発展編

PL03C4-Z1K1-01
発展 小説①
スーパートレーニング問題
次の文章を読んで、あとの問に答えなさい。
解答時間の
めやす
兄さん、もう一回やって見ましょう。
」
「もうごめんだよ。若いも
は深い後悔の念が堪えられないほどわき出たのであった。
(
4
)ねばよかった。また(
5
)てやればよかった。誠二に
も う 友 達 は だ い ぶ 彼 の 家 か ら 帰 っ て 行 っ た。 兄 も 誠 二 の 部 屋 か ら
去った。誠二は後悔の念に満ちた心を持って部屋の窓から空を見上げ
た。どんより曇った灰色の空は低く大地を包んでいた。風もなかった。
⑷
太陽の光もないように思われた。
誠二には
誠二の肩をたたくものがある。信ちゃんであった。誠二のたった一
人のホントの友達の信ちゃんであった。
信ちゃんは快活に、「今の勝負、
たまらなかった。そして、自分をホントに知っててくれ
ありゃあ君がわざと負けたのじゃないか。
」と言った。誠二はこれを
聞いて A
あたりで見ていた誠二の友達はどっちが勝ってもいいような様子
ひざ がしら
ど夢中と言ってよいくらいであった。ただ膝 頭 がガクガク震えてい
⑴
の手を固くにぎりだまって頭を縦に振って見せた。信ちゃんは、
「そ
る人は信ちゃんであると思った。誠二は急に微笑を浮かべて信ちゃん
うだろう、なんだかおかしいと思った。あんなにたやすく兄さんに負
だろう。」という事が夢中になっている誠二の頭に浮かんできた。誠
二はゴロリと横になった。それは自分ながら驚くほど自然にころんだ
け は し ま い と 僕 は 思 っ て い た ん だ。 だ が な ぜ 兄 さ ん に 勝 た せ た ん だ
て負けたんだね、そうだろう。
」と叫ぶように言った。誠二はそれに
アわかった。誠ちゃん、君 B
やや沈黙が続いた後、信ちゃんはトンキョウな声を上げて、
「ハハ
い。
」と聞いた。それを聞いて、誠二はハッとしたようにしてだんだ
のだ。友達はこの意外な勝負を見てワッとばかり叫んだ。兄は得意そ
ちょっと
ん暗い顔色になってきた。
誠二はだまって立ち上がった。
⑶
中にはこんな声もまじって
あ っ た。「 そ ら 見 ろ い、 あ の 通 り 誠 ち ゃ ん が(
1
) ん だ よ。 誠
すもう
(太宰 治 「角力」による)
だ ざいおさむ
。兄さんに赤恥をかかせまいと思っ
ち ゃ ん の 兄 さ ん が わ ざ と さ っ き は(
2
) て や っ た ん だ よ。 誠
対して「そうだ。
」と言うことがどうしてもできなかったのは無論で
や
ち ゃ ん が 泣 く と い け な い か ら な。
」
「 そ う だ と も。 一 回 で 止 め と け
ある。
た。 誠 二 の 心 は、 先 回 と ち が っ て、 淋 し さ を 通 り こ し て、 取 り 返 し
さび
こ の 始 末 さ。 ア ハ ハ ハ ハ。」 誠 二 は だ ま っ て こ の 話 し 声 を 聞 い て い
のつかない侮辱を受けて無念でたまらないような気がしてならな
うれ
か っ た。 兄 の 方 を 見 た。 兄 は ま だ 喜 ん で い る よ う だ。 誠 二 は 兄 の そ
の 喜 ん で い る 様 子 を 見 て も ち っ と も 嬉 し く は な ら な か っ た。 ま す
ば よ か っ た の に、(
3
) た も ん だ か ら 癖 に し て、 ま た や っ た ら
彼 の 友 達 は が や が や 騒 ぎ だ し た。
ほほ え
うに微笑んでいた。そしてたおれている誠二の脚を彼の足先で一寸つ
⑵
ついた。
るのばかりが彼にはハッキリわかっていた。それでも、
「
もういい
をして、二人に声援をしていた。誠二は兄と取り組んでからはほとん
りましょう。」「それじゃあ、やろう。
」
分
20
のは勝ちに乗じて何回もやりたがるものだなあ。
」
「何でもいいからや
「
一
3
ま す 頼 み が い の な い 兄 だ と い う な さ け な い 思 い が し て き た。 あ あ、 96
X
PL03C4-Z1K1-02
問一
傍線⑴とはどういう意味ですか。最も適切なものを次の
ア〜オから選び、記号を書きなさい。
ア
もう勝負に出ていいだろう、という意味。
イ
もう本気でやらなくていいだろう、という意味。
ウ
もう勝っていいだろう、という意味。
エ
もう負けていいだろう、という意味。
オ
もう勝っても負けてもいいだろう、という意味。
問二
傍線⑵とありますが、誠二はどのような気持ちで「立ち
上がった」のですか。最も適切なものを次のア〜オから
選び、記号を書きなさい。
ア
きまり悪さをおおい隠す気持ち。
ぼうぜん
イ
叫びたてる友達を恨めしく思う気持ち。
ウ
不本意な結果に茫然とする気持ち。
エ
負けた悔しさに心を震わせる気持ち。
オ
予想以上にうまく演技できたと思う気持ち。
問三
傍線⑶とありますが、
「こんな声」には誠二に対するど
のような気持ちが込められていますか。次の文の空欄に
あてはまる一語を文中から探し、
抜き出して書きなさい。
誠二に対する
用形があてはまります。それぞれふさわしい形に活用さ
問四
空欄1〜5には、「勝つ」
「負ける」のいずれかの語の活
せて書きなさい。
1
2
3
4
5
97
PL03C4-Z1K1-03
問五
傍線⑷とはどのようなことのたとえですか。最も適切な
ものを次のア〜オから選び、記号を書きなさい。
ア
喜びや満足感が無念さにかき消されていくこと。
イ
後悔の思いから心が暗くなるばかりであること。
ウ
焦燥感にとらわれて心が落ちこんでいくこと。
エ
太陽が目に入らないほど心がうつろであること。
オ
自分の真意を誤解されて心が冷えていくこと。
問六
空欄ABにあてはまる言葉として最も適切なものを次の
各語群のア〜オからそれぞれ選び、記号を書きなさい。
A
ア
恨めしくって
イ
うれしくって
ウ
恐ろしくって
エ
つらくって
オ
恥ずかしくって
B
ア
えらいね
イ
強いね
ウ
なさけないね
エ
ずるいね
オ
変わってるね
A
B
問七
傍線
とありますが、誠二はなぜこのように兄を誘った
のですか。五十字以内で説明しなさい。
98
X