締め切り迫る、アジアインフラ投資銀行

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アジア
2015年3月30日
締め切り迫る、アジアインフラ投資銀行
中国がAIIBを設立したのは中国の経済的な存在感の高まりに加え、国際通貨基金(IMF)やADBなどの国際開発銀
行との関係も背景と見られることから、この点を踏まえて注目点を述べます。
アジアインフラ投資銀行:参加新たな手法で
資金支援目指す
米国の慎重姿勢にもかかわらず、中国が主導して2015年設
立を目指すアジアインフラ投資銀行(AIIB)について2015年3
月の創設メンバー締め切りを前に国際社会の関心が急速
に高まり、40ヵ国超が最終的に創設メンバーとなる可能性
があります(図表1参照)。今後は融資目標や承認手続き、
融資条件概要の策定作業に入る模様です。
アジア開発銀行(ADB)の試算では、アジアでは2010年から
2020年の間にインフラ関連で約8兆ドルの資金ニーズを見
込んでいます。
どこに注目すべきか:
AIIB、クォータ、格付け、融資枠
中国主導のAIIBへ参加を表明する国が増えていますが、中
国がAIIBを設立した背景には経済的な存在感の高まりがあ
ることを「今日のヘッドライン(2015年3月18日号)」で指摘し
ています。加えて国際通貨基金(IMF)、ADBなど既存の国
際開発銀行との関係も設立を後押ししたと見られます。
まず、中国がAIIB設立を決意するきっかけのひとつといわれ
るのがIMFの出資金(クォータ)をベースに配分する投票権
の問題です。IMFは拡大する新興国の声の反映に向け2011
年のIMF総会で改革(第14次増資)を決定しました(図表2参
照)。しかし米国議会は現在もクォータ見直しに必要な予算
を承認していません。また、アジア開発銀行を見ると、日本
と米国の出資割合が各々約15.6%であるのに対し中国は約
6.4%で、ADB総裁は歴代日本人が就任しています。つまり、
中国の経済的な存在感の高まりに伴う、既存のシステムに
対する不満もAIIB設立の背景に見え隠れします。
その結果日本と米国が取り残された格好となっており両国
はAIIBへの対応に苦慮していますが、中国またはAIIBにとっ
ても米国などとの対立を抱えての運営には懸念が残ります。
例えば、米国抜きでAIIBを設立した場合の格付けはADBの
ように最高格付けが取得できるか不透明で、調達コストが高
ピクテ投信投資顧問株式会社
くなる可能性もあります。
次にADBと協力関係が築けなかった場合の投資効率の低下
が懸念されます。AIIBよりも資本が厚いADBは2017年の資本
増強後でさえ年間の融資枠は200億ドルにすぎず大規模プロ
ジェクトではADBとAIIBが協力して融資する必要も想定されま
す。しかし対立を抱えたままでは協力関係に不安が残ります。
このような懸念に対し、変化の兆しも見られます。米国のルー
財務長官は3月18日の議会証言で米国議会がIMFのクォータ
見直しを承認しないことに苦言を呈し、既存制度の維持に固
執することに対して警告しています。
議論の余地は残りますが、既存と新規の銀行の対立の構図
は結局投資スケールを小規模にしてしまうことが懸念されます。
図表1:AIIBに参加を表明、検討している主な国
(時点:2015年3月28日)
地域
国名
中国、ASEAN10ヵ国、インド、スリランカ、ネパール、パキ
アジア
スタン、バングラデシュ、モンゴル、韓国、インド
サウジアラビア、オマーン、カタール、クウェート、ヨルダ
中東
ン、トルコ
大洋州 モルディブ、ニュージーランド、オーストラリア、
欧州
ウズベキスタン、タジキスタン、カザフスタン
英国、ドイツ、フランス、イタリア、スイス、オーストリア、オ
ランダ、デンマーク
出所:各種報道等を使用しピクテ投信投資顧問作成
図表2:IMFのクォータ(出資金)上位の主な国々
20%
※IMF投票権を15%以上もつと
重要事項に対する拒否権を保
持できる仕組みで現状米国だ
けが拒否権を持つ
15%
10%
現状
第14次増資時
5%
0%
米国
日本
ドイツ
フランス
英国
中国
出所:国際通貨基金(IMF)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
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