と学位論文の内容 の説明を受け、審査員それぞれから提案手法の幾何学的・物理的内容、計算処理、映像表現と評価 視点などさまざまな質問を行った。いずれも適切に回答され、関連領域を網羅する知見を十分に含 んだもので、あった。さらに研究成果として示されたコンピュータグラフィックス映像は非常に高品 質なもので、彼の理論を的確にかっ直観的に証明していることが認められるもので、あった。 6編の参考論文の中には award を授与された論文や当該研究分野で最も難度が高いと言われる論 文を含み、それぞれの内容は学位論文の信頼性を十分に裏付けるものと判断できた。 以上の通り、専門知識、研究能力、開発実装力、表現力など、すべてにわたって申し分なく、審 査委員会として本最終審査は合格であり、博士(芸術工学)の学位を授与できると判断した。
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