数チャレ 第161回 (2014年6月)

数チャレ 第 161 回 (2014 年 6 月)
自然数 n に対して,和
Sn = 1 +
1
1
1
+
+ ··· +
2
3
n
を考える。
(1) 各自然数 n に対して 2k n をみたす最大の整数 k を f (n) で表
するとき,2 つの奇数 an , bn が存在して
Sn =
an
f
(n)
2
bn
と表されることを示せ。
(2) n 2 のとき Sn は整数にならないことを示せ。
(3) さらに,自然数 m, n (m < n) に対して,和
Sm,n =
1
1
1
+
+ ··· +
m
m+1
n
を考える。 Sm,n はどんな m, n (m < n) に対しても整数になら
ないことを示せ。
出典:2014 年 千葉大学 理学部, 医学部
解答
1
1
1
+ + ··· + が
2
3
n
an
(f (n) = [ log2 n], an , bn は奇数 )
Sn = f (n)
2
bn
と表されることを数学的帰納法で証明する。
(1) Sn = 1 +
1◦ n = 1 のとき
f (1) = 0 であるから, a1 = b1 = 1 とすると,
a1
S1 = f (1)
2 b1
が成り立つ。
2◦ Sn =
an
f
2 (n) bn
Sn+1 =
2 | an bn , 2f (n) n < 2f (n+1) と表されるとすれば,
an
2f (n) bn
+
an (n + 1) + 2f (n) bn
1
=
n+1
2f (n) bn (n + 1)
— 1 —
( i ) n + 1 が奇数のとき
f (n + 1) = f (n) であり, n + 1 3 より
f (n + 1) = f (n) 1
であるから,
an (n + 1) + 2f (n) bn , bn (n + 1) はともに奇数
であり,
an+1 an (n + 1) + 2f (n) bn , bn+1 bn (n + 1)
であるから, an+1 , bn+1 はともに奇数である。
(ii) n + 1 = 2f (n+1) のとき
f (n + 1) = f (n) + 1 であるから,
an
1
2an + bn
Sn+1 = f (n) + f (n+1) = f (n+1)
2
bn
2
2
bn
であり, an+1 = 2an + bn , bn+1 = bn はともに奇数である。
(iii) n + 1 が偶数で, n + 1 > 2f (n+1) のとき
n + 1 = 2 m c (m は正の整数, c は 3 以上の奇数 )
とおくと,
2m+1 < n + 1, m + 1 f (n + 1) = f (n)
であるから,
Sn+1 =
an
2f (n) bn
+
1
2mc
=
an c + 2f (n)−m bn
2f (n) bn c
ここで, f (n) > m より
an c + 2f (n)−m bn は奇数
であり,
an+1 an c + 2f (n)−m bn , bn+1 bn c
であるから, an+1 , bn+1 はともに奇数である。
( i ), (ii), (iii)より,
Sn+1 =
an+1
f
(n+1)
2
bn+1
(f (n + 1) = [ log2 (n + 1)], an+1 , bn+1 は奇数)
と表される。
1◦ , 2◦ より,すべての自然数について成り立つことが示された。
(証明おわり)
(2) (1)の表示において, an と 2f (n) は互いに素である。 n 2 のとき 2f (n) 2 であ
(証明おわり)
るから, Sn は整数でない。
(3) (1)と同じ記号を用いて,
Sm, n = Sn − Sm−1
an
am−1
= f (n) − f (m−1)
2
bn
2
bm−1
— 2 —
=
an bm−1 − 2f (n)−f(m−1) am−1 bn
2f (n) bm−1 bn
( i ) f (m − 1) < f (n) のとき
an bm−1 − 2f (n)−f(m−1) am−1 bn は 2f (n) と互いに素な奇数であり, 2f (n) 2 で
あるから, Sm, n は整数でない。
(ii) f (m − 1) = f (n) = k のとき
2 k m − 1 < n < 2 k+1
であるから,
k+1 − 2 k
1
q n − (m − 1) 2
0 < Sm, n <
=1
m−1
2k
(証明おわり)
であり, Sm, n は整数でない。
— 3 —