PRE-18-58

PRE-18-58
上肢運動失調症に対するWM課題の検討
―前頭前野に着目して―
A Study On Working Memory Task For Ataxia In The Upper Extremities
―Focus On The Prefrontal Area―
○髙橋一滋 (OT),佐藤篤史 (OT),竹中孝博 (OT)
朝日大学歯学部附属村上記念病院リハビリテーション室
Key words: Evidence-based practice,Physical function,Cognitive function
【目的】上肢到達運動は前頭-頭頂ネットワーク及び小脳によって制御され,運動と認知の制御バラン
スが重要である.そこで,高次認知処理の中枢である前頭前野に注目し Working Memory(WM)課題を
実施し,認知機能に加え運動失調も改善すると予測し検証した.
【対象・方法】運動失調症者24名中,対照群12名(72.4±10歳)は通常訓練(2~3単位),実験群 12名
(69.5±11.6歳)は通常訓練に20分程のWM課題を含め,ともに約4週施行した.SARA(運動失調評価)下
位項目の上肢とFAB(前頭葉評価)をMann-WhitneyのU検定,spearmanの順位相関で統計処理を行っ
た.本研究は当院倫理委員会おいて承認を得ている.
【結果】SARA (下位項目上肢)は両群比較において有意差(P<.05)を認め,平均上昇率(約4週)は対照
群33.7%,実験群50.7%であった.FABは両群比較で有意差(P<.01)を認め,対照群6.5%,実験群26.6%
であった.実験群のSARA(下位項目上肢)とFABに相関関係(P<.05)を認めた.
【考察】WM課題により上肢運動失調が軽減した.上肢到達運動には運動イメージとWMが関与し,課
題実施により運動イメージ想起が容易となり,到達運動のプランニング,行動のモニタリングなどの高
次な認知処理能力が促進された.よって前頭-頭頂ネットワークと小脳のシステムが活性化し,運動学習
の効率化が得られたと考える.ADLの認知情報処理の効率性を視野に入れ,上肢運動失調症への認知学
習としてWM課題を積極的に取り入れることが推奨される.