マルチ・アセット市場:2013 年の見通しPdf - シュローダー

2012 年 12 月
マルチ・アセット市場:2013 年の見通し
ヨハナ・カークランド
マルチ・アセット ヘッド
(リスクを恐れる)飛べない投資家
2012 年、市場のダウンサイドリスク(損失)、政治の先行き不透明感、経済
指標の弱含み等、多くの懸念材料があったにもかかわらず、株式や高利回り債
券などの高リスクの資産クラスが選好され、上昇しました。
言うまでもなく、国債をはじめとする安全資産も、過去最低の政策金利水準に
下支えされ、堅調に推移しました。2013 年は、安全志向からリスク選好へ、また
安定成長型から収益追求型への転機を迎えることができるのでしょうか?2008
年の世界金融危機以降、市場に根強い悲観論は払拭されるのでしょうか?
棚上げされてきた政治的リスク
市場心理の重しとなっていた政治の先行き不透明感が徐々に解消されてきていることが、市場の好材料としてあげられます。ただし、
ユーロ圏危機に関しては、本格的な議論はこれからと考えられます。
過去 2 年間、ユーロ圏危機に関して誰が主体的に行動を起こし、関係者がどう反応するのか、システム維持への意欲はあるのか、
などが市場の焦点となってきました。現時点でわかっていることは、ユーロ圏情勢は既にドイツおよび欧州中央銀行(ECB)に委ねら
れていること、ドイツはユーロ圏の統合深化の姿勢を打ち出していること、ECB のドラギ総裁は「ECB はユーロを守るために必要な
措置を講じていく」と言明していることがあげられます。
ドイツが強硬に迫る緊縮財政策は好ましいとは言えず、ECB の政策対応にも物足りさがあるものの、過度の政治的軋轢が後退し
たことで、ユーロ圏情勢を巡る過度の先行き不透明感は後退しているとみています。
そのほか、中国では政権交代が概ね予定通りの進捗を見せたほか、米国でもオバマ新政権が発足しました。依然として、財政政
策が最重要課題に掲げられる中、政治的な瀬戸際戦術から逃れるすべはないものの、市場は政治的リスクを理解し、織り込み
始めています。
マルチ・アセット市場:2013 年の見通し
抜け出せないループ
山積する景気の課題が、市場の懸念材料となっています。景況感の改善の兆しがみられる局面では、リスク資産の選好度合いが
加速すると言われています。2013 年も、2012 年同様、低い金利水準および脆弱な経済成長が続くと予想されます。このような
環境では、優良株が選好され、高い投資結果が期待されるハイ・イールド債券などによる、収益追求の傾向が高まると予想されま
す。一方、確固とした景気回復が確認できるまでは、景気との連動性の高い資産は引き続き軟調な動きになるとみています。
バリュエーションを重視
景気動向の不透明な状況のもと、バリュエーションを重視したポートフォリオの見直しを行っています。現状は資産配分を決定する
上で重要なタイミングに差し掛かっており、安全資産は明らかに割高感があるとみています。現金や国債の実質利回りがマイナス水
準にある状況下においては、リスク選好度を高めていきます。
際限ない量的緩和政策が打ち出される中、現金の組入れ比率を引き下げており、債券は分散効果程度のメリットしか享受でき
ないとみています。一方で、株式の組入れ比率を引き上げました。景気循環を考慮したPER(調整後)など、保守的なバリュエ
ーションを前提とした場合でも、株式の魅力度は高いと考えています。
株式では優良銘柄の高位組入れを維持しつつ、極端に割安水準にあると判断した一部の銘柄へ戦術的に配分しています。一
例として、6月に欧州株式の組入れを引き上げ、秋には日本株式への投資を行いました。興味深いことに、バリュエーション上の良
好な投資機会は、新興国株式市場より先進国市場に見出せます。
巳年
2013 年の干支は蛇です。多くの投資家が安全資産と考えている資産クラスが、草むらに潜む蛇のように、予期せぬリスクをはらん
でいる可能性もあると考えています。
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