熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System Title 進行肝細胞癌に対するソラフェニブ治療と肝動注化学療 法の効果についての検討 Author(s) 福林, 光太郎 Citation Issue date 2016-03-09 Type Thesis or Dissertation URL http://hdl.handle.net/2298/34645 Right 福林光太郎氏の学位論文審査の要旨 論文題目 進行肝細胞癌に対するソラフエニブ治療と肝動注化学療法の効果についての検討 ( C l i n i c a l evaluationof s o r a f e n i bt r e a t m e n ta n dhepatica r t e r i a li n f u s i o nc h e m o t h e r a p yf o r a d v a n c e dh e p a t o c e ll u l a rc a r c in 側 a ) 世界的には進行肝細胞癌に対する治療としてソラフェニフ、(S F N)治療が第 1選択と位置づけられる。一方 で肝動注化学療法(H A I G)は一部の症例で奏効が期待されるため、本邦では有効な治療法として認識されて いるが、その有効性について十分なエビデンスがない。また両治療について明確な治療選択の基準がないの が現状である。そこで本研究は両治療の治療成績を解析し、進行肝細胞癌に対する“より適切な”治腐霊択 を明らかにすることを目的とした。 0 0 4年 4月から 2 0 1 4年 1 0月までに S F N治療が行われた 進行肝細胞癌に対して、熊本大学消化器内科で 2 7 2例 、 H A I Gが行われた 1 2 8例を対象に、それぞれの治療について予後因子、病勢増悪因子について解析を行 い、またプ口ペンシティスコアを用いて両治療群の患者背景をマッチング、させて、治療効果の比較検討を行 っf こ 。 その結果、 S F N群と H A I G群の治療奏効率はそれぞれ 1 5 .錦 、 2 6 . 6 切で、あった。 S F N群では、肝内病変制御状 c m以下)は予後良好因子かつ病勢制御因子で、あった。 H A I G群では最大腫蕩径 5 α n 態(肝内病変 1個以内、 3 以上、低アルブミン値(孟 3 .4 g / d l ) が予後不良因子かつ病勢憎悪因子で、あった。また、 H A I Gが奏効すると S)、無憎悪生存期間(P F S)、病勢憎悪後生存期間(P P S)が非奏効例と比較し、有意に延長 全生存期間(O していた。両治療群の患者背景をマッチングさせたそれそ、れ 5 3例ずつの比較検討では、 O S、P F Sともに有意 A I G群の P F Sが S 附群 差は認めなかった。一方で門脈侵襲合併あり、または肝外転移なしのサブ解析では、 H と比べ有意に長かった。以上より、門脈侵襲合併あり、肝外転移なしの群では H A I Gが S F N治療よりも有用で ある可能性が示唆された。 1 )対象症例の選択の妥当性、(2 )前治療歴の有無、(3 )治療による副作用、(4 )プロペンシ 審査の過程で、 ( )海外で動注が用いられない理由、(6 )動注のレジメンの妥当性、 ( 7 )肝外転移の有 ティスコアの解析方法、(5 無による効果、(8 )患者の Q 0 L、 (9 )他の分子標的治療法、( 1 0 )ソラフェニブの効果予測因子、( 1 1 )両治療 2 )今回の結果に基づく今後の治療方針 などについて活発な質疑 群の抗腫蕩効果と予後との相関の差異、( 1 が行われ、申請者からは適切な回答が得られた。 本研究では、進行肝癌に対するソラフェニフ、と肝動注療法の効果をプロペンシティマッチング、の手法を用 いて比較し、両治療のより適切な選択基準を世界で初めて明らかにした点で学位に相当すると考えられた。 審査委員長消化器外科学担当教授 おも衣\久
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