熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System Title Tegafur-uracil配合剤投与による子宮頸癌の予後解析 Author(s) 坂口, 勲 Citation Issue date 2016-03-09 Type Thesis or Dissertation URL http://hdl.handle.net/2298/34644 Right 坂口勲氏の学位論文審査の要旨 論文題目 Te g a f u r u r a c i l配合剤投与による子宮頚癌の予後解析 ( E f f e c to fo r a lt e g a f u r u r a c i la d j u v a n tt h e r a p yf o ru t e r i n ec e r v i c a lc a n c e r ) 子宮頚癌の抗癌化学療法は従来、補助的治療の域を出なかったが、予後不良例に対する全 身療法として経口補助化学療法の有用性が再認識されつつある。テガフールウラシル配合剤は 経口フッ化ピリミジン系抗腫蕩剤で、現在、胃癌、大腸癌を始めとした消化器癌に加え肺癌、乳癌 などにも広く用いられているが、婦人科領域において現在まで予後不良例に対する補助化学療 法としての検討はない。そこで本研究では、子宮頚癌一次治療後の補助化学療法としてのテガフ ールウラシル配合剤投与の予後改善効果について後方視的に検討することを目的とした。 1986年 4月より 1997年 3月までに熊本大学医学部附属病院婦人科と関連施設で初回治療を 受けた子宮頚癌患者のうち、テガフールウラシル配合剤投与群 162例と非投与群 147例を対象と した。投与群では、テガフールウラシル配合斉j l600mg /日を原則として 12か月間の連日経口投与 を行い、投与後の副作用について評価した。さらに、両群の年齢、臨床進行期、組織型、一次治 療の内容を調査し、両群聞の予後を Log-rankt e s tで解析した。 その結果、年齢、臨床進行期、組織型、一次治療の内容は両群間に差はなかった。テガフール 4 . 6 % ) ウラシル配合剤の投与期間は 103例( 63.6%)が 90日間以上で、あった。また投与量は 137例( 8 が 1日 600mgを服用し、残りは 1日 300∼400mgで、あった o 副作用の調査が可能で、あった 139 例中、 N a t i o n a lCancerI n s t i t u t eCommonT o x i c i t yC r i t e r i a(NCトCTCv e r s i o n2 . 0) で Grade3以上 の有害事象は、 8例 (5 . 8 %)に非血液学的事象、 1例 ( 7 . 2 %)に血液学的事象を認め、特に消化器症 状の出現頻度が高かった。予後の検討では投与群の 5年生存率がコントロール群に比べて有意 に良好で、( pく0 . 0 5)、特に I I I期で著明で、さらに扇平上皮癌症例や一次治療として放射線治療を行 った症例で、も良好な傾向がみられた。投与群の中で 90 日以上服用した症例は 90 日未満服用し ( た症例と比較して生存率、無病生存率ともに有意に良好であった( pく0 . 0 5)。以上より、後方視的 検討ではあるが、子宮頚癌の補助化学療法として、テガフールウラシル配合剤投与が一つの治 療選択になり得る可能性が示唆された。 審査では、( 1 )対象症例の妥当性、( 2)組織型と予後との関係、( 3)今後の無作為化比較試験 の計画、( 4)投与基準・診断基準の一貫性、( 5)投与量・投与期間と治療効果の関係、( 6)肝薬物 代謝酵素の遺伝子多型の影響度、 ( 7)本研究の意義、( 8)体表面積に基づく投与方法、( 9)投与 開始までの期間、( 10)休薬・減量の基準、( 12)治療効果予測因子の発現解析、( 13)有害事象と 治療効果の関係、などについて活発な質疑が行われ、申請者からは適切な回答が得られた。 本研究では、テガフールウラシル配合剤の経口補助化学療法により、子宮頚癌の特に進行した 扇平上皮癌症例や放射線治療を行った症例で、予後を改善する可能性を示した点で、学位に相当 すると考えられた。 審査委員長 歯科口腔外科学担当教授 ナ ρ、少がマ
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