ベクトルの平行と分解

ベクトルの平行と分解
数学 II・B 授業ノート
1 ベクトルの平行
⃗0 でない 2 つのベクトル ⃗a,⃗b の向きが同じか,または反対であるとき,⃗a,⃗b は平行であるといい,⃗a // ⃗c と表す.
ベクトルの平行について,実数倍の定義から,次のことが成り立つ.
⃗
a ̸= ⃗0,⃗b ̸= ⃗0 のとき,
⃗
a
//
⃗b ⇐⇒ ⃗
a = k⃗bとなる実数 k がある
k > 0 のとき,⃗a と ⃗b は同じ向きに平行であり,k < 0 のとき,⃗a と ⃗b は反対の向きに平行である.
⃗a
⃗b
1
1
任意のベクトル ⃗a に対して,例えば ⃗a を ,− ⃗b を − のように表すことがある.また,一般に次のことが
4
4
3
3
言える.
⃗
a
⃗
aに平行な単位ベクトルは ±
|a|
2 ベクトルの分解
2 つのベクトル ⃗a,⃗b に対して,適当な実数 s,t を用いて,s⃗a + t⃗b と表されるベクトルのことを ⃗a と ⃗b の 1 次
結合という.
また,⃗a と ⃗b が ⃗0 でなく,なおかつ平行でないとき,⃗a と ⃗b は 1 次独立であるという.言い換えると,s⃗a + t⃗b = ⃗0
を満たすのは (s, t) = (0, 0) のときに限るということである.さらに,次のことが言える.
⃗
a と ⃗b が 1 次独立であるとき,平面上の任意のベクトル ⃗
x は任意の実数 s,t を用いて,
⃗
x = s⃗
a + t⃗b
と表され,その s と t はただ 1 組に決まる.
−→
−→
−→
(証明) 平面上に 1 点 O を決めて,⃗a = OA,⃗b = OB,⃗x = OX となるように,点 A,B,X をとる.点 X を通っ
て,直線 OB,OA に対してそれぞれ平行になるような直線を引き,直線 OA,OB と交わる点をそれぞれ P,
Q とする.
1
このとき,
−→ −→ −→
OX = OP + OQ
であり,P,Q はそれぞれ直線 OA,OB 上の点なので,ある実数 s,t を用いて,
−→
−→
OP = sOA = s⃗a,
−→
−→
OQ = tOB = t⃗b
で表される.したがって,⃗x は
⃗x = s⃗a + t⃗b
である.
次に s,t はただ 1 組であることを証明する.⃗x が
⃗x = s⃗a + t⃗b,
⃗x = s′⃗a + t′⃗b
の 2 通りで表されたとする.このとき,
s⃗a + t⃗b = s′⃗a + t′⃗b
だから,
(s − s′ )⃗a + (t − t′ )⃗b = ⃗0
となる.したがって,⃗a と ⃗b は 1 次独立であるので
s − s′ = 0 かつ t − t′ = 0
だから,s = s′ ,t = t′ となり,s と t は 1 組に決まる.■
−→
−→
−→
• 正六角形 ABCDEF において,対角線の交点を O とする.AB = ⃗a,AF = ⃗b とするとき,BD を ⃗a と ⃗b で表
してみよう.
−→ −→ −→ −→ ⃗ ⃗ ⃗ ⃗
BD = BO + OC + CD = b + a + b = a + 2⃗b
となる.
2
3 演習問題
1. ⃗e を単位ベクトルとするとき,これと平行な大きさが 5 であるベクトルを求めよ.
2. |⃗a| = 6 であるとき,⃗a 平行な単位ベクトルを求めよ.
−→
−→
3. 正六角形 ABCDEF において,対角線の交点を O とする.AB = ⃗a,AF = ⃗b とするとき,次のベクトルを ⃗a
と ⃗b で表せ.
−→
(a) AD
−→
(b) CA
−→
(c) BF
3