1 電気通信系の成り立ち 1.

通信方式
第1章、 序
1.1 電気通信系の成り立ち
C. E. Shannon の提唱した通信系のモデル。
(変換)
(変調)
送信機 情報源
物理量
アイデア
(復調)
伝送路
電気信号
(変換)
受信機
受信者
電気信号
種々の形態
雑音源
図1 電気通信系の成り立ち。最新のディジタル通信系も含め、すべての電気通信系は
6つの要素からなる。この講義では、この中の網かけ部分について扱う。
1.2 電気通信の分類
伝送路による:
「有線通信」と「無線通信」
、有線は光ファイバ、無線は衛星通信でともに
ハイテク。
信号による:
「連続信号(アナログ)
」と「不連続信号(ディジタル)」
場所・位置による:
「2点間」と「1点→不特定多数(放送)」
最近では「多点⇔多点(双方向、放送と電話の融合)」(internet)
情報源の種類による:「電話(telephone)、電信(telegram)、ファクシミリ(facsimile)、TV
(television)、遠隔制御(telecontrol)、遠隔測定(telemetry)など」
第2章、信号とスペクトル
2.1 フーリエ級数とフーリエ変換
有限区間で定義された関数、f( t ) [ t 0 ≦ t ≦ t 0 + T ]、あるいは周期関数 f( t ) = f( t + T )は、次のよう
な無限級数に展開した形で表現できる。
! 三角フーリエ級数:三角関数を基底として級数に展開する。
•
f (t) = a0 +
Â
n= 1
an cos n w 0 t + bn sin n w 0 t ,
(2-1)
ここで、w 0 = 2p は基本周波数である。 また、各周波数成分の大きさを表す(フーリェ)係数、an、
T
bn は 、三角関数の直交性から以下の式で与えられる。
t0+T
an = 2
T
f(t) cos (nw0t) dt ,
(2-2)
t0
1
通信方式
t0+T
bn = 2
T
f(t) sin (nw0t) dt ,
(2-3)
f(t) dt ,
(2-4)
t0
t0+T
a0= 1
T
t0
" 指数フーリエ級数:複素指数関数を基底として、無限級数の形で表す。
•
f (t) =
 Fn e j nw0t ,
n= - •
(2-5)
ここで、e j nw0t は角速度 nw0 で回転する複素ベクトルを表し、その大きさと位相は、
t0+T
F n= 1
T
f(t) e-jnw0t dt ,
(2-6)
t0
すなわち、Fn は一般に複素数である。
{sin,cos}とe j nw0t との間にはオイラーの関係があるので、
(2-1)式と(2-5)式のフーリェ係数との
間には、以下の関係が成り立ち、お互いに変換できる。
a 0 = F0, an = Fn + F-n ,
b n = j (Fn - F-n) ,
(2-7)
上記関係から、周期関数 f(t) は、w0 の整数倍の周波数(harmonics)をもった無限個の成分の和に等
しいことがわかる。すなわち、
f(t) ←→ {a0,a1,a2,a3,・・・・,b1,b2,b3,・・・}
または、
f(t) ←→ {・・・F-3,F-2,F-1,F0,F1,F2,F3,・・・}
のように、フーリェ係数のセットが、元の関数 f(t) と同一の内容と等価である。f(t) を信号、
{}の中身
を(離散)スペクトルと呼ぶ。
ただし、(2ー5)式から明らかなように、Fn は複素数であるため、振幅と、位相のスペクトラムがある。
すなわち、
F n = F n ej q n
,
(2-8)
と書いたとき、{ F n }を振幅スペクトル、
{qn}を位相スペクトルとよぶ。
E1.負の周波数(例えば − 3w0)の意味について考察せよ。
E2.振幅のスペクトラムは偶関数、位相のスペクトラムは奇関数になることを示せ。
さて、次に、これから(特にディジタル変調のケースで)頻繁に用いる周期矩形(方形)パルス波形
について、その性質をまとめておこう。周期矩形パルスは、周期「ゲート関数」とも呼ばれ、アナロ
グ信号を標本化(サンプリング)する場合の数学的な取り扱いをする上で重要である。
2
通信方式
図2に、周期ゲート関数と、そのスペクトル
表示を示す。周期ゲート関数を式の形で表
すと、以下のようになる。
(-d £t£d )
2
2
f(t)=A
(-d <t£T-d ) , (2ー9)
2
2
=0
(a)周期ゲート関数(時間領域)
これに対して、式(2-6)を使ってフー
リェ係数を求めると、
Fn = 1
T
-d + T
2
f (t) e - j nw0t d t
-d
2
= Ad
T
sin (nw0 d /2)
(nw0 d /2)
= Ad Sa
T
n p d ,
(2-10)
T
ここで、Sa(x) = (sin x) / x とした。この関
数は後に出てくる標本化定理において重
要で、標本化関数(sampling function)と
呼ぶことにする。一般的には、sinc 関数
とも呼ばれている。
さて、いま、周期 T を大きくしてやると、
図 2 に 3 つの例(T=1/4 → 1/2 → 1)に
みてとれるように、
(基本周波数)
2p → 小 T
(スペクトル強度)
Ad → 小
T
図2 周期ゲート関数とそのフーリェ係数の
スペクトル表示。
となる。すなわち、隣り合ったパルス波形がだんだん離れていって T →∞になった極限では、「孤立
したパルス」になり、もはや周期波や有限区間でのみ定義された関数ではなく、一般的な波形となる。
そのときには、図 2 の極限として、隣り合ったスペクトルの間隔はゼロになり(連続スペクトル)、ま
たスペクトル強度もゼロとなる。
そこで、全区間 [−∞,∞] で意味のある任意関数に対して、
「スペクトル密度」が定義される。
F (w ) =
•
f (t) e
-•
-jwt
•
dt (フーリェ順変換)
,
f (t) = 1
2p
3
F (w ) e j w t d t (逆変換)
(2-11)
-•